決意
暫くそうした後、ユイはポツリと問うた。
「今度の合同実習の事、聞いた?」
「ん?ああ」
午後の授業で先生から詳しく説明された。
今回主になるのが瘴気の調査。他のクラスはそのまま各クラスごとでグループに分かれるが、SとZクラスだけは両方の生徒が混じったグループ分けとなる。
「同じグループだったな」
貼られていたグループ分けの紙に、俺らの名前が前後に並んでいた。ミリアは違うが、ケートも同じグループ。そして、幸か不幸か、編入生の名前もすぐ下にあった。
「うんっ」
嬉しそうに笑い、更に強く抱きつくユイ。
「先生に同じグループにして貰うよう、頼んだんだ。折角の合同実習だもん、レイと一緒がいいと思って」
「そっか」
『頼んだ』ねぇ。九割方脅しだった事は容易に想像できた。
ユイって俺に対しての態度と他人に対しての態度じゃあ百八十度違うからな。まぁ、俺もユイには甘いって自覚はあるけど。
「でも、編入生が同じグループなのは想定してなかった。最悪だよ」
眉間に皺を寄せ、ユイは不機嫌な表情を浮かべる。
「どした?」
「アイツ、しつこいから嫌い。放っておいて欲しいのに、何かと声を掛けてくるし。はっきり言ってウザイ」
「悪気はないらしいけど」
心の傷や闇を抱えている人に敏感だという、昼のミリアの言葉が思い出される。
「悪気がなければ何をしてもいいってことにはならないでしょ」
「まぁな」
頷いて、ぽんぽんとユイの背中を軽くたたく。
編入生と同じグループになったことによって、何かに巻き込まれないといいけど。
甘えるように頭を擦りつけて来るユイを見下ろし、密かに嘆息する。
---何があってもユイを、これ以上家族を失うわけにはいかない。
胸の奥で決意し、腕の中にある温もりをギュッと抱き締めた。