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そんな魔法ならいらない  作者: door
Chapter 2 : PAST, PRESENT, and FUTURE
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#23 VS『未来』⑥

雷撃の刃と流氷の弾丸の猛攻によって巻き上がる粉塵が、夜風によって舞い上がり、空間の景色は徐々に鮮明に戻っていく。


ルームズ=アルシャロックは突き出した両腕をゆっくりと下ろしながら、春風に舞う粉塵の行末を見届ける。


呼吸は荒い、だが、そこに現れる“終劇エンディング”の景色を思い、ここに来てようやく、昂る鼓動を落ち着かせる余裕を抱くことが出来ていた。


「アハハ・・・どんなに感情を言葉を飾ったって、君じゃ届かない“現実”があるんだよ・・・・・」


粉塵の壁が、消え去る。そして、そこに在る景色は、



その場に片膝を立て跪き、“右手”を上空に掲げたまま肩で息をする黒髪の少年の姿、


だが、“決して屈することない“、否定された『大怪盗』の描いた『未来けしき』だった。



「ありえ・・・ない、なんで、だ?どう考えたって、君が“躱せる”ような“魔法ちから”の質量じゃ、ないだろ・・・?」


言葉に、感情が零れ落ちる。ルームズ=アルシャロックが“初めて”見せた、鮮明な“動揺”と“戸惑い”。


當真は、ゆっくりと顔をあげる。そしてルームズ=アルシャロックの声に、応える。


「“躱してねえ”よ、」


「・・・はぁッ?!」


その言葉に、ルームズ=アルシャロックは目を凝らす。


確かに、よく見れば、傷だらけの少年の肢体に、僅かに傷跡や“魔法ちから”の痕跡は伺える。


だが、放った“魔法ちから”の総量を鑑みても、到底“釣り合わない”レベルの痕跡しか見受けられない事に、“動揺”がより加速していく。


「それに、俺“ひとり”で辿り着いた『未来』じゃねえよ?」


「・・・どういう意味、」


“戸惑い”の先の“答”を、ルームズ=アルシャロックは自身の視線の延長線上に、“見つける”。


當真の佇む奥、そこにいるのは白に近い銀髪の少女。


ただし、折られた“右腕”は左手を添えてはいるものの、ダラリと地面へと垂れ流していて、決して“魔法ちから”を使った形跡は・・・・・



“気がつく”、



銀髪の少女が、“左”の瞳を“閉じ”、“右”の“青”の瞳でこちらを見つめている姿を。



「・・・“使用条件”の、省略・・・?」


アルマの“魔法”。それは、“右手”で触れた人の『未来』を“右目”で、そして“左手”で触れた人の『過去』を“左目”で、それぞれ“そうじゃない方”の“瞳”を“触れた手”で隠す事で“”てきた。


“その条件”は、これまでの経緯、過程、全てにおいて“揺るがない”事実としての現象で在った。


だが、“その条件”が覆されている事が、今、目の前に広がる“事実”としての“現実”だ。


そして、ルームズ=アルシャロックの思考が、ひとつの“答”を、導き出す。


「まさか・・・『覚醒』・・・!?」


“ここ”に至った状況は、至極シンプルなもので。


迫りくる雷撃の刃と流氷の弾丸の雨の中、當真は背後から聞こえるアルマの声に“迷わず”従っただけだった、


“そのまましゃがんで、『右手』を『上げて』!!それだけが『正解』だから!!”


