白雪姫の母②
ユリの理想は恐ろしい程、高かった。
頭脳明晰。容姿端麗は当たり前。
人見知りはしない。
明るく、リーダーシップも取れる。
必要以上に泣かないなど。
まさに手のかからない子供の見本の様であったが医者は気にしなかった。
「まぁ……これ位なら問題はありませんねぇ……」
「大丈夫なのですか?」
医者の反応にユリは驚いた。
友人にユリの理想の子供を話した時、さすがに無理じゃないかっと言われていたのだ。
「いいえ。まぁ、髪の色や瞳の色を変える方が難しいもので。ただ気になるのは一つだけですねぇ…」
「一つだけ?」
「母親に従順ってところですね」
髪をかきながらユリに近づいた。
あからさま、ユリは顔をしかめたが医者は気にする様子はない。
「従順よりも少しは反抗的な感じの方が子育ては楽しいですよ?」
にっと歯を見せて医者はユリに提案したが、ユリは断じて拒否した。
「従順の何が問題なのですか?反抗的過ぎるのも嫌ですし」
「んー……まぁ、スズキさんが問題なしなら大丈夫ですねぇ………あとはスズキさんの赤ちゃんに理想の遺伝子を組み込めばBDは終了します。何か不安な事とかありますか?」
「いいえ。大丈夫です」
「まぁBDだからと言っても、普通の妊婦さんと変わらないのでー」
「そうですか……では、次回よろしくお願いします」
この時ユリは初めて医者に対して笑顔を見せた。
そして数ヵ月後。
ユリは無事に理想の子供を手に入れた。