53:お客様困りますお客様ぁーーーーーー!!!!!!
渓谷で狩り始めてからしばらく。バジ子は意外と順調だった。
「えっ、えいやぁ~~~!」
『ギシャァーーッ!?』
黒い大鎌を振るい、リザードマン共を豪快に裂くバジ子。
完全にパワー任せのプレイだな。けどそれでいい。
「技術なんてもんはいずれ身に付く。今は自分の強みのパワーで押してけ」
「は、はいっ! おりゃっ、しねっ、トカゲめっ! わたしはドラゴンだぞ上位種だぞおらっおらっ」
「種族マウントはやめろ」
こいつ今でこそビクビクしてて可愛いが、メンタル崩壊前は結構性格悪かったのかもな。
力なくして全方位の魔物にえんがちょされてるのは、それが要因か。
「まぁいいや。じゃあ後はヴァン、素材の剥ぎ方を教えてやってくれ」
「応。あーいいかァ女、リザードマンは透明になる皮に価値があンだよ。これを綺麗に剥すほど価値があってだなぁ」
「ひぃぃぃぃ陛下以外のオスぅぅぅ……!」
「なんだテメェ!?」
そんなこんなで数時間。日も暮れてきたところで、ヴァンが「そろそろしまいだな」と言った。
「リザードマンが本領を発揮するのは夜だからなァ。夜闇の中で連中の保護色を見破るのは至難だぜ」
「だな。てかヴァン、めっちゃ勉強してるじゃないか。いいこいいこしてやろう」
「いらねーよッ!」
はっはっは。コイツのほうも人間社会で努力しているようで何よりだ。半殺しにしてよかったよ。
「半面、バジ子はまだ他人とのコミュニケーションが難しいかもだな」
結局、青少年冒険者たちとは交流できなかったし。
「バジ子はビビるし、向こうも前かがみになるしでなぁ。まーいいや」
今日のところは、人間態での戦闘に慣れたってだけでヨシとしよう。
「じゃあ帰るかヴァン。新入りたちを呼び集めようぜ」
「応。……と、ところでよ」
ん、どうしたどうした?
「さ、さっきアンタが貰った綺麗な石、オレと交換してくれねェか? 代わりにほれ、福引で当てた劇場チケットやるからよっ!」
「何がいいんだ綺麗な石……?」
カラスみたいな知性高い動物は光モノを好むそうだが、すまんが全然感性がわかんねーや……!
◆ ◇ ◆
というわけで翌日。俺はバジ子を連れだして繁華街に出ていた。
昨日、ヴァンから劇場のチケットをもらったからな。
「あわわわわわわわわ……! 街、ニンゲンがいっぱいですぅぅう……!」
「慣れろよバジ子。じゃないとろくに働けないぞ?」
まぁ人と接さずに働ける職業もあるが、そういうのだいたい知識業だ。
文字の読み書きギリギリで計算は足し算がイッパイな頭ドラゴンバジ子にはちとキツイだろ。
「頑張って独り立ちしろよ。そしたら俺もバリバリ働いて、家建てるんだからさ」
「陛下、おうちが欲しいんですか? 陛下のお力なら稼ぐのなんてすぐでは?」
「いやいやいやいや違うんだよバジ子くん。龍の力で人間社会の経済のパイ奪っちゃいけないんだよ。何よりそれじゃ達成感がなくてだなぁ」
「うぅ、陛下の言ってることがたまによくわかりません……! とりあえずわたし、パイは好きです!」
「俺も好き」
と適当に話しながら歩いていると、やがて劇場前に辿り着いた。
「ってうわ、めっちゃ混んでるなぁ」
本日は聖都でも有名な劇団『ムーンシャドウ』がやってくるとか。
「劇っていうのは、ニンゲンたちが何か物語を再現するんですよね? 今日は何をやるんです?」
「ああ、有名な実話『暗黒龍と姫騎士』だな」
バジ子に説明してやる。
十五年前の聖戦時の実話で、騎士団に紛れ込んだ姫様がヒトに味方する暗黒龍に助けられて、共に魔物の大軍勢と戦う話だ。
……うん。
「バジ子」
「はい?」
「俺がお前を半殺しにしたときの話だ」
「ぴぇええええええーーーーーーッ!?」
そんなの見たくないですぅううううう~~~~~! と叫ぶバジ子。まぁごもっともだわな。
「ぶっちゃけ俺も興味ないんだよなぁ。てか王族パワーで脚色されてるけど、真実はかなりくだらないぞ? なんか戦場でガタガタ震えてる騎士がいたから、心配してやったら姫様でさ。そんで仕方なく背中に乗せてやりながら戦ったんだよ。アイツぎゃーぎゃー喚いてるだけで一緒に戦ってないからな?」
そもそも魔物軍団と戦いなんざ俺一人で十分だったんだよ。
まぁーそしたら騎士団のメンツが立たないから、参戦を許可してやったんだけどよ。
「陛下ぁ、もう帰りましょ……? 帰って交尾しましょう?」
「交尾はしねーよ。んー、どうするかなぁ」
劇場前に並んだ大行列を見る。
改めてド偉い人気だ。やがて「チケット売り切れ~~っ!?」と大絶叫が上がったり、スタッフさんが「落ち着いてください! 近所迷惑だから騒がないでッ! チケットお持ちの方以外は、どうかお帰りを!」と叫んだりで、なかなかの阿鼻叫喚になっている。
「ヴァンのやつ、かなりの激レアチケットを手に入れたんだなぁ」
どうしよ、誰かにあげちまおうかな?
団体客用チケットになってるからそこそこの人数が見れるようになるし。
でもそしたら、その枠を争って喧嘩になるかも……。
「んー、都合よく団体客が通りかかれば……」
と悩んでいた、その時。
「――あら、あらあらあらあらァァ???」
明るくも不穏な声が、耳に響いた。
「チケットがもう、ないんですかぁぁぁ? 可愛い女児たちが、劇を見たがっているというのにぃぃぃ~~……?」
「げっ」
声のしたほうを見ると、そこには劇場スタッフを至近距離で見つめる、妖しき爆乳シスターが……!
「悪い人、悪い人、悪い人。悪いのが許されるのはメスガキ様だけ。アナタも、このアネモネが幼女に変えてあげましょうかァァァァァ?」
――人類七大特級存在『妖濫の聖女アネモネ』。
「ここっ、困りますお客様ぁ~~~!」
「アネモネは困りませ~~~ん♡ 幼女増えれば、ハッピー♡」
……邪龍種にさえ匹敵しうる、関わりたくない存在がスタッフにうざ絡みしていた。
・なんか綺麗な石→劇場チケット→???
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