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野茨の血族  作者: 髙津 央
第二章.王都

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43/93

43.護衛☆

 政晶(まさあき)たちの一行も準備が終わり、荷を積んだ馬と騎士たちが整列する。

 護衛の騎士は四人。いずれも帯剣していた。


 ムルティフローラには、現国王や高祖母(こうそぼ)のような長命人種(ちょうめいじんしゅ)がいる為、外見から年齢を推測するのは難しい。

 それでも政晶には、自分を護衛する騎士たちが随分、若いように思えた。


 父より少し若く見える金髪の男性。

 彼が最も年嵩(としかさ)に見えた。家紋は雪の結晶。

 ひょろりと背が高く、武官よりも文官のほうがしっくりくる。

 魔法使いだから、外見から強さを測ることは出来ないが、何となく頼りない印象だ。

 魔道士としての徽章(きしょう)も、双羽(ふたば)隊長や三枝(さえぐさ)のような魔法戦士の(ワシ)ではなく、翼を広げて飛ぶ燕の形だった。

 政晶には、戦士の証とは思えなかった。


 政晶よりも濃い茶髪の青年。

 高校生くらいに見える。

 こちらは政晶がよく知る体育会系の雰囲気で、金髪の騎士より頼もしく見えた。

 家紋は蝋燭の炎で、徽章(きしょう)は飛翔する蜂角鷹(ハチクマ)

 双羽たちとは異なるが、猛禽類なら戦士の証だろう、と政晶はホッとした。


 ずんぐりした体形の茶髪の青年。

 四人の中で最も腕力が強そうに見える。

 家紋は斧で、徽章は歩む(トキ)

 政晶には何を表す徽章なのかわからないが、細長い体型の鳥の徽章は、文官風の騎士の方が似合うと思った。

 彼は政晶と目が合うと、柔和な笑みを浮かべた。


 四人目は政晶と同年代に見える金髪の少女。

 顔は何となく文官風の騎士に似ていた。

 家紋が丸で囲まれた雪の結晶なので、親戚なのかもしれない。

 こちらは勝気な表情で、飛翔する(タカ)徽章(きしょう)を身に着けている。

 眼光も鷹のように鋭かった。


 〈男と子供と紛い物しかおらぬとは……〉

 建国王が情けない声を出す。


 ……王様、ロリコンちゃうかったんか。そら、よかったわ。


 政晶の認識を読み取った建国王が、憮然として抗議する。

 〈(いまし)は我を女と見れば見境なしの変質者だと思うておったのか! 嘆かわしい……我はしっかり出る所が出た大人の女が好みじゃ。あれはあと十年……〉


 ……あぁ、うん。王様の好みのタイプとか、どないでもえぇから、僕の手ぇで悪させんとって下さいよ。


 荷造りを指示していた壮年の男性が、見送りの挨拶を始めた。

 「黒山羊の殿下の甥御(おいご)様、お待たせ致しました。旅の準備が整いました。ご存知やも知れませんが、山脈の主峰ヒルトゥラ山は、我が国の若者が、成人の儀で一度は登る山でございます。道中は街道を通りますし、山中でも、要所々々に休息できる安全な場所が設けてあります」


 壮年の男性は、そこで一旦言葉を区切り、若い騎士たちを見遣った。

 騎士達は、緊張した面持ちで次の言葉を待っている。


 「この者たちは、騎士の叙勲を受けてまだ日の浅い若輩者ですが、道中、特に危険な場所はございませんので、ご安心下さい。また、鍵の番人と黒山羊の殿下の使い魔もおります。必ずや無事にお送り致しますので、ごゆるりとムルティフローラの旅をお楽しみ下さい」


 そして、騎士たちに険しい表情を向け、厳しい口調ながらも激励した。

 「これは訓練ではない。(ほとん)ど危険がないとは言え、物見遊山(ものみゆさん)気分で気を抜く事なく、舞い手殿をお守りするのだ。諸君らにとっては初の要人警護……鍵の番人の指示に従い、必ずや任務を全うするのだぞ。よいな?」

 「はい、隊長」

 四人が声を揃えて応えた。


 隊の指揮を任された鍵の番人は、白馬と(たわむ)れ、話を聞いていない。

 メイド型の使い魔は泣き止んでいたが、政晶(まさあき)を恨みがましい目で睨んでいた。


 挿絵(By みてみん)

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地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』

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野茨の環シリーズ 設定資料
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