30.呪い☆
開放政策の反対派は、王女の一人娘が魔力を持たないことを知ると、勢いを増した。
それが広く王都に住む民の知るところとなると、更に数が膨れ上がり、政府はその不満と不安を抑えきれなくなった。
国王は終に、鎖国に戻すことを宣言し、事態の収拾を図った。
三つ首山羊の王女は離婚させられ、再び日之本帝国に渡ることも許されなかった。
検査を受けにきた一人娘は、たった一人で、父が待つ日之本帝国の家へ帰された。
反対派の中でも特に強硬な一派は、王女の一人娘を亡き者にせよと主張した。
流石に、罪もない少女の命を奪う案に、同意は得られなかった。
代わりに、子が産まれなくなる呪いを掛け、魔力を持たない野茨の血族は、この子一代限りとして見守ることになった。
「えっ……でも、僕ら……」
「えぇ。お生まれになっていらっしゃいますね」
一人娘は、呪いの件を知らされずに帰国した。
成人後、日之本人の男性と結婚し、一男一女を儲け、三人目を懐妊中に亡くなった。
この兄妹も検査の結果、魔力を持たないことがわかった。
二人を更に詳しく調べたところ、魔力を持つ子が生まれない状態であることが判明した。
担当者が娘を不憫に思った為か、曲がりなりにも王家の血族を呪う事を躊躇した為か、術の効きが甘かったらしい。
霊視力を持つ兄は、結婚したものの、なかなか子宝に恵まれず、不妊治療の末に三つ子の男子を授かった。
八年後、妻は妊娠中に交通事故で亡くなり、兄自身もその二年後に航空機事故で命を失った。
半視力の妹は、魔力を持たない娘を三人、無事に出産し、いずれも健在だ。
「はんしりょく……?」
「通常は、物質と霊質の両方が見えます。霊質が視えない目を【半視力】と呼び、魔法文明圏では保護の対象となります」
「科学文明の国では、半視力の人が多数派だから、視えないのが普通だけど、魔法の国では、視えないと色々困るからね」
「僕、幽霊とか視えたことないんですけど……」
政晶は恐る恐る申告した。
魔法使い二人は、当然のように頷いた。
「君のお父さんも半視力だからね。きっとそうだと思ってたよ」
「ご安心下さい。一時的に視力を付与する術がございますので、ご滞在中、差し障りありませんよう、手配致します」
政晶は少し安心して窓の外を見た。




