表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
野茨の血族  作者: 髙津 央
第一章.帝都

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/93

18.少女

 巴准教授は、黒猫型になった使い魔を撫でながら、説明を続けた。

 「使い魔には、魔法の主従契約が必要だけど、この手のゴーレムは家電製品みたいな物だから、誰でも使えるんだよ。宝石が二種類(はま)ってるから、赤いのがルビーで体力、青いのはサファイアで魔力の充電池みたいな物だと思う」

 政晶は、友田の腕環を見た。

 赤い宝石が淡い光を放っている。


 ……家電って……えーっと、要は、(こす)ったら魔神が出てくる魔法のランプの腕環版か?


 「こちらを向いても大丈夫です。シーツを被せました」

 双羽の声に、政晶と友田は顔を見合わせ、(かす)かに(うなず)き合った。同時に、ゆっくりと少女の方を見る。


 銀髪の少女は、純白のシーツを巻きつけられて佇んでいた。

 金属光沢の髪が腰まで伸び、瞳も銀色。年は高校生くらいに見えるが、表情がなく、人形のような美しさだった。


 「服はセットじゃないんだね。うちで余ってるのをあげるね。黒江」

 黒猫がベッドから飛び降りる。板張りに着地した瞬間、ポンッっと何かが弾ける音と同時に執事に戻った。

 変身に一秒と掛かっていない。


 巴准教授が、執事になった使い魔に、腕環の少女に服を着せるよう命じる。

 執事は、主人に一礼すると、少女に「来なさい」と声を掛け、ドアを開けた。

 腕環の少女は、マネキンのように突っ立ったまま、動かない。


 「友田君、腕環に命令して」

 巴准教授に言われ、友田は明らかに狼狽(うろた)えていた。准教授が助言を与える。

 「まず名前を名乗るように言って、それから、その名前を呼んで命令するの。今は『この部屋に戻ってくるまで黒江の指示に従え』って言って」

 「はい! えっと、名前を名乗って……下さい」

 何故か敬語になる友田。


 「デーレヴォ」

 少女の形のいい唇が動いた。

 政晶は、腕環から出てきた少女が日之本帝国語を理解した事に驚いた。


 友田も同じく驚いて質問する。

 「あ、えっ? 日之本語わかるんだ? 何で? ……あ、えっと名前なんだっけ? すみません、もう一回言って下さい」

 「湖南(こなん)語とご主人様がご存知の言語は全て理解できます。私の名は【デーレヴォ】です」

 腕環の少女デーレヴォは、音声案内のように答えた。


 「湖南地方で製造されたんだろうね。きっと元々輸出用だから多言語対応なんだよ。名前は湖南語で【樹木】って言う意味だよ」

 巴准教授は好奇心に瞳を輝かせ、狼狽(ろうばい)する友田を他所(よそ)に説明した。


 湖南地方……ラキュス湖南地方。

 最近習ったばかりの地理の教科書の一節が、脳裡(のうり)(よぎ)る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』

【関連が強い話】
碩学の無能力者」 友田君のその後。
飛翔する燕」 騎士〈雪〉たちの護衛任務直前の様子。
汚屋敷の兄妹」 巻末の家系図左半分の人たちの話
汚屋敷の跡取り」 巻末の家系図左半分の人たちの話別視点

野茨の環シリーズ 設定資料
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