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広域の娘
太陽が西のビルにかかって、空が赤みを帯び始めたころ。
校門前の桜の樹側で、複数の少年少女が争っていた。
わりとよくある光景である。校門前を歩く親子やパート帰りのオバサンが、思春期を思い出して家路を急いでいた。
しかし、周囲の反応とは逆に喧嘩というものはエスカレートしてゆくものだ。
「てめぇ!い~かげんにしね~とケツの穴から手ぇつっこんで奥歯ガタガタいわしたるぞ!!」
低学年の少女が、クラスメートの大柄な少年を見下すように言う。
「おっもしれ~やれ「ヤメロ~ッ!!!」」
少女の背後にいた高学年の男子生徒が叫ぶ。
駆け寄って肩を掴むと…
「頼むから!頼むからっ!!それ以上言わないでくれ…」
顔を歪めて、涙をボロボロと流している。
「俺の、俺の兄さんは初犯で未成年だったのに…それなのに…あまりに残虐な殺しかただってんで執行猶予がつかなかったんだ・・・」