#5
優しい鈴のような声。
振り返ると、アレンの向かいの部屋から、プラチナブロンドを下ろしている少女が出てくるところだった。
「えへへ、お兄ちゃん、ごめんなさ~い」
「初めまして。フローレンス・スノーと申します」
アレンやレティシア、僕よりも年上の少女。腰まで伸びたさらさらの髪は不自然なくらい真っ直ぐで、長い睫毛はくっきりをしており、青い瞳がよく映えている。
「エドワードさん……だったかしら。これから紅茶を淹れて少し休憩しようとしていたのだけど、貴方もどうかしら?」
「えっと……」
まだ他の部屋があるし……でも、それ自体に時間がかかるわけでもない。断るのもどうだろうか。
「あっ、ダメだよ。お姉ちゃん」
僕がそんなことを考えている間に、アレンは僕の前を通り過ぎ、彼女の持っていたティーカップとソーサーを半ば強引に受け取った。
「落としたら危ないもん。ぼく、お姉ちゃんにケガしてほしくないから」
「……そうね、アレン。ありがとう」
フローレンスの反応は、少し笑って感謝を伝えるというものだった。同情しているような、少し困っているような微笑み。幼い子供特有の過剰反応だろうか。アレンくらいの年齢になると、ガラスが危ないことを知れば、それを持っている人に「危ない」と教えたりする。
「ごめんなさい。他の部屋にいる人に挨拶をしないといけないから……」
「あら、そうだったのね。引き留めてしまってごめんなさい」
「僕のことは、気にしないで。紅茶……。また誘ってね」
「ええ、分かったわ」
「お姉ちゃん! お兄ちゃんが飲まないなら、僕に紅茶淹れて」
「ええ、いいわよ。少し待って」
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