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魔王の真実

作者: 暇神

完成直後のテンションで推敲(見直し)をしていないため、誤字脱字やグダグダ感があると思いますが、お許しください。


 至る所が崩れた壁の破片や、かつて何かの彫像だったらしい石の破片が、虚しく散らばっている象牙色の部屋。

 上を振り仰いで視線にぶつかるのは、あるはずの天井ではなく壮大に広がる深い蒼色の空。

 その全てを抱擁せんとばかりに広がる蒼空の下、壮大さと空虚さを漂わす部屋の中心で二つの影が対峙している。

 長い薄金色の髪を乱して片膝をついているのは魔王――ケイオス・ロード・ダルク。

 その対面で小柄ながらも魔王を見下ろしている勇者――オーダ・ロード・ライグス。

 ケイオスへ突きつけられているオーダの剣と、ケイオスの口元から垂れる真紅の液体。共に肩を大きく上下させてはいるが、状況から見て優勢なのはオーダである。

 しかし、なかなか動く気配を見せないオーダに、ケイオスは怪訝に思う。

「……姫はどこだ?」

 幼さを伺わせる高いソプラノの声だが、声質にはそぐわない気丈な意志も読み取れる。

「俺を殺ってからゆっくり探せばいいだろう」

 ケイオスは王らしからぬ口調で返すと、嘲るように小さく笑った。

「……なら、そうさせてもらう」

 オーダは剣を高く振り上げると、深くため息をついた。

「これで、やっと安寧の日々に戻れる……」

 感慨深げに目を瞑るオーダを見て、ケイオスは今度は大きく嘲笑った。

「貴様、何がおかしい」

 よほど気に障ったらしいオーダは、眉間に皺を寄せ、剣を握る手に力を込めた。

「おかしいさ、俺を殺って平和になると思ってるんだからな。」

「それはどういう意味だ?」

 しかし、オーダの質問にケイオスは答えようとせず、笑ってばかりいる。

「答えろ!!」

 言葉と同時に剣を振り下ろす。瞬間、オーダは感情に任せて剣を振り下ろしたことを後悔した。

(しまった、話が聞けなくなる!!)

