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野茨の血族  作者: 髙津 央
第二章.王都

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48/93

48.仮名☆

 「初めての異国で、慣れない習慣や生活に戸惑いもありましょう。我々の手で少しでもご負担を減らせるよう、舞い手殿のおっしゃる通りにしましょう」

 騎士たちが互いに顔を見合わせ、視線で何事か遣り取りする。


 「まずは、呼び方から改めましょう。彼は今から『舞い手さん』。敬語も止めて、タダの子供扱い。で、舞い手さんは彼らを呼びにくいでしょうから、日之本帝国風の呼称を付けて下さい」

 鍵の番人は、決定事項のように提案し、パンを口に入れた。


 ……呼称……えーっと……家紋で呼ぶ言うとったな。そしたら……


 文官風の騎士は〈雪〉、少女騎士は〈雪丸〉、ずんぐりした騎士は〈斧〉、茶髪の騎士は?燭から〈灯〉。

 政晶(まさあき)は少し考え、一人一人の目を順繰りに見ながら言った。


 クロエの訳に、それぞれが嬉しそうに頷いた。

 〈雪〉がふと思い出したように、食事を続けながら自己紹介を始めた。

 「素敵な呼び名をありがとうございます。私は魔剣使いです。元々文官でしたが、この魔剣ポリリーザ・リンデニーに見込まれて、武官になりました。護衛の任務は初めてですが……頑張るから、宜しく」

 途中、隣の〈雪丸〉に肘で脇腹を小突かれ、口調を改めた。


 「私は半年前に叙勲を受けたばかりの新米だけど、元々、魔物退治の部隊に居たし、〈雪〉よりは頼りになるから心配しないでね。あ、〈雪〉は従兄(いとこ)だから紋章が似てるの」


 「俺も元々、田舎町で魔物退治や旅人の護衛をしていた者だ。能力を買われて騎士に取り立てられたのはいいが、城は堅苦しくてかなわん。ま、気楽に行こうな、坊や」

 政晶の右隣に座る〈斧〉が、ガハハと笑う。

 政晶もつられて笑みをこぼした。


 最後に〈灯〉が言った。

 「四人とも外見通りの年だから、君も気を遣わなくていいよ。こちらこそ宜しく」



 部屋は政晶、鍵の番人、クロエ、〈斧〉〈灯〉と〈雪〉〈雪丸〉に分かれた。

 今夜、政晶が泊るのは、寝台が四台あるだけの質素な部屋だった。


 「クロ、だっこ」

 鍵の番人は寝台に腰掛け、猫に変えた使い魔を膝に乗せた。

 クロは主人の命令通り、大人しく鍵の番人に従っている。


 〈灯〉が部屋の隅に置かれた壺から水を出し、政晶と自分を洗った。続いて〈斧〉が鍵の番人と自分を洗う。鍵の番人と一緒に洗われたクロが不満の声を上げた。

 「私はお昼寝するから、舞い手さんも休憩が終わってから練習して」

 鍵の番人はそう言って、クロを布団の中に引きずり込んだ。


 「えっ? ちょッ……通訳は……?」

 鍵の番人は寝息を立て始め、クロは猫の口ではニャンとしか言えなかった。


 途方に暮れる政晶に建国王がのんびりと声を掛ける。

 〈(いまし)も眠ればよいのだ。先は長い。何も最初から無理をすることはない〉

 政晶(まさあき)は渋々靴を脱ぎ、空いた寝台に潜り込んだ。


 挿絵(By みてみん)

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地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』

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野茨の環シリーズ 設定資料
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