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異世界行ってハズレスキルで追放されて強くなって見返す

作者: GON狐

俺の名前は佐藤庄司。どこにでもいる普通の高校生だ。

新作のゲームソフトを買ってホクホクの笑顔で家に帰っていると、今にもトラックに轢かれそうになっている女の子を見つけた。

必死にブレーキを踏んでいるのかトラックはキィーと音を鳴らして止まろうとしているが、間に合いそうもない。

近くにいた俺は咄嗟に女の子を突き飛ばし、身代わりになった。女の子は何が起こったのか分からないような表情でこちらを見る。

ああ、こんな所で死ぬんだったら、もっと親孝行しとくべきだったなぁ……。

そんな後悔を他所に、トラックはもう目の前まで迫っていた。

俺が最期に聞いたのは、耳をつんざくようなブレーキ音だけだった。




目が覚めると、そこには白い空間が広がっていた。どういうことだ?俺はたしかに死んだはずだ。

そうこうしていると目の前に何か黒いモヤのようなものが現れた。そして、そのモヤは俺に語りかけてきた。

どうやら、ここは死後の世界で、生前に女の子を助けた徳で異世界に転生してくれるらしい。その世界では日本と違って戦いがあるので、なにかしらの特殊能力を授けてくれるそうだ。説明を受け、俺は再び目を閉ざした。




次に目を覚ました時、目の前には先程の白い空間とは似ても似つかぬ営みの光景が映し出されていた。この世界で6歳となった俺は、前世の記憶と死後の世界の記憶を思い出し、それと同時にこの世界で6年間過ごしてきた記憶も保持している。


この世界では6歳にると祭礼の義が行われ、そこで自身のスキルを知ることができる。そこで得たスキルはその後の人生を左右することになる。


父親に連れられて祭礼の義が行われる教会へとたどり着いた。そして、スキルを鑑定することが出来る司祭が俺の前に来て、頭に手をかざした。数秒後、司祭の口から俺のスキルの名が伝えられる。『裁縫』である。


ふと父親の方を見ると落胆した顔つきで俺の事を睨みつけていた。俺の家系は、代々『剣士』に連なるスキルを得ていた。『剣士』系のスキルはどれも強力なものが多く、この世界で最も有名な職業である《冒険者》において『剣士』系のスキルはこの家系の権威となっていたのだ。


数年後、1人でも暮らしていける歳になった俺は辺境の地に家を与えられ、実家から勘当された。どうやって生計を立てていこうか……。


この世界でも、服屋さんはもちろん存在する。『裁縫』スキルを持っている俺は、服を売って生計を立てることも十分可能だったし、そうすべきだ。


しかし、何故かは分からないが俺は冒険者を目指すことになる。戦闘では何の役にもたたないスキル。


冒険者となってさらに数年経った俺は、とあるパーティに所属していた。最初は寄せ集めのパーティとしてやっていたが、パーティメンバーは徐々に才能を開花させていき、今では立派なAランク冒険者だ。役に立たない俺は、パーティメンバーに迷惑をかけないように荷物持ちに徹した。幸いユーモアセンスがあった俺は、パーティ内で誰かが落ち込んでいたり、パーティ全体が緊張に包まれたりした時に、気の利いた一言で場を和ますことができた。俺にできるのはそれくらいの事だったが、パーティ全員で仲良くやってきたつもりだった。


そんなある日、パーティのリーダーが俺に言った。


「お前は今日でクビだ」


最初は何を言っているのか分からなかった。どうしてそうなことを言うのか、と聞き返した。


「お前のスキルは戦闘に向いていないし、これからSランク冒険者を目指していく俺たちにとっては……言いたくはないが……お荷物だ。これまでずっと一緒にやってきたのは分かるが、Sランク以上の任務を受けるなら、お前が危険に晒された時に助けられるか分からないんだ。 俺たちは遊びでやってるんじゃない。だから、頼む。出ていってくれ。」


俺は直ぐにその場を離れた。パーティメンバーを背に走りながら、俺は怒りを抑えきれなかった。


アイツらは俺の事をそう思っていたのか。アイツらを仲間だと思ってたのは俺だけだったのか。大切な仲間のために今まで俺がしてやっていたことはなんだったのか。


そうだ。強くなってアイツらを見返してやる。俺を裏切ったアイツらに目にものを言わせてやるんだ。


そう決意して俺は足を止める。なりふり構わず走っていた俺は、現在地がどこなのか分からなかった。


辺りを見回すと、ここはダンジョンの中のようだ。遠くに来すぎて、ダンジョンに迷い込んでしまったようだ。さっさと引き返そう、そう思った矢先の事だった。


突如として、大きな咆哮が聞こえてきた。

まさか、ドラゴン!?ここはダンジョンの奥地だったのか!?

咆哮に身体を麻痺させられた俺は、目だけを動かし周りの情報を集める。そして、見つけてしまった。いや、見つかってしまった。


数秒後、俺の目の前には大きなドラゴンがいた。クソ、ここまでか……。


そう思った矢先、身体が光はじめた。そして、俺の頭に言葉が響く。


「『裁縫』スキルがLv9からLv10になりました。新スキル『新・裁縫』の能力により、全ての物を分解・裁縫することが可能になりました」


突如として覚醒した俺のスキル。

このスキルを用いてドラゴンの口や目、身体のあらゆる部分を切り裂き、縫い合わせることによりドラゴンを戦闘不能にすることに成功した。


この力だ。この力があれば俺を裏切ったアイツらに復讐できる。


俺の戦いはこれからだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最後の一文の読み切り感。 [気になる点] 追放の下りでの、主人公が相手の気持ちというか意図を汲み取れてない感じ。わざとそう書いたのか、追放のされ方が生やさしいからそう見えているだけなのか、…
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