第21話 「覚醒 剣聖の力。」
グランザンが残した狼男を撃破したノーヴァとゼロ。しかし、ノーヴァのココロノカミのフェニルの声は消えていた。
「フェニルの声? そりゃあ…。あれ? フェニル?」
フェニルの声が聞こえず、目を見開く。
「どう言うことだ…。フェニル? フェニル!」
「ムダだ。恐らくオマエの使う氷のフォルムはあいつとの相性が合わず、今消えかけている状態だ。一旦、お前のガッコウに戻るぞ。」
『劔乃武道館』から桜聖学園の道場に戻ってきた誠司と青葉、そしてドラグ。
フェニルの行方を追って誠司とドラグが話している。
「前に超重装した時は大丈夫だったじゃないか‥。」
「今回のはな、絶望の戦士が言っていた『強制解放』。その逆をオマエは今してしまっているんだ。『心』に従わず、『感情』だけで戦った。だからフェニルはお前の中で凍りついた。」
「そんなわけ…そんなわけない…。」
「アルんだよ! 現に今アイツの声は聞こえていない。」
「どうすれば‥どうすればフェニルは戻ってくるんだ!」
誠司はドラグにひざまずく。
「オレにもそれはわからねぇ。確実に言えるのはその『バーストリング』をあまり使わないことか。」
ドラグが立ち上がる。
「オマエ、今フェニックスフォルムに着装してみろ。」
「あ、あぁ。」
誠司はクロスバンドにフェニリングをつける。
「着装。」
しかし、何の反応もなく、打ち込みXに着装しただけだった。
「ダッタラ、そのバーストリングを上からするとどうなる?」
フェニリングの上からバーストリングを装着する。
「超重装。」
打ち込みXの体に霜がつき始め、アイスフォルムのアーマーが形成される。
「そ、そんな。」
「超重装できた…。」
青葉も驚く。
「コレが現実だ。オマエがフェニルを乗っ取った。それだけのことだ。」
絶句する誠司。
「しばらく一人にしてくれ。」
そう言うと誠司は部室の方へと走っていく。
「おい待てよ!」
「凰堂くん!」
その場にいた沢島とマネージャーの美雪も誠司を追う。
道場に残った青葉とドラグ。
「それで、龍悟‥。」
「怪物だろ。なんか‥俺も感じた。」
青葉が頭を掻きながら言う。
「そうか。いくぞ。」
「ちょっと待て!」
そう言って青葉は部室に入った誠司に
「怪物が出たから俺はそっちいくぞ! 場所は‥。」
誠司のいる部室のドアからドラグへと視線を移すと
「街の方だ。」
ドラグがボソッと告げ口する。
「街の方だ! よし、街行くぞドラグ!」
そして桜聖の道場を後にする青葉。
部室では
「怪物か…。」
誠司が部室の中で座って考えていると扉をノックする音が聞こえる。
「はい。」
と返事をすると外から沢島の声が聞こえる。
「凰堂。悪い、全部聞いてた。フェニルいなくなっちまったのか?」
「あぁ…そうみたいだ。」
「戻ってくるよな‥? お前の相棒なんだろ?」
「そう‥だな。」
扉越しに話す二人。そこで沢島があることを思いつく。
「そ‥そうだ! これでお前はチャクソウできないんだろ? だったらもう戦う必要ないし、剣道し放題じゃねぇか! 怪物でても牙焼の青葉が…いるしよ。」
最初こそ元気に話す沢島だったが、次第に自信がなくなった声に変わっていく。
「そうだったな。お前は僕が戦うことに反対だったもんな。これからはずっと楽しく…。」
「凰堂くんは『みんなの笑顔』のために戦っていたんじゃなかったの?」
マネージャーの美雪も部室の前に来ていた。
「…。」
「フェニルがいなくなったら戦えなくなっちゃうの?」
その言葉を聞いてハッとする誠司。
その手にはクロスバンドが握られていた。
「僕は‥僕には…。もう戦う『資格』がない。」
「何言ってんだ、誠司!」
沢島が扉を叩きながらそう言うと誠司はそれに応えるように
「僕は…! 戦うことに呑まれた。父さんを失って‥ノーヴァになって守ってきた…。でも、青葉がゼロになってあいつの強さを見て、僕は笑顔よりも『強くなること』を求めた…。そしてフェニルも失った…。もう何も失わないって決めたのに。」
扉の前に立ち尽くす沢島と美雪。
沢島は拳を握りしめ、
「くそっ…! 勝手にしろ!」
そう言って道場を去ろうとする。
「武叶くんはどうするの?」
美雪の一言で沢島は足を止め、誠司も顔をあげる。
「絶望の戦士を止められるのはノーヴァだけじゃないの?」
「ゼロ‥青葉は強いから大丈夫だ。きっと元に戻してくれる。」
「凰堂くんはそれでいいの? 青葉くんでも勝てるかもしれない…。でも凰堂くんが…。」
次の瞬間、誠司は扉をバタンと開け、飛び出してくる。
