第6話 「一人でも勝てる。」
雨でジメジメする季節から蝉の鳴き声が聞こえる季節。
しばらく妖怪騒動はなく、桜聖学園は夏休みを迎えようとしていた。
校舎とは別の建物になっている体育館。今日はバレーボール部の練習日だ。16時、部活が始まる時間。バレー部ではアップが始まっていた。ランニングから始まり、トス練習に入った時だった。体育館に失墜の戦士が現れたのは。
「何あいつ。」
「怪しくない?」
「面被ってるし剣道部のやつじゃね?」
「先生呼んだ方がいいかな。」
顧問がまだ到着していなく、部員たちはザワザワと話し出していた。
「お前らには用はない。」
戦士は波動でバレー部員を吹き飛ばした。戦士はそのまま進んでいき、一人の元に着く。倉庫を片付けていた一年生だった。戦士は一年生に話しかける。
「お前は練習入らないのか?」
「僕は、サーブ練から入るのでまだ。です。」
フッと笑うと戦士は『ロストクロス』を一年生の右腕に押し付ける。
「何? これ。」
「面白いものだ。見たところお前、ピンチサーバーだろ?」
「そうだけど、それと何の関係が。」
戦士は腕を掴み、顔を近づけ脅迫するようにいう。
「みんなとバレーしたくないのか? バレーは6人でするもんだろ?」
ガクブルと震える一年生はそれに答える。
「僕は、その、下手だから。」
「下手だったらどうした。お前はピンチサーバーだ。一人で勝てばいい。俺みたいに。な?」
「一人で‥勝てば…。」
ロストクロスは一年生の体に埋め込まれていく。
「うぅ。なんか苦しいよ‥これ。」
「安心しろ。これでお前も強くなれる。ちょっと苦しいけど我慢しな。」
そう言うと、戦士は去っていった。一年生の体からはミミズクの怪物が生まれる。
「オレがオマエ喰う。」
「うわぁぁぁぁぁ!」
一年生はミミズクに完全に取り込まれてしまった。
倉庫から悲鳴が聞こえ、今の声で目を覚ますバレー部員。
「なんだ?」
「倉庫からな気がしたけど。」
次の瞬間、倉庫の扉が爆発。ミミズクの頭をした人型の怪物が現れる。
「何なんだよ! お前!」
「オレが一番ツヨイ。」
怪物は無作為に部員を襲い出す。
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同時刻、剣道部。今日も練習が始まろうとしていた。準備体操、素振りを終えて整列の準備に入っていた。
「誠司、お前今日やけに気合い入ってんな!」
「マネージャーから聞いた。僕ももう少し考えないとな。」
きょとんとした顔をする沢島。
「なんだよ。」
「やっぱ、剣道のこと考えてるお前見るの面白いや! でもいざとなったら行くんだろ。俺は応援する。」
「沢島。」
「さ、整列、整列。今日の稽古終わりに一本勝負しようぜ!」
「あぁ。」
剣道具を持って整列の準備をする。
「あれ、影沼先生は?」
「あ、そっか。先生いないと防具つけられないんだっけ。」
誠司は少し考えたあと、
「僕は一回職員室見てくるから足捌きもう少しやっといてくれ。」
そう言うと、階段を降りていった。降りている途中、3階に来た時の頃。
(誠司! 体育館の方から気配が。)
「なんだと。行くしかないか。」
誠司は1階まで降りた後、職員室ではなく体育館に向かった。
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誠司が体育館に着くと目の前にはミミズク頭の怪物がバレー部の部員を襲おうとしているところだった。
「待て!」
誠司はクロスバンドを巻き、フェニリングをセット。
「重装。」
ノーヴァ フェニックスフォルムに着装すると。ミミズク妖怪を取り押さえ、部員へ避難を促す。ノヴェルで連続で斬るノーヴァ。ミミズクの怪物は防戦一方だ。その場で暴れているミミズク。そこでフェニルが
(待ってくれ誠司。こいつ、何かおかしい。)
「なに。」
誠司は剣を止め、様子を見る。
「ただの妖じゃないのか?」
(誰かのミミズクのココロノカミが解放されたのは間違いなさそうだが、何だこの感じ。)
「何がおかしいんだ。」
そうすると消えかけた声で
「…たすけて‥。」
「おい、フェニル今の。」
(まさか、考えたくないが。すでに人間を取り込んだのか。もし本当にそうだとしたら、とんでもないことになるぞ。)