 しかし、オーダの剣は鋭い金属音を打ち鳴らしただけで、ケイオスには届かなかった。

 ケイオスの手には鋼質化した黒い外套が握られている。

「……いいぜ、教えてやるよ」

 口角は上がっているが、笑っていない紅い瞳にオーダは寒気を感じた。




 軽鎧の金属音を打ち鳴らし、縁を金色に装飾された赤い絨毯を歩くオーダ。

 純白の石から作られたその部屋は非常に広く、異様に高い天井やオーダから遠く離れた壁のステンドグラスから、大量の陽光が降り注ぎ室内を煌びやかに照らている。

 神々しく厳かな雰囲気の一方、堅苦しさを感じるオーダは深いため息をつく。そして、ある程度歩いたところで赤絨毯の上に片膝をつき、頭を下げた。

「よくぞ帰ってきてくれた」

 低く重い声で言葉を発したのは、オーダの遠く対面で王座に座っている人物。

「しかし、フレアの姿が見えないようだが……?」

「姫は今、挨拶をしているところです。もうすぐこちらへ見えられると思います」

「そうか、今は皆に挨拶をしているところか」

 頭を下げたままのオーダを見ながら、フム、と小さく頷く。

「さて、オーダよ。褒美は何を望む? 著名なライグス家の当主ならば、地位や金は必要無いだろうが……」

 その瞬間、耳をつんざく音が玉座の間に響き渡った。原因は天井の巨大なステンドグラスが割れたのである。

 そして、ステンドグラスの破片より早く黒い影が降り立ち、黒い幕のようなものがオーダを包み込んだ。

「な、何事だ!?」

 王が驚嘆の声を張り上げると、壁際に控えていた近衛兵達が動き出した。

 ステンドグラスの破片が落ちきった頃、黒幕が二つに分かれ、中から数人の姿が現れた。

 オーダ、ケイオス、桃色のドレスを着た少女――フレア。

「な、ォ……オーダ!! 一体これはどういう事だ!? そ、その者は、魔族ではないか!!」

 王は立ち上がり、怒号の声を張り上げながらケイオスを指差す。

「ハハハ、王が聞いて呆れるな。人は指差すもんじゃないんだぜ」

 お返しといわんばかりに、ケイオスは笑いながら王を指差した。

「王、この者の話では魔王は一人ではなく、また、私達を襲っているのはその別勢力の魔王だそうです」

「な、何を言っている!?」

 目を見開き紅潮させる王の顔に、ケイオスは笑いそうになる。

「むしろ、この者は私達の代わりに、その魔王達と戦っていたそうです」

「それは間違いだな。代わりじゃなくて、そうしないと俺が困っただけだ」

「そんなもの信じらるか!! オーダ、お前は騙されているのだ!!」

 唾を飛ばす勢いで叫ぶ王を見て、ケイオスが冷めたため息を吐く。

「だから言っただろう。人間は魔族を信用しない、話すだけ無駄だってな」

「…………」

 ケイオスはウンザリな手つきをする。

「ケイオス様……」

 この場の張り詰めた雰囲気に気圧されたフレアが、か細くケイオスを呼ぶ。それに気づいたケイオスは、笑ってフレアの目線に屈みこんだ。

「お嬢ちゃん、お別れだ。また機会があったら遊ぼうな」

「……ハイ」

 寂しそうに笑うフレア。

 フレアの頭を優しく撫でつけると、ケイオスは立ち上がり背中の外套を翼のように広げた。

「それで、どうするんだ? 今ならまだ普通の生活に戻れるぞ?」

「…………」

 無言を残る意と判断したケイオスが身を屈めた瞬間、オーダは髪を掴んでケイオスと共に宙に浮いた。

「ウォ、痛ぇ、はげる!! オイ、てめぇ、放せ!!」

 バランスを崩したケイオスが、必死に翼をバタつかせてもがく。

「王……私にこの者の言葉を信じる時間をください。それが私の望む褒美です」

「……そんなものは無い。お前は魔王の首をとってこなかったのだからな」

 オーダは王と無言のまま数秒間の視線を交わし、ケイオスの背中へと移った。




「てめぇ、はげるだろうが!!」

 飛行途中、森の中で一息入れたケイオスが悪態をついた。

「……」

 無言のまま視線を一瞬向けた後、再びは前を向いた。その反応には小さく舌打ちする。

「貴様……何で姫を攫った?」

 ケイオスから渡された紫の果実を一かじりして問いた。

「あぁ、うざったい奴等殺るのにお前みたいな勇者様が必要だったんだよ」

「そして、私は今お前と共にいる。全ては思惑通り、というわけか……」

「……何か言いたげだな」

 オーダの、何でもない、という返答にケイオスは命令系で喋るよう促した。オーダは仕方なさそうに口を開く。

「私は貴様が……ロリータだと思ったのだ」

 オーダの言葉にケイオスは思わず果実を滑り落とす。

「俺はロリコンじゃねぇよ……まぁ、俺の年齢なら大抵年下だけどな。もちろん……」

 そう言いながら、モソモソとオーダに近づく。

「お前も例外じゃないぞ」

 言った直後、オーダのうなじの髪留めを解く。すると、オーダの束ねられていた髪は、重力に従ってしなやかに落ちた。

「な……き、貴様、返せ!!」

 頬を赤くしながら手を振り回すが、二mを越えるケイオスの身長に、女性のオーダが届くはずもない。

「まぁ、勇者様が女だったってのは少し意外だったけどな」

 オーダの額へ悪戯で軽い口づけをすると、オーダはこれ以上無い程に顔を赤くして剣を振り回した。しかし、ケイオスはそれを難なく避ける。

「さて、と。悪ふざけはこれぐらいにして……これからは魔族の時間だ」

 木々の枝間から見える空は朱く染まっている。それに呼応するかのように、ケイオスの瞳から紅い光が微かにもれる。

「……」

「……」

 互いに顔を見合わせ、無言で頷く。

 オーダが背中に乗ったのを確認すると、ケイオスは翼を広げて宙へと舞う。

「最初の目標は?」

魔犬ヘルハウンドの魔王、フェンリル」

 大きな黒翼を羽ばたかせ、風を纏いながら二人は夕闇に消えていった。



これ、頭にある長編のエピローグを(無理矢理)短編に仕立て上げたものです。


二人の名前についているロード(lord)は英語で支配者や君主の意。つまり、一族の長を表します。

後は、ケイオス(chaoce)混沌

ダルク(dark)闇

オーダ(order)秩序

ライグス(right)光

ってな具合です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 中々先に期待が抱ける。       
[一言] おもしろかったので続きがめちゃくちゃ読みたいです。ぜひ続編を書いて欲しいです。
[一言] 他の作品に比べ、少しランクが落ちているような気がします。ストーリーが何かごちゃごちゃって感じです。
2006/08/03 12:37 グレイト真田
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