「兄さん‥。」
そしてその場に膝から崩れ落ちてしまう。
「兄さん…。」
部室から出てきた誠司に沢島が駆け寄る。
「お前には責任がある。」
「え?」
「この俺に…。お前を応援したくさせた責任がある! お前の行動一つが、怪物と戦うって決意が、お前を強くしたんだろ!」
そして誠司の胸ぐらを掴んで
「だから行ってこい! そして今すぐじゃなくてもいい。怪物全滅させて、武叶を桜聖に必ず連れて帰ってこい!」
「わ‥わかった! やってやる。」
「おう! 行ってこい!」
クロスバンドを握りしめて青葉の元へと向かおうとする誠司。
「ちょっと待って凰堂くん! これ‥。」
美雪の手には一枚の紙きれが握られていた。
「これは…。バーストリングの制御方法‥? なんでこんなところにこれが…。」
「私が道場に入ろうとした時に道場のドアに貼られてたの。何か関係があると思って…。」
「あぁ。ありがとう。それじゃあ、行ってくる。」
そう言って誠司は道場を出る。
一方、街には顔が龍、胴に龍、両手、両膝、両肩に龍の鎧をつけた怪物がゼロと戦闘していた。
「なんだ…。こいつのパワー…。」
ゼロは地面にうつ伏せになっており、街のビルは倒壊していた。
「オレは八岐大蛇。オマエの8倍のチカラはアルとイッタ感じカナ。」
「舐めやがって…! この前のオロチの強化ってことか。」
(そうミテェだ。こいつの中にもコアが四つ見える。)
ゼロの目を通してドラグがコアを確認する。
「だったら…全部‥俺が壊す!」
ゼロはロックブレイブを構え直して八岐大蛇に斬りかかる。
斬撃を決めるが、八岐大蛇には全く効いていない。
「つえぇし、かてぇし、まじでどうなってんだよ!」
「キカぬわ!」
何度も斬撃を打ってくるゼロの腹に右手で一撃を加えて吹き飛ばす。
「ナンでオレに攻撃がキカナイカってカ? これでわかるか?」
八岐大蛇は胴部分から煙を出して固め、それを纏う。
“蛇鱗結界”
「何だと‥。」
(まるでオレたちの龍鱗結界じゃねぇか。)
「コレはオマエたちのトハ違って完全なモノだ。ヤブレルことはナイ!」
地面を叩き、砂利を握りしめるゼロ。
「そんなの‥。どうすりゃいいんだよ…!」
「力が強い奴には力でねじ伏せる。そして力み過ぎて竹刀落として反則負け。それがお前じゃないのか?」
「あぁん?」
うつ伏せのゼロがその声に反応すると、そこにはクロスバンドとフェニリング、バーストリングを握りしめた誠司が立っていた。
「凰堂‥。今更きたのか、もう終わるからお前の出番はないぞ。」
「よく言うよ。そんな体勢で。」
うつ伏せのゼロを上から見下ろして言う。
「でも、今のお前にフェニルはいねぇ…。どうするんだ。」
ゼロにそう言われた誠司はうつ伏せの誠司の前に立つ
「そんなの決まってるだろ。もう一回呼び起こすんだよ! 氷に包まれた僕の中のフェニルを目覚めさせる!」
「できんのかよ‥。そんなこと。」
「まあ、見てろ!」
誠司はクロスバンドを左手首に巻く。
「着装!」
誠司は『打ち込みX』に着装して木刀を構える。
「おまっ…それで戦おうとしてるのかよ!」
「ああ。僕がフェニルと出会った時もそうだった。」
誠司は姿勢を落として、木刀で八岐大蛇に打ちかかる。
「あの時、父さんを失って託されたクロスバンドで、このフォルムで、ガジリオスに抵抗するしかなかった。」
八岐大蛇は全く動じていない。
「そこで、あいつが僕の心に目覚めてくれたから、僕はノーヴァになることができたんだ!」
振りかぶって打つ、突くなど様々に仕掛けるが、どれも八岐大蛇には効いていない。
「(やっぱり技を使うことはできないか…。)」
「コレでオワリか。」
誠司は殴りかかってくる八岐大蛇をかわし、首に木刀をかけて崩して間合いを取る。
「頼むフェニル! もう一度! 力を貸してくれ!」
(君のその気魄を待っていた!)
「やっぱり…そう言うことか。」
誠司の持っていたフェニリングが輝きを取り戻す。
「いくぞ! フェニル!」
(久しぶりにね!)
フェニリングをクロスバンドに装着。
「重装!」
誠司は『明日の剣士 ノーヴァ フェニックスフォルム』に重装。
「前より…強くなった気がする…。」
(それは私の力が完全に戻ったからかもね。)
「いける!」
“紅蓮翔破”
目にも止まらぬ速さで八岐大蛇に急接近。
間合いに入った瞬間、振りかぶって
“赫炎断”
で正面斬りを決める。
「ヨワいな。」
八岐大蛇の反撃の一撃をもらうが、
“焔ノ壁”
を発動してダメージを軽減。
「こいつ、本当に強い‥。」
(でも、今の私たちならいける!)
