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野茨の血族  作者: 髙津 央
第一章.帝都

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24/93

24.王子

 宗教(むねのり)が、政晶に腕輪を見せた。

 叔父の折れそうに細い右手首で、銀の野茨(のいばら)が輝いている。中心に花、その左に葉、右に実。

 政晶にも見覚えのある意匠だ。

 自身の左腋の下に全く同じ形の茶色い(あざ)がある。


 幼稚園児の頃、風呂で父の腰にも同じ痣を見つけた事を思い出した。

 左右どちら側かは失念したが、自分にもある印象的な形は、よく憶えている。



 父と同じなのが何故か嬉しくて、風呂上り、体も拭かず母に自慢した。

 母はバスタオルで政晶を拭きながら、笑って言った。

 「さよか。お父さんとお揃い、よかったなぁ。ほんでも、皆には内緒にしとこな」


 「えー、なんでー?」

 「なんでも。政晶がおっきなったら、教えたげるからな。それまでは、お父さんとお母さんと、政晶だけの秘密な。誰にも内緒やで」


 「えー、センセにも内緒なん?」

 「先生にも内緒やで。約束な。絶対、誰にも言うたらあかんで」

 その後、成長するにつれて、秘密の意味が徐々にわかってきた。



 自然にはあり得ない形なので、刺青(いれずみ)だと思っていた形。

 水泳の日は、絆創膏を貼ってひた隠しにした、忌々しい痣だった。


 ……いや、ちょっと待って、そしたら僕もそのナントカ言う国の……


 「ムルティフローラ王家の血筋の目印で、関係ない人との結婚が七代続けば、消えるんだって。えーっと、君の曾孫(ひまご)には出ないよ」

 政晶(まさあき)は呆然としたまま、宗教(むねのり)の言葉に(うなず)いた。

 言語的な意味は理解できるが、内容が理解の範疇(はんちゅう)を超えている。


 執事がお茶のおかわりを持って戻ってきた。

 冷たい麦茶で唇を湿らせた大使が、説明を続ける。

 「我が国では、王家の血族の中でも、基準以上の魔力をお持ちのお方にのみ、王位継承権が授与され、王族と認められます。このお家の中ですと、こちらの黒山羊の王子殿下が王族であらせられます」

 大使が叔父を改めて紹介した。

 叔父は笑いながらそれを否定する。

 「えー……? 僕、王子じゃないよ?」


 ……えっ? おっちゃん、やっぱりお姫様……?


 「王子って【王様の息子】でしょ? 僕、王様の玄孫(やしゃご)だから王子じゃないよ」

 「この国の言葉で【王子】とは【王位継承権を持つ男子】と言う意味だそうです。従って、あなた様は王子様です」

 「えっ? そうだったの? ずっと違うと思ってた」

 王子様と大使閣下の間抜けな遣り取りを、近衛騎士が冷ややかな目で見守っている。

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地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』

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野茨の環シリーズ 設定資料
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