その言葉通り、膨大な数の“魔法きょうい”に対し、最低限の損傷のみで當真が『未来けつまつ』を乗り越えたのは、見ての通りだった。


『大怪盗』の発した“言葉”の『意味』を、當真やアルマは“まだ”理解するには至ってはいない。


だが、當真はもう“振り返らない”、言葉も向けない。


そして、アルマもまっすぐと、その瞳で見据えている。


「俺、ひとりじゃねえ、」


「私もこの“魔法ちから”で、ナイトと一緒に、」


二人の呼吸、声が、揃う。謳われる“宣戦布告”の咆哮。



「「“二人”で!!!“勝つ”!!!」」



走り出す當真。その背を追うように、その先を“青”の瞳で見つめるアルマ。


「調子にィィィ!!乗るなっ・・・」


両腕を“変容”させるルームズ=アルシャロック、


“より”も“いち早く”、


「ナイト!!“弾かれる”から、右に“飛んで”ッ!!!!」


「なッ!!?」


アルマの“声”が當真に“先に”届く、當真は“迷わない”。


“こういう状況”は、つい“二週間前”にも、その身で“経験済み”だ。


「うおおらああっっっ」


“何も起きていないタイミング”で。當真は勢いよく、右方へと“飛ぶ”。


と、同時に。“後追い”するように振り被られたルームズ=アルシャロックの“右腕”から放たれた『風の壁』が、當真が飛ぶ“直前”までいた場所を、轟轟と突き抜けていく。


それは、完全なる“不発”に終わる、『大怪盗』の一撃。


「くっ、そ!!!?」


ルームズ=アルシャロックが“左腕”を“変容”させー


「ナイト!!直進しながら、“炎”が来た瞬間に『右手』で“払って”!!その先は“また”弾くのが来るから!!左に“躱して”!!!」


アルマの“言葉通り”に“迷わず”突き進む當真、そして“一歩遅れて”アルマの“言葉通り”の『未来』を生み出すルームズ=アルシャロック。


まるで“筋書き通り”の行動と事象の連鎖が、アルマの瞳には映し出され続けていた。


一歩、二歩・・・當真とルームズ=アルシャロックの距離が、着実に近づく。


「クソがああああああああ!!!!!!!!!」


迫りくる當真に対し、“両腕”を同時にまっすぐと差し向けるルームズ=アルシャロック、だが、


「ナイト!!“まっすぐ”に!!“右手”を突き出してッ!!」


ガッ!!キィィィィィィィンンンンンンッッッッッッ!!!!!!


ルームズ=アルシャロックの“両腕”から、“同時”に収束され放たれた“魔法ちから”の塊を、當真の“右手”が、瞬時に“払いのける”。


互いの距離は、もはや、『ゼロ』。


「おおおおおおおおおおおおッッッッッ!!!!!!」


ゴッッッッッッ!!!!!!!!


「ぐはっっ!!!?」


當真の拳が、“無防備”なルームズ=アルシャロックの腹部へと、まっすぐと突き放たれる、そして


(逃さねえッッ!!!もう“ここ”で!!決めるッッ!!!)


當真は突き出した右腕の反動そのままに、腰を捻り、全体重を乗せて、左の拳をルームズ=アルシャロックの顔面に向けて、“振り切る”。


ゴッッッンンンッッッ!!!!!!


その拳は、確実にルームズ=アルシャロックを、“捉える”。


だが。當真の全身に蓄積された痛み、そして利き手でない一撃によって、“重さ”がどうしても足りない。


数歩後ずさるルームズ=アルシャロックだが、“終わり”には至っていない。


(このまま、攻め続け・・・)


間髪入れずに、距離を縮める當真、



「ナイト!!駄目!!!?“触れないで”ッッッ!!!!!!」



背後からアルマの“声”が届く、だが、當真が振り出したその“右手”を止めるには、“近すぎる距離”。


その『未来』は、瞬く間に『現在いま』に“追いつく”。



「“部分再現”。“絶対反転(アイギス・リバーシ)”」



當真の右の拳が、全体重をかけ、ルームズ=アルシャロックの顔面へと届く、その“刹那”、


ルームズ=アルシャロックを包み込む、瞬間の“白光”。



ゴッッッ!!!ギンンンンン!!!!!!



鈍く歪んだ打撃音、重い衝撃と痛み、そして、


“當真の視界”が、一瞬にして“回転”し“彷徨う”。


と、同時に。その体躯がルームズ=アルシャロックの元から反発するように、“無抵抗のまま吹き飛ぶ”。



「がっはっっっっ!!!?」



倒れ込む當真、自身の顔の中心から血が流れ出ている事も、衝撃で脳内がグルグルと廻り、視界が覚束ない事も、“意識”は出来るがまるで“理解”は出来なかった。


(なに・・・が・・・起き、た・・・?)


