#1
「先生、この子が――」
黒いスーツを身にまとった長身の男が、僕の髪よりも濃い亜麻色の髪を持った男性と話している。
平均的な身長で、白衣には、羽を模したピンバッジを付けており、僕の隣にいる男とは丁寧な受け答えをしている。あのバッジは「博士号」を証明するために大学から贈られるものだ。
「エドワード、こちらはこの孤児院の経営をしている『先生』だ」
ここを経営……もっと年を取った人がしていると思っていた。でも、特に資格が必要というわけでもないし、門をくぐって少し奥に見える建物は、少し古い印象を受けるから、古い物件を買い取って安くしたのだろうか。
「それでは、エドワードをよろしくお願いします。それでは俺はこれで」
「ええ、いつもありがとうございます。もう少しで雨が降るようですから、お気をつけて」
「ええ、ありがとうございます」
「初めまして。君がエドワードだね?」
僕は何も言わずにうなずいた。
「じゃ、行こっか」
既に何回も見たことのあるポストが、山の中にある「孤児院」の前にも立っている。ここで生活している子供たちが、誰かに送るために設置されているのだ。
「エドワードは読書は好きかい?」
僕は少し躊躇った。人と話すのはあんまり得意じゃないから。
「あ、別に無理して話さなくてもいいからね。僕、昔は人見知りだったから」
「じゃあ、何で孤児院を経営しているんですか? 色んな人が来るのに」
「う~ん……。大人になるにつれて色んな人と話してきたから、っていうのもあるけど……」
先生は少し黙った。何かを思い出しているようだ。
「――もう一つは友達のおかげなんだ。君によく似てる子だったな。そのこも『エドワード』って名前だったよ」
「友達……ですか。でも、『エドワード』なんて名前、どこにでもいますよね」
「そうだね。君のことすごく懐かしく思えてくるんだ。初めて会ったのに、変な話だよね」
「じゃあ、ここにそのエドワードさんもいたんですか?」
「そうだよ。この孤児院、元は僕の両親が使っていた研究施設だったんだ。お母さんたちは『ある病気』の治療について研究していてね。それと同時に、身寄りのない子供も預かっていて、その子供の中にエドワードがいたんだ」
「そのエドワードさんは、大切な友達でしたか?」
「もちろん。他にも子供たちはたくさんいたんだけど、一番仲が良かった。だから、今でもとても感謝してるんだ」
――そう言って、先生は微笑んだ。
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