ミリアの不満
二日後。
魔導師協会の要請もとい依頼により、俺らはテューア学院から遠く離れたエステの森近くのフローという小さな村にやって来た。
もちろん、瞬間移動の魔法陣を使って。普通に馬で移動しても最低三日は掛かるから、かなりの時間を短縮する事が出来る。うん、魔法が使えるって便利だよな。
「あ~あ、何で私だけ違うグループなのよ、不公平だわ」
しょんぼりするミリア。珍しく落ち込んでるのかと思いきやーーー
「これじゃあロイ君たちに何か起こっても、見れないじゃないの」
続く言葉に、ケートと揃って呆れた。実にミリアらしい。
「実習なんて絶好の機会じゃない、絶対何かが起こる筈よ。そこで王道主人公は周りとの絆を一層深めて……」
ブツブツ言い始めたミリアだが、視線は美少女たちに囲まれてる編入生から一時も離さない。
これで事情を知らない奴が見れば、確実に編入生を熱い視線で見つめるミリアという図に勘違いをするに決まってる。本人は只の観察対象として見ているつもりであろうと。
編入生は少女たちに取り合われながらも、楽しそうに笑っている。だが、彼に向けられた男共の死線(死ねこの野郎という視線)の多いこと多いこと。
もし視線で人の身体に穴をあける事ができるなら、今編入生は随分風通し良くなっていることだろう。
「羨ましいよな~。でも、同じグループだから実習中ずっとこれを見ていなきゃならないのかぁ、吐くかも」
うんざりしたように言ったケートは、うげーと舌を出した。
確かに、見ていて和むもんじゃない。ミリアならともかく。
「そうだわ」
突然パッとこちらを振り向き、ミリアは妙にギラギラした目で見上げてきた。
「二人が見てきて、後で私に報告してよ。何があって、誰とどんな進展があったのかとか」
ーーー何で俺らが。
不満に思ったのが俺。
「何で俺らがそんなことしなきゃなんないわけ?」
不満を口に出したのがケート。
「あら、もちろん、や・る・よ・ね」
そんで案の定、凄まれるのもケート。
ニコニコとケートに笑いかけてるミリアだが、その目はちっとも笑っていない。
「お、おう」
笑ってない笑顔で詰め寄られ、逃げ腰になりながらも、ケートは頷くしかなかった。
女って怒らせたら怖ぇんだよな。