魔王の腕
「僕の一族は、代々『これ』を引き継いできました」
野宿の予定にしていた小川の付近で焚き火を囲い、恐る恐る右腕に触れながら、沈んだ声で編入生が語りだす。
「先代が死ぬと、自動的に次世代に引き継がれます。僕は『これ』を、父さんが死ぬときに引き継ぎました」
「お父様、亡くなったの?」
「はい」
俯く編入生を、両隣のアリーニアとミーシャが悲痛な面持ちで見つめている。
「『これ』を狙う人たちに殺されました」
「狙う?」
「皆さんが先ほど見た通り、『これ』は強大な力を持っています。それを悪用しようとした奴らに……」
ストームさんの疑問に、編入生が説明する。
「『それ』って一体なんなの?」
コテン、と首を傾げるシュアに、ややあって、躊躇いながらも編入生は口を開いた。
「『これ』は……封印されたーーー」
「魔王の腕」
「え?」
「違うか?」
「……いえ、その通りです」
言い当てられた編入生は呆然とギルさんを凝視した。
「聞いたことある。魔王の身体は分けられて封印されたが、一部は人の身体に封印され、その身に流れる血によって子孫へと引き継がれていく」
「………はい」
頷く編入生に、あっちこっちから息を呑む声が聞こえてきた。
つまり、編入生は魔王の右腕の現保持者ってことか。
なるほど、だから瘴気を吸い込むことができたんだ。何しろ瘴気はもともと魔王の力の一部だからな。
と言う事は、瘴気に近づくにつれ顔色が悪くなっていたのは、腕が瘴気に反応して暴れようとしていたからなのだろう。
編入生も厄介なものを抱え込んでいるな。
その後、疲れていた皆はぞれぞれ各自寝やすい場所を見つけ、早めに就寝する事にした。明日まだ調べる所が残っているしな。
編入生はアリーニアとミーシャ、それから双子のソニアとソフィによって周りを囲まれた。
ケートはそれを羨ましそうに見てから、俺の左側で寝る準備をするユイの隣に行こうとしたが、冷ややかな視線を浴びせられ、すごすごと俺の右側に腰を落とした。
馬鹿だなこいつ。たとえユイに軽蔑されなくても、俺が許すわけないだろうが。
ユイにぴったりとくっつかられ、慣れ親しんだ匂いにホッとして目を閉じた。




