決戦②
すみません、小出しになってしまってます。ご容赦下さい。
「なら呑気に寝てるなよ…」
上半身を起こしたゲントの鼻はジェドの膝蹴りによりつぶれてしまう。その光景に悪魔達は思考が停止したかのように動きを止める。いや、この段階で思考を停止していないものは相棒のシアぐらいのものだ。
再び思考が動き出したときにはジェドはすでに、すでに絶命しているカーノンの後頭部から自分の剣を引き抜いていた。引き抜くときに、カーノンの頭を踏みつけて剣を抜いたのはもちろん、わざとである。
「おのれ。人間如きが!!」
ただ一体、無傷のデヴォードがジェドに向かって叫ぶ。
その憤りに対してジェドはまたも冷たい視線をデヴォードに向け、言い放った。
「どうして悪魔というのはこんなに頭が悪いんだ?」
「なにぃ!!」
当然、デヴォードはいきり立ちジェドを睨みつけるがジェドはまったく意に介しない。
「基本的にお前らは勘違いしすぎだ」
「なんだと?」
「弱いくせに自分達を強者と勘違いした無様な道化…それがお前らだ」
「おのれ!!言わせておけば!!」
デヴォードはジェドに向かって躍りかかるが、ジェドは剣を構えるとデヴォードを迎え撃つ。
デヴォードは両手の指の第二関節の位置から曲げるとジェドに放つ。いわゆる虎爪と呼ばれる形だ。デヴォードはその虎爪を魔力で強化することで裂く力を爆発的に高めているのだ。もし、この虎爪を受ければ人間などあっさりと引き裂かれ絶命することになるだろう。
それほどの攻撃であるが、ジェドはまったく臆すること無く下がるどころか一歩踏み出し、デヴォードに斬撃を繰り出した。
ビュン!!
シュン!!
デヴォードの虎爪をジェドは躱すと一瞬後には斬撃を放つ。目まぐるしく移る攻防に周囲の目は奪われる。だが、いつまでも呆けているわけにはいかないとヴェイン達、アグルスはゲントに向かって攻撃を開始する。
ここでジェドに助太刀しなかった理由は、彼らとジェドの戦い方の呼吸があまりにも異なっているために互いに邪魔になる可能性があることを察したからだ。
実際に、ジェドもヴェイン達がデヴォードとの戦いに参入されればやりづらさを感じた事だろう。
即席のチームが上手く機能しないのは仕方の無い事であるが、そこはジェドも『破魔』もアグルスも割り切っていた。仲良しこよしで生き残れるような相手ではない以上、そういう道徳的な事には引っ込んでもらう必要があったのだ。
ジェドとデヴォード、『破魔』、アグルスとゲントとの戦いが始まったのだ。
そして、その様子をゲオミルはニヤリと嗤って眺めている。ゲオミルには、伏兵がいたのだ。その伏兵はオリヴィア達の近くに伏せているのだ。その戦力は中位悪魔1体、下級悪魔5体というものであり、オリヴィアの近くにいる冒険者達では到底、しのげるような戦力では無い事は明らかだ。
ゲオミルの見たところ、オリヴィアの近くにいる護衛の冒険者達の実力は今、戦っている者たちよりも一段落ちると見ていたのだ。
オリヴィアの近くにいる冒険者の中で二人の魔術師は戦っている者達と実力的に劣るものではないが、所詮は人間であり、同士討ちを避けるために乱戦になれば魔術の行使は出来ないとゲオミルは読んでいたのだ。
確かに、シアもジェドもゲオミルの伏兵には気付いていない。だが、ゲオミルもまた、シアが何を狙っているかを知っていたわけでは無かったのだ。




