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眠れない夜に  作者: ミィ
第一章
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1 金曜日


真理亜は金曜日が好きだった。


出勤前に作ったサンドウィッチを持って会社に来ると給湯室でコーヒーを淹れる。


淹れるといっても普段はエレベーター横にある自動販売機で買うのだが、

金曜の朝は給湯室でお湯を沸かしてマグカップに注ぎ、

そこにスティック状の袋に入ったインスタントコーヒーを混ぜてできあがりだ。


真理亜が席について一口目を飲み下す頃、「おはようー」と言いながら三々五々出勤してくる。


真理亜も「おはようございます」と返しながら今日予定の資料を次々と確認した。


始業前にその日の作業スケジュールを頭の中で組み立てながら熱いコーヒーと

家から持ってきた一口サイズにカットしたサンドウィッチで朝食を終える。


半分を食べ、残りの半分は午前10時頃の休憩時間に甘い紅茶と共におやつとして食べる。

それが真理亜の金曜日のスタイルだ。



必要なデータを必要な期日に準備するのが自分の仕事だと真理亜は思っている。


数字を入力するだけの時もあるが、データとして意味合いを持ったものを

あるべき場所に格納するときのフィット感は気分が良かった。


月末や決算期には遅くなる日もあるが、それは前もってわかっているので苦にならないし、

普段は残業しなくていいので一週間の予定がたて易かった。



真理亜は週末に次の一週間の予定をたてる。


週に1~2回、チケット制のヨガ教室に通い、フラワーアレンジの教室は月に1度。


習い事をしているほうがアフターファイブの同僚の誘いを断りやすかった。


3回誘われれば1回は受け、あとの2回はレッスンがあるとかもうすでに予定があると

適当な理由で断ることにしている。


そして金曜日か休日の土曜日のどちらかは一人で静かなバーに飲みに行くことにしていた。


そういうスタイルに落ち着いたのは1年と少し前だっただろうか。


今夜行くことにしているバーは、同じ部所にいた先輩から教えてもらった。


寿退社を目前に控えた先輩から引からき継いだ形で、週に1度そのバーに足を運んでいる。


耳障りのよい音楽や、馴染み客の扱いを心得ているバータンダーとの会話などが

一週間の緊張を取りのぞいてくれるような気がして、滞りなく仕事を終わらせるために

真理亜はその日の作業を集中して取り組んだ。





案の定、定時間際に飲み会の誘いがあった。


最近はそれが社交辞令のような気がしてならない。


真理亜はいつものように、「今日はヨガ教室の日なの、ごめんね」と無難に切り抜けて

定時なると机の周りを片付けて会社をあとにした。


駅前のヨガ教室で1時間ほど軽く汗を流したあと、ビルの外にでてみればまだ暗くはなっていなかった。


真理亜は駅の入り口を見て少し迷っていた。


実は真理亜のすむアパートは電車で二駅、早足であるけば真理亜の足でも30分ほどで帰ることができる。


ヨガの余韻でエネルギーがまだまだあるような気がした。


真理亜はきびすをかえすと駅を横目に見ながら歩き始めた。


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