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野茨の血族  作者: 髙津 央
第一章.帝都

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23/93

23.血筋☆

 応接間は、玄関の左隣だった。

 執事の言う「皆様」は、宗教(むねのり)双羽(ふたば)、どこかの民族衣装を(まと)った緑髪の男性だった。


 染めたのでなければ、ラキュス湖周辺に住む「湖の民」と呼ばれる少数人種だ。

 政晶たち「陸の民」より多くの銅を必要とし、髪が緑色なのはそのせいだ、と教科書に載っていた。


 「この人ね、ムルティフローラの外交官」

 「初めまして。黒山羊(くろやぎ)の殿下の甥御(おいご)様。私は、国王陛下より特命全権大使を拝命致している者です。在日之本帝国ムルティフローラ大使館に駐在しておりますので、御用の際はお気軽にご連絡下さい」

 父より少し年上に見える湖の民の男性は、立ち上がって(うやうや)しくお辞儀した。


 政晶(まさあき)は、生まれて初めて対面した湖の民に、何と言えばいいかわからず、取敢えずお辞儀を返した。

 何はともあれ、何の説明もなくケータイに登録されていた「大使館」の番号が、ホンモノだったことは、たった今、わかった。


 「今日は用があるから、家にいて欲しかったんだけど、お父さんから聞いてなかった?」

 「えっ……はい? ……えっと、すんません」


 ……何やそれ? 今、初めて聞いてんけど……? あのダボ、何で()らんことはベラベラ喋る癖に要ることは言わへんねん! おっちゃんも、僕に直接言うてくれたらえぇのに……


 政晶(まさあき)宗教(むねのり)に頭を下げ、顔を引き()らせながら、勧められた席に腰を下ろした。


 大食堂に負けず劣らず、豪奢な応接間だ。

 座り心地のいいソファに、汗だくのまま座るのは気が引ける。

 宗教(むねのり)の命令で、執事が応接間を出て行った。


 「しょうがないなぁ。あ、そうだ、魔法の国には本名を言う習慣がなくて、肩書とか、お(ウチ)の紋章で呼ぶから、大使は名前を言わなかったの。君も名乗っちゃダメだよ」

 「え……? あ、はい?」

 「えっとね、双羽(ふたば)さんは家紋が二枚の羽で、湖北語だと発音が難しいから、日之本語の苗字っぽく訳して【双羽】さん。肩書はムルティフローラ王国近衛騎士団、赤い盾小隊隊長。僕の護衛」


 「父上は、私の説明もなさらなかったのですか?」

 双羽隊長が呆れたように言った。

 政晶は、父のいい加減さに申し訳なくなり、身を縮めながら頷いた。


 大使が用件に入る。

 「既に父上からお話があったかもしれませんが、私からも改めてご説明申し上げます。ムルティフローラ王家の血を引くあなた様には、一度、本国で能力の検査を受けて戴かなければなりません」


 ……夏休みに一回だけ高祖母(ひいひいばあ)ちゃんに会いに行く……て、これか!


 大使は、不安げな政晶を安心させるように、優しく微笑んで続ける。

 「検査と申しましても、難しいことはございません。お体のどこかにある王家の紋章を確認させて戴いた後、右の塔の扉を開け、可能な限り階段を昇って戴くだけです」

 「こんな形の(あざ)がある筈だよ」

挿絵(By みてみん)

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地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』

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野茨の環シリーズ 設定資料
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