61:乙女チックジェイドさん!
途中でもご感想ぜひください~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!
「ジェイド様にはなんとお礼したらいいか……!」
「気にすんな」
すっかり体調のよくなったアルベド。そんな彼女の下を去ろうとした、その時。
「はぅあッッッ!?」
「お?」
泡噴いて失禁していた犬耳少女・リリティナが再起動した。
そして、
「この化け物っっっ! アルベド様からッ離れろぉーーーーッ!」
「おー?」
裂爪一閃。
ナイフのように尖らせた爪で、俺の腹を引っ搔いてきた。並の人間なら内臓ブチ撒ける一撃だ。
でもまぁ、
「効かないんだけどな」
「ぐぅうぅぅう……っ!?」
逆にひび割れるリリティナの爪。
あー危ない危ない。もう少し『邪龍皮膚』を柔らかくしてなきゃ、あの子の腕ごとバキバキになってたわ。
「大丈夫かー?」
「ぅぅっ……アルベド様から、離れろぉ……!」
ほほう。自分のことはお構いなしか。
未だに恐怖心からガタガタ震えて恐慌状態な感じだが、だからこそ。
「見たかよ、アルベド。お前を守ろうと必死なコイツの姿を」
「……ええ、確かに見ました。わたくしなんて、彼女のことを殺そうとしたのに……」
アルベドは犬耳少女に歩み寄ると、そのまま優しく抱きしめた。
「っあ、アルベド様……?」
「有難う、リリティナ。わたくしはもう大丈夫ですから」
「う、ぁあぁ……!?」
彼女の言葉に、リリティナの緊張が解けたようだ。
倒れ込むようにアルベドに縋りつくと、「怖かったっすぅぅうう……!」と泣きついた。
「アル、ベド様ぁ……! リリ、頑張りますからっ、どうかリリのこと捨てないでくださぃぃいい……っ!」
「わかっていますよ。……お前は本気で命を懸けて俺を守ろうとしてくれた。そんな従者を切り捨てるわけがありますか」
もう大丈夫そうだな。
情け容赦なかったアルベドだけど、それは彼女自身の身体が弱り、精神的にも限界だったこともあるだろう。人間仕方のないことだ。
でももう問題はない。眼病も古傷も消え去った上、アホだけど健気なリリティナが、怪物に立ち向かう勇気を見せたんだ。
これであっさり捨てるような女を、俺は認めた覚えはないさ。
「あっ、アルベド様。目の濁りが消えてるっすよ……!?」
「ええ、ジェイド様に治していただきました。おかげでアナタのお顔もよく見えますよ」
「そーだったんすか!? ……そ、そうとは知らずジェイドさん、とんだ失礼をしたっす~……!」
と言ってふかぶかーと頭を下げるリリティナ。へたれた犬耳が可愛いなオイ。
「別にいいさ。お前半分失神してたし。それよか早くパンツ変えろよ?」
「え、ってふぁああぁっ!? アタシ漏らしてるぅううーー!? は、恥ずかしいっす~~~!」
「ははは」
恥じることはないさ。獣人ゆえ戦力差を本能で察しながら、それでもお前は向かってこようとしたんだ。
リリティナ。今日一番評価してるのはお前だよ。
「ちょっ、ちょっと下着替えてくるっす! ……って、あれぇ!? アタシ、パンツ穿いてない!?」
「痴女なのか?」
「って違うっすよ! 朝ちゃんとアルベド様に穿かせてもらったのに、あれれ~!?」
スカートを押さえながら戸惑う彼女と、恥じらいながら「リリティナッ!?」と叫ぶアルベド。余計なことを言う口は治ってないらしい。
「アルベドお前、コイツのこと可愛がり過ぎだろ。そりゃ好かれるわ」
「あっ、あくまで好かれるための演技でしたから……! いえそれよりもっ」
「ああ。パンツがいきなり消えるなんて怪現象。起こせるのは一人だけだ」
消失おもらしパンツのおかげで思い出せたよ。そういや俺は、ある男に会うためここに来たんだったな。
「正体を見せろよ、人類七大特級戦力――『怪盗ロダン』」
そう呼びかけると、「フハハハハハハハッ」というアホみたいな高笑いが響いた。
はたして男は無駄に窓辺から現れる。
「こんなところで奇遇だなッ、我が親友ジェイドよ!」
「親友じゃねえよ」
現れたのはコッテコテな怪盗衣装をしたアイマスクの男だった。
