#2
建物の中に入ると、右手側に受付があった。
「このカウンターは研究所時代に使われていたんだ。その奥に図書室があるから、読みたい本があったら持ち出してもいいよ。あ、でも、汚したり破ったりしないように気を付けてね。左側は食堂。毎日、朝夜八時と正午に食事の時間だよ」
そう言いながら二階へ繋がる階段を上がる。
「二階は僕と子供たちの部屋だよ」
一番奥の部屋に僕のネームプレートが飾られていた。
「ここがエドワードの部屋だよ。それで、これがエドワードの手帳とペンだよ」
深緑色の綺麗な表紙の手帳。真っ白な紙に灰色の罫線が印刷されている。
「毎日書いてほしいんだ。内容は何でもいいよ。勉強していて分からない所を質問してもいいし、本の感想とか、絵を描いている子もいるし、日記を書いてる子もいるよ」
「分かりました」
「荷解きが終わったら、みんなに話しかけてみるといいよ。みんな部屋にいるから。じゃあね」
先生はネームプレートが無い部屋に入った。あの部屋が先生の部屋なんだろう。
「……荷物、片付けないと……」
――ドアを開けて、自分の部屋に入った。子供が使うには少し広いベッドと、木でできた学習机とクローゼット、それに大きな本棚があるだけの殺風景な部屋。
僕は持ってきた本を棚に並べて、服をクローゼットにしまう。
それだけで荷解きは終わった。「――みんなに話しかけてみるといいよ」という先生の言葉を思い出す。隣の部屋にいる子と話してみよう。
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