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8話 対話っぽい

「――1匹で、全部倒しちゃった」

「ききぃ……」


 結局思わぬ事態にビビり散らかした残りも倒してレべルは46。


 安堵感と爽快感に包まれながら俺はほっと一息。


 今回は正真正銘ノーダメージ。

 なんかぁ、俺……ちょっと強くない?


 角じゃなくて鼻が伸びちゃいそうですなあ!


「そ、その……」

「きっ!?」


 浸っててすっかり忘れてた。


 そういえば初日から人間と接触しちゃったんだ俺。


 しかもなんかモンスターと話せるスキル持ちっぽい人。

 物腰は柔らかいけど……顔はおっとりって感じじゃなくて、どっかで見たような気もするようなしないような。


「一角兎、さん。あの……」


 顔近づけてきた。

 逃げれないのは『下僕の才』が発揮されてるからだと思う。


 ……。まさかぶん殴られたりしないよね? 経験値寄こせとかいってさ。

 でも、ぶん殴られるくらいなら……って俺またヤバい思考巡ってるって!


「私、実は仲間にパーティー追放されちゃって。10階層のボス倒したら戻ってきていいいらしいんですよ」

「き……」


 うーん。殴られる方がいいかもしれない交渉来ちゃったよ。


 もうこの後の言葉なんとなく分かるよ。


「それでその強さを見込んで、どうか私と一緒に10階層のボスに挑んでください!」


 やっぱり。


 10階層のボスって確かドラゴニュート。

 まだ幼体だから全体的にパラメーター低めらしいけど、その代わりに防具がやたらめったら性能がいいんだと。


 ……。ん? ガードブレイク持ってる俺と相性良くないそれ?


 いやいやいやいやいやいや。でも46レベルは結構ギリギリのラインだし、共闘ってなったらこの人を守ったりしないといけない訳でしょ?

 そんなのなんの報酬もなく簡単にいいですよ、なんて言えるわけないって。


 いくら下僕の才の効果があるからって、この岩に張り付いてでも拒否する。俺は拒否する!


「きっ!」

「そんな、そっぽ向かないでくださいよ! んー。報酬ですよね。じゃ、じゃあこれとかどうですか?」


 それは……缶ビール? なんでそんなものをこんなところに。

 しかもそれ、キンキンに冷えてるじゃねえか!


「私、パーティーメンバーに捨てられないために食べ物と飲み物だけは潤沢に準備してるんです! ほら! マジックカンガのポケットで作った魔法のバック! これにどれだけの大枚をはたいたことか。あー、300万の投資活きて! お願い!」


 いや、そんな目的のために使う金額じゃないでしょ。


 なんでそんなパーティーに固執してるの?


「それは、自分が使える存在だって、『スーパーサブ』として認めてもらって……あいつらの枠を1つ奪ってやりたいからですよ! パーティーからの高評価と金属系スライムの死体を見せればそれはきっと……。ただ強いモンスターを倒すってだけじゃ駄目だけど、それなら……」


 意気込みは伝わった。成り上がりものの1番王道のパターンでそれがハマった時の気持ちよさって凄いっていうからその光景を見て見たい気持ちもある。

 でもね、ビール1本じゃあ無理ですよ。


 というかさぁ……。この思ってること全部筒抜けなの? モンスターの声を聞くよりもあなたの持ってるスキルは完全上位番じゃない?


「んー。全部分かるわけじゃないですよ。実はなんとなくこうかなってわかるだけで、それっぽく話してるだけなんです。そうするといろんな情報をモンスターたちがくれることがあって……。それでこの階層とボス階層に金属系スライムいるっていうのも分かったんです」


 会話してるようでしてないってことか。

 なんかこっちの話が微妙に通じないって部下の話を聞かない上司と話してる気分かも。


「それ分かる! すれ違いコントっておもしろいですよね!」


 分かってない。全然わかってない。

 疲れちゃいそうだし、忍び脚あるからこっそり逃げて出してみよ――


「さっき言ったんですけど。私、金属系スライムの死体が目的だって。でもあれ、見てください」


 女性探索者が指差したのは金属系スライム、ブロンズボロスライムをダメダメコボルトが抱きかかえていた場所。


 そこにはダメダメコボルトの死体と、1つの魔石が。


 あれ? ブロンズボロスライムって死体残らない系? だったらそもそもその目的は――


「金属系スライムはその身体に利用価値が自分で分かってるです。だから殺した後も死体は動き、次の命に姿を変えるためにその場から消えていく。しかも金属系スライムはリポップが特別で、10階層ごとの湧き。つまり私の知ってる情報の1つ、ブロンズボロスライムは9階層にいる、は儚く消えたわけです。そう誰かさんのせいで」

「っき……」


 ゴクリ。すげえ凄み。


 この人、まさか俺に責任があるとか言い出すつもりかよ。

 モンスターを脅そうとかなかなかな度胸じゃん。


 でもそんなのは脅しにならな――


「となればですよ。そんな貴重なスライムを倒したモンスターは害悪認定。ふふ、私には私の強さは信じてもらえないけど、私の話なら信じてくれる人が、いる。それはあなたよりも遙かに強い。さ、もう言いたいことは分かったわよね」


 御影さんにテイムされるどころかお尋ね者、か。


 ふ。それヤバ。


「き、きき!!」


 ――プシュッ!


「交渉成立ですね!! 頼みますよ10階層のボス戦!! あ、魔石は拾っておきたい? 仕方ないですねぇ。それくらいはしてあげますよ!」


 俺は交渉成立の合図として女性探索者の手からビールを奪うと盛大に角で一突き。


 久々の飲み物を浴びるようにして飲み干したのだった。


「あ、名前を言い忘れてました。私は、まゆみ。御影まゆみです! 以後よろしくです!」

お読みいただきありがとうございます。

モチベーション維持のためブクマ、評価よろしくお願いします。

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