67:終幕と凶変
「う、嘘? そんな……あっ、あの『商人』を捕まえ、吐かせたと、いうのは……!」
「悪いな」
激昂から一変。崩れ落ちる大老アルベルト。かわいそ。
「は……ははははっ……! じっ、実は儂も、毒だのなんだのというのは、冗談でっ、その、だな……!」
「無駄だろ」
作り笑いで何か言おうとしてるが、まぁ、あそこまでぶっちゃけた後だ。商会長ら十名の視線は冷たい。
「き、貴様らぁあぁあぁあ……!」
「すまんなアルベルト。例の『商人』とやらの存在は察知していた。貴族に効くような邪龍の呪毒……そんなものを渡し歩いてる外道がいるとな」
領主ブラエの件があってよかったよ。おかげで不審な輩の存在を知れたし、呪毒の匂いも覚えることが出来た。
アルベルトたち三人が犯人とわかったのも、そのおかげだ。
「邪龍の毒を撒くような輩、何人もいるまい。そう思ってカマをかけたら、当たりだったな」
「ぐぅぅぅ……!」
こちらを睨み上げてくる大老。そんな彼に「どうしますアルベルト様!?」「お知恵を!」と、手下のゾルトとフナーが駆け寄った。
下手人三人。寄り集まった老害共に、俺は言う。
「なあ、お前たち」
自分勝手な、我欲を振るって。
まだ幼かった子供のイスカルを。
「よくも、私の仕事仲間をいじめたな……?」
『ッッッ――!?』
……おっといけない。ちょっと邪龍オーラ出しちまった。
おかげでジジイたちだけじゃなく、他の商会長らもビビってる感じだ。ごめんね。
「な……なんだ今の気配はッ!? ま、まるで、人間じゃ、ないような……っ!」
「お前たちが気にすることじゃないさ」
だって。
「お前たちは、もう終わりだからな」
指を鳴らす。瞬間、バリィィインッという音が響き、会議室を囲う窓が割れた。
そして踏み込んでくる衛兵たち。彼らはたちまちアルベルトらを取り囲んだ。
「ぬあッ、コイツらは!?」
「――サラ様のご命令により、私めが呼び集めました」
壊れた扉より、老執事セバスチャンが姿を現す。
「犯人は貴方がたでしたか。これは、次に出す紅茶には毒を混ぜないといけませんね」
「執事ぃぃぃぃぃ……!」
鋭く睨むセバスチャンと、血走った眼で睨み返すアルベルト。
似たような歳の二人だ。前領主時代より面識を持ち、談話したこともあるだろう。その関係性が、完全に壊れた瞬間だな。
「それと、おいアルベルトらよ」
「なッ、なんだッ!?」
なんだじゃねーよ。
「捕まる前に、死ぬかもだぞ」
言うのが少し遅かった。
刹那、俺の横合いを抜ける颶風。ズパンッと空気の砕ける音速音すら響かせて、
「――死ね」
まず一人。商会長ゾルトが死んだ。老いた顔面を、『貴族イスカル』に殴り潰されて。
「ゾ……ゾルトォオオッ!?」
「ひぃぃぃぃい!?」
遅れて怯えるアルベルトとフナー。だがもう遅いさ。お前らは、手を出しちまった。
「吾輩に……よくも毒を喰わせたであるな……?」
下手人共を見下ろすイスカル。
その姿に、俺と遊んでる時のような滑稽さはない。
何故なら彼の『種族』は貴族。ある意味俺と同じく、ニンゲンを超えた危険生物なのだから。
「は、話をッ!」
「黙れ」
商会長フナーが死んだ。イスカルの雑に放った烈蹴。その一撃で亜音速で頭部が飛び、天井にぶつかり弾けて鮮血の天幕となる。商会長らが悲鳴を上げた。
「あーあ。もうこの会議室は使えないな。もったいない」
「……謎の技で入口爆破しといて。何言ってるんだ貴様は……?」
やべ、ブチキレイスカルに睨まれた。
襲われると思って「やるかぁ~?」とポーズを取るが、ヤツはなぜか溜息を吐いて顔を逸らした。なんだよ。
「最悪の仕事仲間め。はっきり言うが、吾輩は貴様が嫌いである」
そーかよ。
「…………だが」
こちらを向かないまま、彼は言う。
「――感謝する、サラ。貴様のおかげで、吾輩は救われた」
……そーかよ。
「ふん。感謝するなら、ずっとお前を心配してきたセバスチャンにしとけ。なぁセバスチャン?」
「うぉおおおおおおおおおおーーーーーッッッ! お二人がついに『恋仲』と認め合ったァアアアアーーッ!!!」
「「はぁ?」」
俺とイスカルは顔を見合わせる。何言ってるんだこの執事は?
「イスカルは昔から仕事仲間だぞ。性格はアレだが、頼れる男だ」「うむ。こやつの性格はアレだが、仕事仲間としては申し分ない」
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォオオオオオオオオオーーーーーーーーーッッッ!」
「「うるさ」」
泣き喚く執事を放置することにする。もう歳だしな。ちょっと頭アレなんだろたぶん。
「……さて」
俺とイスカルは同時に罪人を見下ろした。
頭を失くした死体に挟まれ、顔面蒼白で震える老人・アルベルトを。
「こいつはどうするんだ、イスカル?」
「うむ……貴様のせいで毒気が抜けたであるからな。選ばせてやることにしよう」
イスカルは老人に問う。もはや、完全に興味の失せた声音で。
「選べ。ここで吾輩に殺されるか、大人しく捕まって処刑されるかをな」
「うぅぅ……!?」
死だ。もはや死ぬか生きるかじゃない。貴族に手を出してしまった時点で、〝どう死ぬか〟しか未来はないのだ。
「さぁ、早く選ぶである。吾輩は忙しいのだ」
どうでもよさげにイスカルは言う。
こいつの中ではもう、この一件は終了しているようだった。
「……このあと、飯屋に行かねばならんからな。約束通り、付き合えよサラ?」
「当たり前だ。それとも、他人の料理がまだ怖いようなら、私の手料理で慣れてみるか? これでも結構作れるぞ」
「む。それはいいかもしれんな。そこらの者よりは、まだ貴様のほうが信用が……」
と、もはやアルベルトの存在も忘れて話していた時だ。
「うぅぅぅっぅうぅぅぅゥウウウゥゥゥゥウウ……!」
老人が、異様な唸り声を上げた。
商会長たち(((この二人こえーし完全にデキてる……!)))
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