合同実習
「そう言えば、今度Sクラスと合同で実習するらしいわよ」
「……うちのクラスが?」
「そうよ」
いつものようにケートを言い負かしたミリアが、思い出したように告げたお知らせに、驚きと不思議さを滲ませた声で確認すれば、あっさり肯定された。
「マジで!?」
精神的ダメージを食らって沈んでいたケートが、驚きを露わに叫んだ。
うん、叫びたくなるその気持ち、分かるよ。
これがミリア以外の誰かが言ったのなら、即嘘だと疑うだろう。だが、何処からの情報なのか分からないけれど、ミリアってたまにこうして先取した情報を持ってくる。そしてそれだがガセネタだったことは、一度としてない。……欲望交じりの妄想は良く口にするけど。
「何でそんなことになったんだ?」
俺の知る限り、今までそんなことなかった筈だ。
クラスの違う生徒同士が共に実習に取り掛かることはある。だが、それは他のクラスの話だ。俺らが所属するクラスでそんなことは有り得ない。
Sクラスが良い意味で他のクラスと一線を画しているというのなら、俺らのクラスは悪い意味で他のクラスから隔離されている。
何しろ、問題児、異端児が集うZクラスだからな。Sクラスとの共通点なんて、人数が少ないことくらいのもんだ。もっとも中身は、少数精鋭であるSクラスとは雲泥の差だろうけど。
「魔導師協会から要請があって多くの協力者が必要らしいわ。でも、この前プランダー帝国がクリーゼ国を侵略し始めたから、我が国にも皺寄せが来て不法入国者が増えちゃって。それの対応として軍からの要請で大量の生徒が国境に行ってしまったから、今残っている生徒で魔導師協会からの要請に借り出されることになったの」
「ほぉう、フォローを兼ねてるってことか」
「そうなの。それに、それを願い出た子たちもいるし」
言いつつ、ミリアはチラリと中庭に視線を走らせた。
なるほど、そういえば編入生に熱を上げている子の中に、Sクラス所属なのが何人かいるらしいからな。その子たちが編入生と一緒にいたくて願い出たんだろう。編入生って俺らと同じZクラスだし。
「えっ、どういうこと?フォローって何の?」
理解出来なかったケートが、俺とミリアの顔を交互に見ながら疑問の声を上げた。
「俺らのだろ」
「は?」
「俺らのクラスって、問題児ばっかだろ?」
「……まぁ」
「今回の魔導師協会の要請で沢山の協力者が必要だから、必然的に今学院に残ってる俺らも行く事となるわけだ」
「そりゃあな」
「学院にとっては苦渋の判断だったんだろうな。協調性のまるでないZクラスを行かせるかどうか。問題でも起こされたら学院の面子に関わるから」
「ああ、行かせたくないのか」
「そっ。でも、魔導師協会は多くの生徒を必要としている」
「悩むわけだ」
「そこで思いついたのが、優秀なSクラスの生徒に問題児たちをフォローさせるって事だ」
「ああっ、そういうことか。だからこんな有り得ない組み合わせが出来たのか」
納得したようにうんうん頷くケートの隣で、ミリアが呆れを含んだ視線でこちらを見た。
「問題児って他人事のように言うけれど、レイもそのクラスの一員だってこと忘れてない?」
「そーだそーだ」
「いや、俺はただのおまけとしてここにいるから、問題児とは言えないな」
「おまけ?」
「なんだそりゃ」
揃って首を傾げる二人に、軽く肩を竦めて見せる。