赤ちゃんは死んだらどこに行くの?
昔昔、あるところに病院がありました。
病院の手術室なかではお医者さんや看護師さんが慌てています。
お医者さんはしばらくすると手術台で真っ青なお顔になっているお母さんのお腹から、赤ちゃんを持ち上げました。
しかし、赤ちゃんは息をしていません。
お医者さんは顔を曇らせて手術室から出て行きました。
部屋の隅ではお父さんが声を押し殺すように、顔を腕で隠して泣いています。
赤ちゃんは、生まれながらに死んでいました。
場所が変わってここは病院から遠く遠く離れた所にある大きな川です。
その川の畔に、赤い髪を伸ばした綺麗なお姉さんが佇んでいます。
お姉さんから離れた所で、赤ちゃんの泣き声が響きました。
お姉さんはそちらへ向かうと、白い柔らかそうなタオルに包まれた赤ちゃんがおぎゃあおぎゃあと泣いています。
「お前、そんなに早く此方に来てしまって……」
お姉さんは哀しそうにそう呟くと、赤ちゃんを抱いて川に沿って歩き始めました。
しばらくして、お姉さんと赤ちゃんはとある船着場にたどり着きました。
お姉さんは赤ちゃんを抱いたまま船に乗り、ゆっくりと対岸に向かって漕ぎ始めました。
「今度は、こんな所にそうそう来ないように生まれてくるんだよ。」
お姉さんは赤ちゃんにそう言って船を漕ぎ続けました。
川の水はどこまでも透明で、真っ直ぐに澄んでいました。