ウラカンLP580-2/ LP580-2スパイダー
ウラカンLP580-2/ LP580-2スパイダー見て振り返ってしまった
ウラカンLP580-2/ LP580-2スパイダー
深い夜の帳に包まれた街道の片隅で、秋月は思わず足を止め、背後へと視線を振り返ってしまった
彼の網膜を鋭く射抜いたのは、街の明かりを妖しく反射して走り去る、物凄い地響きのような咆哮を轟かせた一台の「ウラカン LP580-2」――そして、美しくルーフを開け放った「LP580-2 スパイダー」の、圧倒的なシルエットであった
その猛牛の血統を目にした瞬間、秋月の脳裏の引き出しから、かつて書物で読み耽った遠い異国の、極めて硬派で崇高な「実働する鉄の塊」の歴史が鮮烈に甦ってきた
――ウラカン LP610-4 ポリツィア・ストラダーレ
二〇一四年にイタリアのローマ警察に正式に納入された、世界最強と謳われる本物の国家公務のパトカーである
心臓部に備えられたV10エンジンは、最高速度時速三百二十五キロメートル(325km/h)という驚異的な速度を叩き出し、静止状態から時速百キロメートルまでの加速(0-100km/h加速)はわずか三・二秒という、まさにバットボーイズの追跡すら許さない圧倒的なスペックを誇る
イタリアの国家警察は、これ以前にもガヤルドの第一世代、第二世代のパトカーを実戦配備してきた歴史を持つ
しかし、秋月が何よりも胸を熱くしたのは、その驚異的な速さの裏にある、あまりにも厳格で慈悲深い「真の任務」であった
この鉄の馬車は、単なる街頭の広報用や威嚇のための飾りなどでは決してない。そのカーボン製のフロントトランクを開ければ、そこには医療のための「移植用臓器」を傷つけずに安全に運ぶための、特殊な『冷蔵ボックス』が美しく、完璧に移植(装備)されている
時を争う命の現場において、救急ヘリすら飛べない悪天候の中、数百キロ離れた病院へと命のパーツを繋ぐため、超高速で公道を制圧しながら疾走する「緊急搬送の実働車」なのだ
無酸素運動のように息を詰め、その圧倒的な機能美と因果応報の尊さに思いを馳せていた秋月の隣で、由香里が湯気の立つジャスミン茶をそっと差し出しながら、静かに微笑んだ
「秋月さん、またお目目を大きく見開いて、難しいお顔で車の歴史を深くお勉強しているのね。でも、ただ速いだけじゃなくて、誰かの大切な命を一番に労って守るためのパトカーなんて、本当に国宝級に格好いい仕組みだわ」
「ええ、本当にその通りだ、由香里さん。どんなに激しい爆音を響かせて走る猛牛であっても、その目的が『誰かを救うためのセーフティーネット』であるという真実を知ると、胸の奥がぽかぽかと温かくなるね」
秋月が眼鏡のブリッジを人差し指で静かに押し上げながら深くうなずくと、開いた窓の向こうから、遅いドライブから帰ってきた彼らを出迎える健二たちの、「男のロマンが全問大正解の熱さだな! わっはっはっ!」という豪快で大きな笑い声が夜風と共に響き渡り、我が家の中は一気に笑いの絶えない幸福なぬくもりで満たされた
夜が更け、我が家で一番清潔に保たれた湯殿で、沸かしたての新湯にシュシュと浸かって一日の心地よい疲れをすっきりと洗い流した秋月は、電気毛布でひだまりのように温められた寝具へと潜り込んだ
窓の外には、驚くほど大きくて綺麗な満月がぽっかりと浮かび上がり、異国の地で今も命を繋ぐために走り続ける猛牛の行く末と、ルールを守って明日へと一歩ずつ進む秋月たちの未来を、いつまでもぽかぽかと、優しく照らし続けるのであった
ウラカンLP580-2/ LP580-2スパイダー見て振り返ってしまった




