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野茨の血族  作者: 髙津 央
第二章.王都

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28.城門

 双羽隊長の号令で騎士達が騎乗し、馬車を中心とした隊列を組んで動き出した。

 どんな魔法を使っているのか、石畳の上を走る馬車は(ほとん)ど揺れない。


 窓からの風が、心地よく汗を乾かしてくれた。

 政晶(まさあき)の向かいに座る黒山羊の殿下の膝で、黒猫が喉を鳴らしている。


 殿下は使い魔のクロを撫でながら、今後の予定について説明を始めた。

 「お城についたら王様と高祖母(ひいひいばあ)ちゃんに挨拶して、その後すぐに検査を受けて、お昼ご飯食べて、舞いに使う剣に会って、ちょっと練習して休憩して、また練習してから晩ご飯。今夜はお城に泊って、明日の朝、山に出発。忙しいけど、大丈夫?」

 「多分、大丈夫です」


 ……陸上部におった時はもっとキツかったから、イケるやろ。寝てへんけど。挨拶言われても言葉わからんのに……って言うか「剣に会う」ってなんや? 


 「高祖母(ひいひいばあ)ちゃんは日之本語わかるし、お城ではずっと僕の(そば)だから、心配しなくていいよ。あ、でも、明日からどうしようかな?」

 その言葉で政晶は不安に駆られ、叔父と大使を見た。

 「私は報告が終わり次第、大使館に戻らねばなりません」

 「共通語、得意だっけ?」

 政晶は首を激しく横に振った。


 ……言葉も通じん所に何も考えんと放り出すて、おっちゃん、鬼かッ?


 「共通語が堪能な官吏は、何人かいるんだけどね」

 「あ……あの女の人……えっと……フタバさんは……?」

 「隊長は、王様の命令で僕を護衛してるから……変えてもらえるか、後で聞いてみるね」

 政晶は窓から顔を出した。

 馬車の横に黒髪の男性騎士、先導には双羽ではない金髪の女性騎士がついている。


 眼前に巨大な城壁が迫ってきた。

 商都や帝都の駅前ビルよりも高く、堅牢な石壁。黒々と口を開けて旅人を迎え入れる城門の両脇には、見張り塔が(そび)えている。

 いつからここに在るのか見当もつかないが、風雨に晒されて尚、揺るぎなく街を守っていた。


 灼けつく日差しの下、荷を負った人や馬、馬車がのんびりと行き交っている。

 湿度が低いからか、肌を見せない服装の者が多い。

 誰もが馬車の紋章に気付き、道の脇に避け、お辞儀をして政晶たち一行を見送った。

 高速道路の料金所のように止められる事もなく、城門を通過する。


 トンネルのように分厚い石壁の通路を抜けると、三車線分はありそうな道の両脇を、人が埋め尽くしていた。

 政晶(まさあき)に気付いた人々が、笑顔で手を振り、口々に何か言い始めた。


 「落ちるといけませんから、身を乗り出さないで下さい」

 馬車の後方、隊列の最後尾から、双羽(ふたば)隊長の冷ややかな声が飛んできた。


 政晶は慌てて顔を引っ込め、叔父を見た。

 「みんな、僕たちを歓迎してくれてるんだよ」

 黒山羊の王子殿下が窓の外に向かって小さく手を振ると、一際(ひときわ)大きな歓呼の声が上がった。

 政晶も叔父に(なら)って小さく手を振ってみた。叔父同様の歓声が、大きなうねりとなって馬車を包んだ。


 「あ、そうだ。前にも言ったけど、この国では絶対に名前を言っちゃいけないよ。名乗る時は僕の甥……『黒山羊の王子の甥です』って言うんだよ」

 「なんで?」

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地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』

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野茨の環シリーズ 設定資料
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