當真は思考を巡らせると同時に、何よりも臨戦態勢を維持し直す事に全力を注いだ。


視界はまだふらつく、目の前の『大怪盗』は悠然と両腕を広げている。


「・・・なるほど、ね?君の“魔法”、“圧倒的なレベル差”がある“魔法”なら、“まだ”覆せるってワケか・・・アハハ、“お気に入り”を使ったかいがあったよ。だったら、」


當真の視界が定まらない間にも、ルームズ=アルシャロックの両腕が“変容していく”。


ただし、これまでよりも、濃度の濃い“鮮明な白光”を、その両腕に纏いながら。


「“出し惜しみ”はナシだ。誇っていいよ、君を“認める”からこそ、“切り札”を“再現”するんだからさ?」


ルームズ=アルシャロックの声色が、表情が、そして纏う“空気”が、“全て変容する”。


その両腕に“再現”されたのは、ここまでも随所で目にしてきた“風の刃”、だが、


「“完全再現”すると、僕の“意識”持ってかれちゃう“レベル”の“魔法ちから”だからさ、“覚悟”してくれよ?」



ブワァッッッッッッッッ!!!!!!ギュッッッッッンンンンンンンンンンンン!!!!!!



目に見える空間全てを“断裂”するような、数十・・・いや、数百に連なる“風の刃”が、ルームズ=アルシャロックの“両腕”に纏わりつくように、高速回転しながら浮遊している。



「“部分再現”。“ロンドン(ジャック)(・ザ)死神(・リッパ―)”」



そして。ルームズ=アルシャロックが“特別(切り札)”を謳った、その瞬間、


アルマの“青”の瞳に映し出される、『未来けしき』。



「ッッッ!!!!ナイト!!!!“来ないッ・・・」



その“声”より早く、當真に届く、目の前の『大怪盗』の、『言葉のろい



「“二人”で僕に“勝つ”んだろ?“だったら”、これから君が“するであろう”『未来』は、僕にも簡単に“見える”んだよ?アハハ」



両腕を振るうルームズ=アルシャロック、その矛先は、目の前の黒髪の少年



『ではない』、その奥の、『オッドアイの少女』へと向けられて。



ザザザザザザザザザザザザッッッッッッッッンンンンンンンンンン!!!!!!!!!!!!!!



放たれた数百の“風の刃”、たとえ『未来』が“”えたとしても、手負いのアルマには到底躱しようがないほどの圧倒的質量の刃の壁。


その全てが炸裂する・・・・・駆け出し、アルマの目の前で両腕を広げ“盾”となった當真の全身を、無情にも斬りつける嵐のように。


アルマの目の前には、少年の後ろ姿、そして数百の“風の刃”を受け止めた瞬間、スローモーションのようにゆっくりと“朱い鮮血“が吹き溢れ、アルマにそのまま覆いかぶさる。


その“青”の瞳も、少年から吹き出た“血の波”を被り、閉じざるをえなくなった。


ゆっくりと、そのまま倒れ込む當真。流れ出る血流が、地面に広がっていく。


ゆっくりと、側に寄るアルマ、當真に左手を伸ばす、だが、“反応”はまるで感じ取れない・・・



「ナイ、ト・・・?・・・・いや、だよ?・・・・いやあああああああああああああああああ」



アルマの悲痛な叫びが響き渡る、その“”えていた『未来』の景色が、現実として目の前に広がる事で。



「だから言ったじゃないか?口先だけじゃ『現実は何も変わらない』んだよ?だからこそ、僕は“全部”を手に入れて、世界の主人公になるんだよ?・・・はぁ、つっかれた。ほんっとにさ、バカだよね、君?自分じゃない誰かの為に“命”を投げ出すなんてさ、」



アルマは、視線を、ゆっくりと上げる。湧きだつ感情は、“ひとつ”。



「僕の物語なんだからさ、君なんかには最初から届かない『未来けつまつ』って“決まって”るじゃないか?アハ、アハハ、アハハハハハハハハハハハハハッッッッッッ!!!!!」



この状況から、決して好転などするはずはない。


それでも、薄っぺらで気味が悪い、軽妙な笑い声で、高らかに謳う『大怪盗』のその“言葉”に、


目の前で自身を庇い倒れる黒髪の少年を想い、


アルマは叫ぶ。“絶望”を越える、“怒り”の感情だけをその心に抱いて。



「黙れッッッッッッ!!!!!!これ以上、ナイトの事をー」



ギィィィィィィンンンンンン!!!!!!



瞬間、それは、“発現”する。



アルマの瞳。少年の鮮血で閉ざされた“青”の瞳の、



“逆”。左の“赤”の瞳に、“熱”が滾る感覚。



アルマのその、“赤”の瞳に映し出されていくのは、“ひとりの青年”の、『現在(いま)』に至るまでの“物語”。



そう、その“始まり”を紡ぐ『過去(ものがたり)』の景色であった。



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