顔立ちは整った感じだが雰囲気はアホだ。知性の絶無さが垣間見える。何よりその手には、ビチャビチャに濡れた『クマさんパンツ』が握られてるしな。
それを見てリリティナが叫んだ。
「あーーーっ! おいロダン返せっす! アルベド様が二時間かけて選んでくれたアタシのパンツ~!」
「リリティナッ!?」
相変わらず余計な口だった。
アルベドお前、必死に選んでクマさんパンツってどうなんだよ……。
まぁロダンは満足げなようだが。
「フハハハハッ! 安心しろアルベド嬢! センスはアレだがパンツの世界に貴賎なしだぞッ!」
「センスがアレとか言わないでくださいっ!」
「パンツの価値はみな黄金よッ! 特にこれなど本当に黄金ついてるしなッッッ!」
「死になさいッ!」
うわぁ……相変わらずキモさマックスだ。女の敵すぎるぞ怪盗ロダン。
「まぁこちらは後で堪能するとして」
「すんじゃねえよ」
「なにゆえこの地にいるのだッ、我が友ジェイドよ!?」
「友じゃねえし……」
相変わらずマイペースなやつだ。こいつと話してても頭悪くなるから、さっさと用件だけ伝えよう。
「ある筋から情報が入った。お前ら七大特級を、殺そうとしてる組織がある」
「ほほう!」
ロダンは不敵に微笑んだ。命狙われてんのに笑える神経がわからん。
「まぁ我らを疎ましく思う者は多いだろう! 自分で言うのもなんだが自由に生きてるゆえなぁ! 聖都の『王統派』からすれば気に入らんだろうよ!」
「そりゃあなぁ」
「この前も町娘のパンツを盗んだら実は『隠密騎士』で、危うく半殺しにされかけたわ!」
「何やってんだお前」
隠密騎士。前世で言うならナチスの秘密警察だな。
城より派遣された『王統派』の実力者で、身分を隠しながら反逆の兆しある者を探ってやがるんだ。
「ロダン。それでお前、トリステインの街から移動したのか」
「うむ! 特にこの地は衛生意識の向上により、女性がたのパンツが清らかになったからな!」
「お前リリティナのお漏らしパンツで喜んでたじゃん」
「いやいやいやいやいやいやいやいや違うのだぞ我が友ジェイドよッ! 不潔なる女性が不潔なままに汚してしまったパンツは不潔なパンツだが、清らかに努めんとする女性が〝うっかり〟汚してしまったパンツは天然のダイヤモンドなのだッッッ!」
「わけわかんねーよ!」
変態パンツ怪盗にも変態なりの美学があるらしい。
邪龍を混乱させるとは大したヤツだ……。全然尊敬はしないがな。
「話を戻すぞ。詳細は不明だが、お前らを狙っている組織は十把一絡げの連中じゃない。優等人種で構成された『王統派』以上に、かなり危険かもしれん」
「ほうほう!」
――何せ、『人化できる魔物の集団』だというからな。それこそ龍種が何体か混ざっていてもおかしくはない。
「組織の名は『黒亡嚮団』というらしい。それ以上は知らん」
人化できる魔物連中、だという点は今は伝えない。
そんなことが出来る魔物がいると軽く広めてみろ。〝この街に魔物が潜んでるかも〟〝アイツは根暗だし魔物なんじゃないか?〟……と疑心暗鬼になって、魔女狩り時代に突入だ。
「……今はちょうど西暦千五百年ごろ……暗黒史の二の舞なんざ見たくねえっつの……」
ゆえに伝える相手とタイミングは選ぶさ。邪龍自身のためにもな。
「ふぅむ! 何かあるようだが、我が友ジェイドのことだッ! 貴様を信じて詮索はせぬ!」
「そりゃありがとよ。つーわけだから周囲を警戒しろって話だ。お前キモいけど、死んだらちょっと寂しいからな」
「!?!?!? 友情だなッ!」
「ちげーよ」
田舎のうるさいカエルの合唱も完全になくなったら風情がない的なアレだよ。
「他の特級連中にも伝えてくれよ。アネモネは付き合いなくて頼めなかったが」
「我もないぞッ!」
「協調性持てや……!」
どうやら俺が回らないとダメらしい。めんどくさ。
「感謝するぞ友よ! では我から一つ情報を残しておこうッ! 特級存在が一人、『凶兆なるアオイ』嬢は東側地方を巡っていると聞く!」
「ほほー」