「とんでもないこと?」
(覚醒したカミ。つまり私のような巨体を得る。そして、意識を取り戻したバク‥ココロノカミは…。)
「なんかやばそうだな。だったら早く倒さないと。」
(でも、)
「なんだよ! 急がないとだろ! 今の時間でコアも見えた。」
(中に人間がいるんだ。倒せば一緒に消滅する。)
「なんだと。」
八相の構えを取るが、攻撃に出れないノーヴァ。
迷っていると、正気となった怪物が攻めてくる。
「ソッチから来ないナラこっちカラいク。」
手と一体化した羽を広げて襲いかかってくる。何度もノーヴァのボディを打ちつけた後、距離をとって矢のようなものを出し撃ちつける。
“夜梟・滅矢”
はんなたれた矢はノーヴァに命中。吹っ飛ばされるノーヴァ。
(誠司、大丈夫か。)
「問題ない。でも、どうすれば。」
「ヤレルものナラやってミロ。」
(そうだ、誠司。この前の猫又から回収したリング。あれには人間の免疫と妖怪の免疫の両方が入ってる。もしかしたらあれなら。)
「これか。」
ノーヴァはリングを一つだしと不死剣 ノヴェルにセット。
「なにも起こらないぞ。」
襲いかかってくるミミズク妖怪をいなしながらリングを動かすノーヴァ。
(どうにか、できるはず。)
今度、防戦一方になったのはノーヴァだった。
(そうか! そのリングを思いっきり回せ! 技出す時みたいに!)
「これを?」
ノヴェルにつけたリングを回すと刀身が銀から赤になる。その時、怪物の体が痺れだし、動きが鈍くなる。
「なんだこれ。」
(これでパワーこそは落ちているが人間と妖怪を分離できるはずだ!)
「だったらこれで。」
その場で苦しむように暴れる怪物に斬りかかる。
“赫炎断・離”
怪物を正面から斬ると部員一人と怪物に分離する。他の部員の子が来て、分離した部員を連れて行く。
「離れてろ。これで思う存分いけるな。」
(さぁ、一気に仕留めよう!)
「あぁ! でも今回のコアは手首。」
(新技だな。)
「いいや。」
ミミズク妖怪は起き上がり、
「ナンでコンナことニ。フザケルナァ!」
と言いながら襲いかかってくる。
「うるさい!」
“炎旋斬”
胴を思いっきり切って弱らせる。抜けきり、振り返りどころを正面の『赫炎断』の構えを大きくとる。すると、怪物は翼を纏った両腕をクロスさせ、頭を守る。
「かかった。」
“赫炎断”
頭を守った手首を見事斬って、コアを破壊する。
「ナンダト!」
コアが壊れ、怪物の体は崩れていった。
「一件落着。」
と言って重装解除。
(おつかれ誠司。)
「あぁ。」
と返すと誠司は隠れて見ていた部員たちに気づく。
「あれ、剣道部の凰堂さんだよな。」
「ヒーローだったのか。」
誠司はその子達を見て
「みんな無事か? あの子は。」
と声をかけると、部員が
「さっき保健室に連れてって‥」
と話し始めた時に、異常はなかったようでバレー部の顧問と体育館に戻ってきた。
取り込まれてしまった子は、誠司に戦士のこと、妖怪のことを全て話す。
「一人で勝てばいい。か。」
どこか納得のいっていない表情をする誠司。
「そうなんです。」
「なんであいつはそんなことを言ったんだ? 何か思い当たる節はあるのか?」
「それは…、多分僕がピンサーだから。」
「ピンサー?」
剣道以外触れてこなかった誠司は単語がわからず?を浮かべながら聞き返す。
「ピンチサーバーだよ。サーブを専門にしてるからみんなと長い時間コートにいることは少ないんだ。」
「でもそれと一人で勝つことの何が関係あるんだ?」
「そいつのサーブで試合を終わらせることもできるからだよ。」
話している様子を見ていた他の部員が言う。
「俺たちはそんなん気にしないけど、そいつのサーブでブレイクし続ければその試合が終わることもあるんだ。」
「それで一人で勝つってことか。」
「多分そうだろうぜ。」
その話を聞いて納得する誠司であったがまだ腑に落ちない様子であった。
「でもなんでそんな。強制解放させる必要があったんだ。とにかく教えてくれてありがとな。妖には気をつけろよ。」
「はーい。」
バレー部の様子を見ながら道場へと戻る。
(確かに気になるな。どうして強制解放させるのか。)
「まだ様子を見るか。次会った時には必ず聞き出す。」
階段を上がり、道場へと戻っていくのであった。




