八つ当たり
「告白されるかと思ってビビった? なにそれ? のろけ? ざけんな。死ね」
「……なんか荒れてるな。アカバ」
「ったりめぇだろ。あの野郎なにが“付き合ってみたら思ってたのと違った”だよてめえだって大学では“ボク、イケメンだからうんこもおしっこもしません”みたいなツラしてるくせにきたねぇ腹丸出しにして寝るし女の前で屁ぇこくしあぁ死ね。あぁ死ね」
「……フラれたのか」
「ついでにヤマトも死ね!」
「(こいつがフラれたのってこの口の悪さのせいじゃないかなぁ)」
「何? なんか言いたいことあんの?」
「ごめん」
「……何? いつになく素直じゃん?」
「オブラートに包むことを覚えろって言われたんだよ」
「へぇ。ところでさ、ヤマト。私なんかどう?」
「ん?」
「自分で言うのもなんだけど顔は悪くないでしょ。性格も。いい彼女になれると思うよ」
「後者は大いに疑問を挟む余地があるとして、断るよ」
「オブラートに包めよ……。ちなみに理由は?」
「キコのこと、好きだから」
「……ああうん。あんたはそういうやつだよね。それにどうせ自分からは好きって言わずに相手が言うまで待つんでしょ」
「なぜそれを?!」
「あんたは自分が傷つくのが恐いだけ。フラれるのやだ。それしか考えてない致命的な利己主義者。あー気持ち悪。最低! ゴミだね! カスだね! 死ねばいいね!」
「……かもな」
「あ、ちなみにこれ、ただの八つ当たりだから気にしなくていいよ」
「おい……」