5話 幸運
『――ガシャン。ガラガラガラガラガラガラガラガラガラ……ドドン! ドンドン! グォォォォ……』
……。いや。ガチャの演出音っぽいアナウンス要らないから! 来てる! 来てるってコボルトが! 腹筋われてるってこのコボルト!
「があっ!」
「き、きき!」
振り返るともうそこに立ってたコボルトが今度はその拳を連打。
俺はそれを転がりながらなんとか回避。
反撃したいけど起き上がる暇ないってこんなの。
早くガチャ終わってくれ。それで大当たり来い!
そうしないとそうしないと……後ろで火を溜めてる音が――
「がっ!」
「き!?」
「ごっ……あああああああああああああっ!!」
唐突に高く飛び上がったコボルト。
それに合わせて後ろのベビードラゴンが火を吐いた。
なるほどね。
コボルトが前に出てベビードラゴンを隠す。
そうして火を吐くまでの時間稼ぎをして、さらに火を回避できないようにタイミングを測らせない、と。
ふーん。やるじゃん。ナイスコンビネーション。
『ドンガラガッシャン! ガッシャンガッシャン!』
こっちも良コンビネーションでいこうよ! 長いよ! 長すぎるって演出!
やばい。このままだと避けれない。焼ける。HP足りる?
というかガチャの内容でどうにかなるの、これ?
「き、ききっ!!」
こうなったらこの角が道を切り開くことに掛けるしかない!
貫け! 俺の一本角!! 限界を超え――
「ききききっ!!」
あっち! やっぱ超えれんかぁ。
うわ。HP40、35、30、25……。もうないってHP――
『ガチャン。NEW【バフ:火属性耐性(N)】を獲得しました。効果時間10時間。自動で付与します』
「――わぉぉおおおぉぉぉぉおっ!」
HP残り10。
俺が死ぬって確信したのかコボルトの高笑いが聞こえた。
でも残念。
俺の運は暗黒の2年の間に蓄えられて蓄えられて……ここぞで発揮しちまったんだよなあ!!
どんだけ火を喰らってももう熱くない! HPの減少も10でストップ!
あはは! むしろ火が俺を隠して……死角を作ってくれてるや!
「――ききっ!!」
「が、あ……」
『クリティカル発生。ダメージ2倍。怯み効果付与』
―――――
種族:コボルト
ランク:F
HP:80→20
―――――
クリティカルは通常ダメージが3倍。さらにそこから怯み効果が抽選されたりする。
俺は運を溜めまくったお蔭でこのクリティカル確率も高いんだよねえ。
ま、今までは元々の攻撃力が低すぎて敵の防御値を超えられなくてほぼ無意味だったけど。
ここに来て運極振りみたいな俺のパラメーターが活きてきましたよ!
「――が、あああああああああああああっ!!」
「きっ!」
俺が生きてることに気づいてベビードラゴンが尻尾を大きく振って攻撃してきた。
でもコボルトが怯んでしまって動けないことに気づいてはなかったみたいで、その攻撃はコボルトが避ける前提。……ってことは。
―――――
種族:コボルト
ランク:F
HP:20→0
―――――
オンゴールごっつぁんです!
『レベルが16に上がりました。レベルアップボーナスとしてHPは回復されます』
これで俺の残りHPは……61!
ダンジョンの仕様がよくあるレベルアップでHP回復のタイプで良かったぁ。
火を突破したところでHP10はちょっとしんどいって思ってところなんですよ。
「が、あぁ……」
「ききっ!」
思いがけず仲間を殺してしまったベビードラゴンはまるでセーブ前に電源が切れてしまった子供のような表情。
きっと、仲間になる過程にいろいろあったんだとは思うし、ちょっとだけ申し訳ない気持ちにもなるけど……。
このチャンスを、俺は逃さない!
―――――
種族:ベビードラゴン
ランク:E
HP:100→80→60→40→20→0
※9階層経験値効率【高】モンスター
―――――
勢いよくベビードラゴンの胸に角を突き刺すと今度はぐりぐりぐりぐりと動かして、反撃を喰らうよりも先にHPは0。
この短期間でベビードラゴンの討伐に成功。
しかもしかも……。
『レベルが21に上がりました。【スキル:忍び脚】を獲得しました。次回30レベルで新スキル取得』
早くも新スキルきちゃいましたよ。
ふんふん。それで忍び脚スキルとな? これは……大暴れできる予感――
「ぺぷっ!」
――ぼっ。
「きっ!」
俺のほくそ笑みタイムを邪魔するように背後から攻撃が飛んできた。
受けた箇所に熱気が残ってるから、火属性の攻撃を受けたらしい。
火属性耐性があってホント良かったわ。
というか、俺に攻撃してきたのはどこのどいつ――
―――――
種族:ブロンズボロスライム
ランク:F
HP:30
※9階層経験値効率――。測定範囲外。
―――――
金属系スライムきたっ! ふふふ……絶対倒す。金属系モンスターは高経験値ってのがこのダンジョンの相場なんだよなあっ!