第28話 「動き出す闇」
道場の壁になっていた扉が開きケガレが奥へと導く。
「最近の桜聖はどうだい?」
「…。」
緊張か、疑心か。口を開けない誠司。
「無視はひどいよ。凰堂くん!」
ニコニコと笑いながらケガレは誠司を振り返る。
「影沼先生‥。あなたは何を考えてるんですか。あなたは本当に闇に堕ちてしまったのですか…。」
そう言いながら足を止める誠司。
「全てを教えてあげるよ。早く行こうか。」
しばらく歩くと誠司、武叶、青葉の前に大きな扉が現れる・
「ここが僕の研究室さ。特別に見せてあげるよ。」
ケガレがニヤリと笑うのに気付かずについていく3人。
扉の奥の『研究室』に入るとさまざまな医薬品と無作為に置かれたパソコンが置かれている。
「ここは…。」
荒れた研究室を見て呆然とする3人だった。
「なんかカッケーよな! こういうの!」
青葉はテンションが上がって研究室内を見回す。
その背後では唇を噛み締め、拳を握る武叶がいる。
「武叶?」
「俺は前にもここにきた。」
「前にも?」
「あぁそうだ。俺が力を求めて『影沼』に連れてこられたのがここだ。」
「そういうことか。」
「失墜の戦士の力を手にし、絶望の戦士の力を手に入れたのもここだ。でもここは…!」
武叶の顔の真横をナイフが通る。
「そこより先はボクが話す。」
ナイフを飛ばしたのはケガレだった。
「武叶くんの言う通りここは今は僕が『人体実験』に使った場所だ。でもね最初はただの研究室だった。僕が物理の実験をするための授業資料に使う動画を撮るためだけのね。この場所は学校の誰も知らない場所。動画をどこでとったのか聞かれても、自宅、お世話になってる研究室、大学、色々な言い訳ができたよ。」
「それじゃあどうして…?」
「ある日、声が聞こえたんだ。」
「声?」
「何かに怯えるような、それでいて何かを嘆くような声が。僕はその声の元に向かうとさっき君たちのいた道場だった。そこで僕は見たんだよ。『幽霊』を。」
「幽霊?」
「僕がそいつに話しかけると、そいつは『神道獅』だった。
「『しんどうらい』? まさかあの無敗伝説の剣士の?!」
「そうだよ。彼は無敗『だった』。ここは彼の裏の練習場でもあったみたいなんだ。みんなに隠れて練習する場所。僕はそこに土足で踏み入れてしまった。「でもなんでその『しんどうらい』が。」
「彼は高校最後の大会。地区大会1回戦で脚に怪我を負い敗退した。その後、治療を続けたが剣道を続けられる脚ではなくなり、ここで命を落とした。その彼の魂…怨念のようなものがここに残っていた訳だ。」
「でも、それとケガレが生まれた理由に何の繋がりが…?」
「繋がり? そんなものはないよ凰堂誠司。君の物理で教えたろ? エネルギーの『相転移』。」
物理学の世界ではね、物質の状態が劇的に変化することをそう呼ぶんだ。エネルギー体はこの道場に停滞していた神道獅の魂。本来なら、そのまま消えているはずの不安定なデータだったんだ。けれど、そのデータは強い怨念となって道場に残り続けた。そして魂を凶暴化させる僕の『稀血』の彼の魂が共鳴した!」
「てことは、まさか!」
「そう、僕は彼の魂を取り込む装置を作り、直接僕の体に取り込んだ! それが、『ケガレ』という存在を生み出した。もう僕の体は人間のものではない。神道獅の伝説は300年以上前のものだろ? 僕は不老の体になったんだ、その日から。」
「てことは影沼せんせーは今、300歳?」
「青葉くんちょっと違うけど。そういうことさ。」
「『人にはココロノカミが宿る』。そんな訳ないだろう? それは僕が作った秘薬のせいだよ。人の魂の中でもう一つの魂が生まれる。その薬を僕が作り、それを打ち込んだ一人目から何千万の人へ遺伝するようになった。それが今の社会。そしてそれを発見したことにし、『ココロノカミ』と名づけた。僕は人の魂の中の魂が見えるからね。そして『3000年』の今! それを実体化させるものを作ったんだ! 君たちの『お父さんと』ね。」
「…。」
「誠司くん、君が倒したガジリオス。あれは君の父、凰堂武司のココロノカミだよ? わかったろ、被験隊第一号はあいつ。そしてその実験は成功! あいつ入らなくなったから消した!」
「なん…だと。」
「すべてが僕の思う通り! 素晴らしいよ! この世界は!」
「ふざけるな…。そんなことが‥許される訳…。」
「許されている! だから僕は。」
ケガレの手にはクロスバンドのようなものが持たれている。
「君たちが倒れるか、僕を止めるか。決着をつけよう!」
「なんだあれ!」
「クロスバンド…じゃない?」
「“シグマクロス”だ! 見せてあげよう。 封装!」
ケガレのボディに獅子のような鎧がつけられ、右手には長い太刀が持たれている。
「ケガレ・アリウム完全体。これがボクの答えだ。他人のカミを操り、自身の力でも戦う。グランザン!」
「ハッ。」
ケガレの前にゴリラの貨物、グランザンが現れ、その場に跪く。
「こういうこともできる。」
「何をする王! グウゥゥオオオ!」
グランザンはケガレに吸い込まれる。
「筋力超強。」
さらに妖刃軍を作り出すとそいつにコアを流し込む。
「生成。」
「そんな!」
妖刃軍の体はみるみるうちにグランザンへと変化していった。
「それじゃあ、任せたよ。ボクは今から全ての『ココロノカミ』をボクのモノにする。」
そういうと、脚力で高く飛び、腕力で屋根を貫き、外に出る。
「待て!」
明日のノーヴァ フェニックスフォルムへと重装し、空へと羽ばたこうとするが、ケガレの落とした大量のコアが妖刃軍へと変化し、ノーヴァを押しつぶす。
「誠司!」
「俺たちもいこう!」
「重装!」
武叶と青葉もそれぞれ
刹那の剣士ゼロ サンダードラゴンフォルム
希望の戦士 ホーヴ ハクアフォルム
に重装してグランザン率いる大量の妖刃軍を斬っていく。
「誠司! 早くケガレを追え!」
「ここは俺たちに任せろ!」
「武叶、青葉…!」
「いけーーーーー!」
「わかったすまない!」
“炎旋斬“
羽ばたくと同時に回転しながらの胴切りで空中へと飛ぶくノーヴァ。
「オレのチカラを忘れたか!」
グランザンの怪力が二人を吹き飛ばす。
「ここ俺たちだけで勝ったら、すげーヒーローなんじゃね!」
「何バカなこと言ってんだ…。まあまあやばいだろこれ!」
「でも、」
「勝つ以外何もねぇ! ウオオオオオオオ!」
二人の声が重なり、大量の妖刃軍を倒していく。




