第1話・良く解らない異世界で目覚めて人間を辞めた。前編
暗闇に落ち込んでいた意識が少しずつ覚醒し、ゆっくりと瞼を開く。
岳人「ここは、一体?」
目を覚ますと見たことも無い場所にいた。
遺跡だろうか?だがそれにしては外観は真新しく、それでいて装飾の概念がまるで無いかのような無機質な造りの建物のように思える。
岳人「俺は、確か通り魔に刺されて……ッ!」
思い出すと同時に思わず右の脇腹辺りを探る。
岳人「あれ?」
しかしそこには刺し傷など最初からなかったかのようにきれいさっぱりと治っていた。否、本当に最初からなかったのだろう。その理由を彼は間もなく知ることとなる。
傷は無いが、代わりに別の違和感。
仄かに体温を感じるので生きているのは間違い無いだろう。少なくとも死後の世界に来たわけでは無さそうだ。
どうやら今何も着ていないらしいが、問題はそこでは無い。
自身の肉体の触れた感触がおかしい。
人間の皮膚の感触ではなかった。
それは、爬虫類の体表のようだった。
そして岳人は自分の両の手を見て驚愕する。
肌色に少し黄緑が混ざったような独特の体色。その指先からは鉤爪とまではいかないが、獣のような鋭利に尖った爪が少し長めに伸びていた。
岳人「な、な、なな」
ふと目の前の光沢を放つ壁が鏡のように反射し自身の姿を写している事に気付く。
そこに写っていたのは…………
魔物「なんじゃこりぁアアアアッ!」