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第5話 「願えば叶う。」

猫又の騒動があった翌日から正式に剣道部の新顧問となった影沼先生は急遽休みとなり、その日は休養日となった。そのため、剣道具をつけての練習ができないため、道場の掃除とミーティングをすることにした。

「おいおうどぅ〜、なんで今日掃除なんだよ休みでよかったじゃん。」

誠司と一緒に部室を掃除する担当となった沢島が面倒くさそうに剣道具棚の整理をしながら言う。

「何もしないのもなんか違うだろ。」

「そうなのか? 休めるとこぐらいしっかり休もうぜ。お前も全国控えてるんだし。」

沢島がそう言ってからしばらくの沈黙が続いた。

「誠司? どうかしたか?」

「中止になったよ。」

「え?」

沢島は雑に動かしていた手を止め、その場に雑巾を落としてしまう。誠司もさっきまでテキパキと動かしていた手を止めてその場に座り込んで話し出す。

「父さんが死んだ事件、あっただろ。あの事件をきっかけに高剣連(全国高校剣道連盟の略称。剣道の大会主催、運営をしている。)が中止にしたんだ。父さんそこの役員だったしな。」

誠司は今にも泣き出しそうな顔をして語り出す。沢島は

「そうだったのか。」

と言ってそこに立ち尽くすことしかできなかった。

「今はとにかく掃除だ。明日からまた練習だしな。」

誠司は雑巾から水がポタポタ落ちるほどに強く握り締め掃除を再開する。

「そうだったんだな。」

と沢島はいうと、誠司の手を掴み、話し出す。

「沢島?」

「誠司! お前、辛いんじゃないのか? 昨日も妖怪倒して、木田ちゃんの話聞いてたんだろ。聞いたよ。もう、戦うのやめろよ。」

「僕はやめられない。約束したんだ。父さんと‥。」

「なんでわからないんだ! 今のお前は確実に無理してる! 身体も心もボロボロじゃねぇか! なんで、そこまでするんだよ…。」

沢島はボロボロと涙を流しながら誠司の肩を掴み、語り出す。誠司はそんな沢島の手をとって

「沢島、ありがとな。お前がいてくれてよかったよ。でも今後も妖怪は確実に出てくるし、僕には負けられない奴もいる。だから僕は戦うことを辞めない。」

そう話していると校庭から悲鳴が聞こえる。

(誠司! 校庭に気配が!)

フェニルが妖気を検知する。誠司は道場に戻る。

「おい、待てよ!」

それを追う沢島。道場の窓から現場を確認するとサッカー部がいた。そしてそこには狼男のような影も見える。

「誠司、あれって。」

「この前僕たちが見たやつとは違うが…。」

「てか、よく見たら一体じゃねぇ。あいつら囲まれてるぞ!」

沢島にそう言われ、校庭全体を見渡すとグラウンド周りを無数の狼が囲っていた。

「なんなんだあれ。」

二人口を合わせてそういうとフェニルが急かす。

(あれは恐らく千疋狼センビキオオカミだ。狼のような習性で実態は幻の群れを作ると言われている。とにかく急ごう! 本体に食べられる前に。)

「あぁ、いくしかない。」

誠司はクロスバンドを巻き、着装を試みる。それを見た沢島が

「またいくのか?」

その声を聞いて誠司の動きは一瞬止まる。そして

「行かなきゃ。」

「お前は本当にそれでいいのかよ! 約束がどうとか俺はわからないけど、誠司は戦うことが好きなのか?」

着装をしようとする手を止める誠司。そこにフェニルが諭す。

(誠司、急がないと。)

誠司は少しイラついた様子で

「わかってる。沢島、悪いな。僕は行く。」

「重装。」

誠司はノーヴァ フェニックスフォルムになると、道場の窓から校庭へと飛び降りた。その姿を見て沢島は雑巾を投げ捨て拳で壁を叩きつける。

「なんでだよ。なんであいつは…。」

そう言っていると、マネージャーの美雪が沢島に声をかける。

「きっと、凰堂くんもわかってると思うよ。」

声をかけていた美雪を睨みつける沢島。

「美雪? なんだよ。お前に誠司の何が‥。」

「凰堂くんだって、わかってるの。自分が苦しいことぐらい。」

「だったらなんで無理してそんなことするんだよ。」

「それは、私にもわからないな。」

呆気に取られた顔をする沢島。

「だって、なんか知ってるみたいな感じで喋ってたじゃねぇか。」

「沢島くんは覚えてないの? 凰堂くんがキャプテン始めて最初に言った言葉。」

「誠司が最初に言った言葉…。」

「『勝ってみんなで笑おう。僕たちを支えてくれている人を笑顔にするために。』 だったっけ?」

ハッとした顔をして何かを思い出す沢島。

「そういえばそんなこと言ってたような。」

「あの時の凰堂くんは自分が勝ちたいなんて一言も言ってなかった。多分、今も…。」

「学校を守るため、誰かを笑顔にするために戦ってる。」

沢島は落ち着いた声で言う。

「そうなんじゃないかなって、私は思うよ。」

「誠司…。」

沢島は壁をドンッと叩くと、部室へ戻ってしまう。


***************************


 道場の窓から飛び降りたノーヴァは、

「やべっ。落ちるじゃん!」

(任せな!)

