メタフィクション
「あーそういえばさ、こないだわかったようなわからなかったようなで聞いてたんだけど、メタフィクションってなんだったっけ?」
「ggrks」
「ジージーアールケイエス? 何かの暗号か? ふっ、幾千のミステリを読み解いてきたこの俺に暗号で挑もうなどとは、いい度胸だな。キコ」
「……放置するのも楽しそうだけど僕はそこまで性格が悪くないから教えてあげるよ。単にググレカスから母音を除いただけだ」
「……ああなるほど」
「さて、メタフィクションだったか」
「ググレカスじゃなかったのか?」
「臍を曲げるなよ。丁度書いていた話のモチベーションが一区切りついてしまったところでね。僕も暇なんだ。加えて口を動かすのが嫌いじゃないのに友達がすこぶる少ない」
「主に性格のせいだと俺は考察するがね」
「オオワはもう少しオブラートに包むことを覚えろ! ……メタフィクションというのはテーマ性やらなにやらを示すためにわざと現実的でない手段を用いることさ」
「現実的でない手段? っていうとあれか、ええと、……くそタイトルが出てこない」
「西尾維新なんかはわかりやすいメタフィクション作家だね。リアルにはあんなやついないから。あとはどこまでをメタフィクションに含めるかにもよるけど伊坂幸太郎や清涼院流水、それに舞城王太郎なんかがそうかな」
「ああ、伊坂か」
「合点が言ったかい? まあ殺し屋が出てくればだいたいメタフィクションだと思っていいかもしれないね」
「わかりやすい基準だな」
「ちなみにメタフィクションではフィツジェラルドの『ベンジャミンバトン‐数奇な人生‐』が好きだな。映画はくそだったけれど」
「フィツジェラルドっていうと『華麗なるギャツビー』の人か」
「残念ながらそちらは未読なんだがね。僕はあれを読んで天才の書く天才的な物は国籍も国教も関係なく無条件でいいんだと思い知ったよ。残念ながらその短編についていた推理小説のほうは文化の違いからかいまいち感情移入できなかったんだけど」