「そうだな!」
不死剣 ノヴェルのレバーを展開し、炎の竜巻を起こして
“焔突”
の一撃を与える。
「アツイ‥! ヤルジャネェカ!」
龍の拳を振り上げて振ってくるがノーヴァは華麗に躱す。
“鳳焔影”
「クソがァァァァ!」
ノーヴァは八岐大蛇の背後を取ると、赫炎断の一撃で仕留めようとする。
「これで決める。かくえ…」
「ホンキをダシテイルのはジブンだけだとオモッタカ?」
一瞬で振り向いて力のこもった一撃。
“八咬輪廻“
「一撃しか入ってないはずなのに、多段攻撃を受けたみたいだ‥。」
(あいつの拳を作る8体の竜が連続で撃って来たんだ。)
「そう言うことか…。」
「コレで終ワリか。」
八岐大蛇が拳を構える。
「まだだ。こいつを‥使う!」
ノーヴァはフェニリングの上からバーストリングを装着し、
『明日の剣士 ノーヴァ アイスフェニックスフォルム』に重装。
「いくぞ。」
ノーヴァの身体が凍り始める。
(あまり長くは持たないぞ!)
「大丈夫だ。わかってる。だから一撃で決める!」
“零鳴衝”
氷を纏った剣の正面斬りが八岐大蛇を襲うが、片手で受け止められる。
八岐大蛇は若干バランスを押されるも、ノーヴァの攻撃は通らなかった。
「ショセンこのテイド。」
「まだだ!」
ノーヴァは力を溜め、さらに冷気を放出。
(誠司! これ以上はもたない…。)
「しまった‥! フェニル!」
押し込んでいた剣を抜き、超重装を解除する。
(誠司、こっからどうするんだ。)
「この紙に書いてある方法。」
マネージャーから受け取った紙を見ながら言う。
「今まではバーストリングを上から着けていた。でもこのリングをフェニリングと一つにして着装することでココロノカミは『真の力』を発揮する。」
(…! やってみる価値はありそうだ。)
「やるぞ。フェニル!」
ノーヴァはフェニリングの裏にバーストリングを装着。
(すごい…。力が高まってくるよ。)
「いくぞ! 『真装』」
リングをクロスバンドに装着すると、アイスフェニックスフォルムがさらに大きな氷に包まれる。
「カッテに凍りヤガッタ。オレの勝ちだ。」
拳を合わせながら凍ったノーヴァを砕こうとする八岐大蛇。
「やばい‥! 凰堂!」
青葉がノーヴァに手を伸ばそうとするも届かない。
「(凍りついた心も身体も相棒との最強の炎で溶かす。さあいくよ、フェニル!)」
(まかせろ!)
巨大な氷の内から炎が溢れ、氷を砕き、溶かしていく。
「何だあれ。」
ノーヴァの身体には通常のフェニックスフォルムよりも赤みを増し、不死鳥をより彷彿とさせるようなアーマーが身につけられていた。左手には『不死剣ノヴェル』が強化された『煌命剣 リヴァイブ』が持たれていた。
「『明日の剣士 剣聖ノーヴァF』。このフォルムは、フェニルとの絆の証だ。」
(私は誠司を信じる。そして誠司と共に強くなる!)
「ミタメがカワッタところでナニモカワラナイ!」
ドンと構える八岐大蛇に誠司が斬りかかる。
「いくぞ!」
“赫身翔”
超高速で八岐大蛇に体当たりを決める。
大きく吹っ飛び壁に打ち付けられる。
「ナンだト‥?! オレが負けるはずが…。」
“八咬輪廻”
八岐大蛇が殴りかかろうとするとノーヴァは
“鳳焔影”
で攻撃をかわす。
「マダだ!」
さらに『八咬輪廻』を繰り出す八岐大蛇。
「遅い!」
拳を振り上げた八岐大蛇の胴に技を打ち込む。
“聖炎胴刃”
「本体を破壊すれば終わりだ。」
「ナン…ダト。」
八岐大蛇の体はボロボロと崩れ落ち、消滅。
剣聖ノーヴァFの力を手に入れた誠司の勝利となった。
「凰堂! お前強すぎるだろ!」
青葉が駆け寄ってくる。
「怪我は大丈夫そうか?」
「ああ! てかお前どんだけ強くなるんだよ!」
そんな話をしていると物陰から誠司の様子を見ていたマネージャーの美雪も誠司に駆け寄ろうとする。
「凰堂く‥?!」
その時、美雪は突然口を抑えられ、囚われる。
「あれ、今マネージャーの声がしたような。」
「マネージャートワコイツか。」
美雪を捕らえた絶望の戦士とグランザンが現れる。