アオイか。噂だけなら聞いたことがある。数年前に聖都から特級認定されたばかりの、最年少者らしい。
「てか東側とか聖都越えて逆側じゃねえか。お前みたいにもっと近くにいてほしかったなぁ」
「!?!?!? 友情か!?」
「ちげーよ」
手間かからないほうが良かったって話だよ。
「フハハハハハ! さてッ、では我はこのへんで失礼しよう! これ以上は乙女たちが怖いのでなッ!」
ロダンがちらりと見た方には、ナイフと爪を構えてにじり寄るアルベドとリリティナが。
「パンツを返しなさいッ!」
「女の敵めっす!」
いよいよ飛び掛からんとする二人。だが、
「お漏らしパンツはいただいていくぞ! では、さらばだ!」
瞬間、怪盗ロダンの姿は掻き消えるのだった。
「EXスキルを使ったか」
姿を隠すという能力ではない。その異常さたるや、呆けているアルベドたちを見ればよく分かる。
「……あら、わたくしたちは何を……?」
「ジェイドさんにお礼を言って、あれぇ?」
わけがわからないという様子の二人。
これぞロダンの禁術。『世界法則:自分だけがいない星』を流出するヤツの異界創造だ。
発動すればもう終わり。能力使用中、姿どころか人々の記憶からも、ヤツは隠遁して見せるんだからな。
「「――って、あぁああぁっ!? ロダンに逃げられたっ!?」」
「お、能力を解いたか」
解除すれば元には戻る。が、その頃にはもうどっか行ってるんだよなぁ。
「ちゃっかり金だけ置いていきやがった」
ヤツが立っていた場所には白金貨が転がっていた。
一枚の価値は百万ゴールド。パンツ百枚以上の価格だな。
「えぇぇぇ~~~ん! 変態にパンツ盗られたっす~~~! アルベド様が二時間ウンウン悩みながら買ってくれたくまさんパンツがぁ~!」
「リ、リリティナ。二時間ウンウン悩んだことは言わなくていいですから……っ!」
「でもぉ~!」
ぐずぐず泣くリリ助。そんな彼女に「大丈夫だ」と言ってやる。
「ふぇ、ジェイドさん?」
「俺の目の前で不埒な真似はさせねーよ。――スキル≪収納空間≫解放っと」
虚空を開くと、そこからぼとっと皮袋が落ちてきた。
俺はそれをリリティナに渡してやる。
「これは?」
「さっき盗まれたパンツだよ」
「ふぇっ!? あっ、ほんとだぁ!?」
彼女が袋を開けると、そこにはちゃんとくまさんパンツ(黄金付き)が。
「ふぁええええっ!? いつの間に取り返してくれたんすか~~!?」
「三級冒険者パワーでちょいとな」
「マジすか!?」
怪盗ロダンにゃ悪いが、俺に存在隠遁の禁術は効かない。
万象を燃やせる邪龍の魂は全ての概念を知覚できるからな。ヤツが消えたならば、ジグソーパズルの空白のように『ヤツの消えた跡』を見てヤツの存在を把握するだけだ。
あとは去り際に奪い返すだけだよ。音速の三倍で。
「まぁ慣れたもんだ。犯行現場が近くならちょいちょい奪い返してやってたからな」
「そーなんすか! ジェイドさんありがとっす~~! わーい、百万ゴールドだけ儲かっちゃった~!」
「おう、変態からの迷惑料だ。もらっとけもらっとけ」
これで今度こそ解決っと。さーて、次はロダンの言ってた東側地方に行くか~。いやだるいし今度でいいか?
「ジェイドさんジェイドさん!」
ジェイドさんですよ。なんじゃい。
「ちなみに、なんで変態ロダンから友とか呼ばれてるんすか? よくパンツ奪い返してるってことは、ロダンにとっては敵なんじゃ?」
「ああ~」
そんなの簡単だ。
「あいつ、実は寂しがり屋のかまってちゃんなんだよ。独りの世界で誰にも追われずイジけてたから、俺が腕を掴んで『捕まえた』って言ってやったんだよ」
と言うと、
「「っっっ…………!」」
なんかリリティナはアルベドと頬を赤くしながら見つめ合いだした。なんだよ。
「……アルベド様っ、なんかすごい乙女チックエピソード出てきたんすけど!? この人ずるいっすよ!?」
「ええ、ジェイド様は本当にずるい人ですね……!」
って何がだよお前ら!?
◇邪龍系男子――!
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