と言うとノーヴァの背中からオレンジ色の羽が広がる。落ちるスピードは緩やかになる。すると、方向をかえて狼の真上まで移動する。サッカー部員を食べようとしている狼に空中から斬りかかる。しかし、その奇襲は狼の爪によって防がれてしまう。弾かれたノーヴァは勢いよく地面を転がる。

「戦士のやつ、学校中の部活を狙ってるのか。」

(そうみたいだ。まずはこの子達を避難させる。しばらく耐えてくれ。)

「え?」

フェニルはノーヴァから飛び出し、サッカー部員を乗せて学校の屋上に連れて行く。

「ちょっと、フェニル!」

ノーヴァはフェニックスフォルムから打ち込みXとなって戦闘を開始する。何度か剣を振り、攻撃が当たるも効果はない。

「オマエの力はその程度ナノカ。」

「まだ10%も出してないけどな。」

刃が掠るも千疋狼には効いていない様子。反撃に下から振られた爪をモロに喰らってしまう。

「モウ終わりカ。この爪のエジキにナルがいい。」

「こんなところで‥。僕は負けない。」

千疋狼は爪にエネルギーを溜めると周りを囲っていた幻を吸収する。爪は大きく伸びノーヴァを襲う。

狼爪ロウゲキ 満月マンゲツ

腕を交差させ、守りの体制をとると前に巨体が降ってくる。フェニルだ。

「待たせたね、誠司。」

羽を閉じたフェニルがノーヴァを守った。

「遅すぎるだろ。」

「さぁ、反撃いくよ。」

フェニリングをクロスバンドにはめる

「重装!」

二人の声が重なり、アーマーが展開される。フェニックスフォルムに。

「サッキよりはツヨイんだろうナ。」

「見せてやる。僕たちの120%!」

鋭い剣捌きで千疋狼を追い詰める。上下に揺さぶる剣捌きに翻弄される千疋狼は距離を取り、狼の幻を出す。

「サァ、いきな。オレのオオカミ軍団。」


幻狼聯団ゲンロウレンダン


無数の狼の魂弾がノーヴァを襲う。

「あれは当たるの痛そうだな。」

(だったらては一つ!)

「あぁ!」

不死剣 ノヴェルが展開。エネルギーが溜まる。


“焔突”


炎の竜巻が狼を消していく。

「ナンダと。」

ならばこれでどうだ。融合ダ。千疋狼は妖刃軍を召喚し、全員に狼を取り憑かせる。妖刃軍の持っていた刀は爪に変わり、右手に装着される。

「なんだあれ。」

(なんか強くなったっぽいけど‥。いけるでしょ!)

「そうだな。」

「イケ! オマエたち!」

千疋狼の指示でノーヴァに向かっていく妖刃軍。ノーヴァは一撃を重く、確実に一体ずつ撃破していくが、囲まれてしまう。

「数多いし、こりゃ大変だぞ。」

(一気に斬ることができればいんだが。)

一体ずつ斬っていたんノーヴァは手をとめ、

「そうか!」

と言って、ノヴェルのレバーを展開する。

(そうか。焔突なら一気に。)

「いや、もっと有効打で攻める。」

(有効打?)

「こういうことだ。」

炎の竜巻を纏ったノヴェルで逆八相の構えをとる。

「一気に切り裂け!」

左足を軸に右に一回転。


炎旋斬えんせんざん


で妖刃軍を全滅させる。

「ナンダソレは!」

「さあ、あとはお前だけだ。」

「オレが負けると思っテルのカ。」

爪で裂く、剣で斬るの打ち合いが始まる。一瞬の隙をついたノーヴァの刃はコアの付近を掠った。

「今回は右腰か。どうりで見づらかった訳だ。」

(だったらさっきの技で。)

「あぁ! これで終わらせる。」

「炎旋斬」(炎旋斬!)

ノーヴァの胴切りは千疋狼のコアを破壊。

「ナンダト。オレはマダ。」

「終わりだ。」

千疋狼の体は崩れていった。校庭の真ん中でノーヴァは着装解除し、フェニルはSDフォルムへ。

「今回は妙な鍔はなかったな。」

フェニルがそう言うと、誠司は

「そうだな。」

と疲れた様子で返す。

「大丈夫か誠司?」

「僕は大丈夫だ。それより、避難させたサッカー部の連中は。」

「屋上にいるよ。」

フェニルが指差す方向を向くとそこにはサッカー部の子達がいた。


***************************


フェニルが元のフォルムに戻り、屋上に着くと、

「なあ、お前たち黒いアーマーをつけたやつ見なかったか?」

サッカー部員が顔を見合わせると、キャプテンらしき子が言う。

「俺たちは見てないっすよ。」

「そうかありがとな。」

そう言って誠司が立ち去ろうとすると、一年生らしき子が声を上げる。

「あの!」

「どうした?」

「僕です。あの妖怪を生み出したのは。」

「あの黒い戦士に会ったのか!」

仰々しい声をあげて言い寄る誠司。

「会って、スタメン入りたくないのかって言われました。それで、入りた言って言ったら『このリングに触れろ。必ず叶う』って言われてそしたら、体からさっきの怪物が出てきて…。」

怯えながら言う子に誠司は、

「話してくれてありがとう。君が無事でよかった。」

と言い、その場を立ち去った。


その様子は全て見られていた。誠司たちの知らぬところで。

「頑張るねぇあの青年も。あーあ、これからが楽しみ。」


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