9話 ボス
「き、ぎゃほっ。ごへっ!」
「えっと……。大体集まったので早速10階層行きましょう! 体力温存で私が運んで上げますよ!」
び、ビールが変なとこ入って……。
それに完全に不意を突かれて抱き抱えられて……。
うん。この豊満な胸は確かに……姉妹でもおかしくはないか。
性格は全然違うけど言われてみれば御影さんに顔が似てる。
今段階で10階層のボスに挑むメリットなんて保身しかないと思ってたけど、いやいやあるじゃん俺の好感度アップっていうメリットが!
これは害悪モンスターとしてじゃなくて、まゆみさんを通じて俺は人を助けるいいモンスター、しかも強いモンスターがいるって御影さんの耳に入れるチャンスだ!
なんだかんだモチベーション高まってきたじゃないの。
そうだ、ボスに挑む前に自分のステータスは確認しておこう。
『――ステータス』
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名前:多白守
種族:一角兎
ランク:G
年齢:20
レベル:46
HP:91
攻撃力:51
魔法攻撃力:51
防御力:61
魔法防御力:61
幸運値:10000
クリティカル率:10%
◇
ノーマルスキル:鑑定LV1(特殊効果:経験値取得効率表記)、角攻撃強化LV1、忍び脚LV1、危機回避LV1
◇
ユニークスキル:下僕の才、ガードブレイク(角攻撃限定)LV1
◇
習得魔法:無し
◇
進化:50
◇
新スキル取得:50
◇
各属性魔法習得条件:各属性格上のモンスター30匹討伐。
◇
特攻付与:人殺しモンスター
◇
魔石バフ:火属性耐性(N)
◇
備考:人間に対しての暴力行為が一部制限、また弱体化中。人間からの干渉を受けやすい。モンスターとの遭遇率が高。
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『角攻撃強化』が伸びる角の正体で、コボルトの攻撃を運良く避けられたのは『危機回避』のお蔭だったのか。
どっちもパッと見はそこまで強くないけど、とりあえずガードブレイクで刺されば致命傷を与えられる俺からするとなかなか使える。
それにしても10レベルおきにノーマルスキルが増えてくのたまんないな。
レベルアップしやすいからガンガン新しいの覚えられてくじゃん。
こうなってくるとまだ使ったことのない『魔法』も使ってみたいなぁ。
ファイアボールみたいな王道系魔法とか中二病らしい黒い雷とかそんなの使ってガンガン攻める一角兎もいいじゃない。
それに魔法を発動しながらシュッシュッて距離を詰めて、なんてこともできたらかなり戦闘に幅が――
――シュっ!
シュッ? あれ? 俺まさか擬音語が口に出てた?
ってそんなわけないよね。
「ぐおおおお……」
「ドラゴニュートは特殊な炎を生み出して魔石や金属を自由に形成します。だからモンスターなのに鎧を装備したり、今みたいに『槍』を作って投げてきたってわけです。では前衛お願いしますね!」
なるほど。
聞いてはいたけど、この10階層ボスで挫折する人たちの気持ちがようやく分かったよ。
知らぬ間に10階層に脚を踏み入れて、ね。
そう。なんかもう踏み入れてるんだよ!
俺がステータス見てる間に!
意外に足早っ! ってツッコんでる間に颯爽と安直に移動し始めたし! やっぱ足早っ!
攻撃スキルがないのかもしれないけど、その身体能力みるにあなたも前衛向きだと思うよ!
「ぐ、あ……」
「『もう1回』、だそうです! 気を付けてください! 私は防御力が雑魚なので隙を見て攻撃に加わります! ついでに経験値ハイエナします!」
潔いなぁ。
さっきまでモンスターと話すのなんて信じてもらえないって嘘ついてた人だとは思えないや。
まぁなんだ、それだけ必死ってことは分かった。
あのビールを飲んじまったわけだし、俺も必死にやらせてもらいますよ。
と、その前に情報を確認しよ。
―――――
種族:ドラゴニュート
ランク:E+
HP:350
※10階層経験値効率高
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強。HPがボスのそれだよもう。
いやボスだから当然なんだけどさ。
ベビードラゴンと似たような鱗もあるしまさにかっちかちやぞ。
うーん。間合いに入って角で刺したとしても数発は攻撃を当てないと倒せないけどこの槍……
――シュッ。
が怖すぎる。ちゃんと見てれば避けられるレベルで動きながらだとちょっと厳しいな。
いっそのことぶつかりながら進むか?
作れる槍の数、あの素材の量からしてそんなに多くはなさそうだし――
「が、あ……」
ん? また作ってるあの槍……なんか情報見れるくない?