オチ
「おはよう、オオワ」
「……あ、ああ。おは、よう……?」
「なんだよ、その目は」
「ええと、すごく失礼なことを訊いてもよろしいでしょうか」
「……なんだ?」
「君は一体どなたですか」
「……あのさ、声で気づかないかい、普通。なぁ、オオワ」
「……そういえば俺のことをオオワと呼ぶのは……、まさかキコか?!」
「二十年と少し生きてきたけど今日ほど死にたいと強く思った日は他になかった」
「ご、ごめん。だってお前、化粧してるしスカートだし……」
「ちなみに感想は?」
「え、っと」
「わかってるさ。へたくそな化粧に雑誌の丸写しの衣装なんて見せられてもオオワはなんとも思わないだろ」
「(正直言うと服装のほうは、スタイルいいし超かわいいが化粧は俺の好みじゃないなぁ)」
「……はぁ。あーあ」
「万年すっぴん通しだったお前が、どういう心境の変化だよ」
「悪いかよ」
「わ、悪くはないけどさ」
「(引かれてるだろうなぁ……。けど、この程度でめげてたらあれだ。せっかく姉さんに化粧手伝って貰ったんだ。積極的に、積極的に。……なれそうにない)」
「(アカバにいろいろ言われたのを意識するよなぁ。でも踏み込んでキコが不快だったらあれだし……。積極的になぁ。……ううむ、なれるのだろうか)」
「あの」
「あの」
「お先にどうぞ」
「いやいやそちらこそ」
「……」
「……」
「あの」
「あの」
「……」
「……」
「ま、俺らってそんな感じだよな」
「どういう意味だ?」
「変に意識するのもあれだよな。ってこと」
「?」
「キコ」
「な、なんだよ」
「好きだよ」