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賭け始まる

夫婦生活が話題になっているので念のためR15指定しましたが、全くそういう話はありません。


1週間かかるかな?いや、明日明後日くらいは流石に。

いや、エミリア様が戻ってきてからになるんじゃないかしら?


マイヨール侯爵家の中で、主に若旦那様、若奥様に仕える侍従侍女達を中心として、大変下世話な話でもりあがっている。お二人の初夜はいつになるか、というものだ。


大変不謹慎な話ではあるが、結婚3日目となっても、いたした様子は見られない。かつ奥様は2日目にして、お二人のお子様の母親代理をお引き受けになられてしまった。さらに、今朝、若奥様が、若旦那様に早く寝入ってしまった事をおわびになられた際に「気にせず、ゆっくりやっていこう」、とおっしゃったのを侍女が聞きつけ、更に関心が高まった。とはいえ、若旦那様は、寝室をわけるつもりはないらしい。え、そんなんで我慢できるの、と男連中は更に盛り上がりを見せた。


若夫妻の上級使用人の休憩室で、そんな話題で盛り上がっていると。

「ね、かけない? いつになるか。俺胴元やるよ?」若旦那様付きの侍従の一人、ポールが胸元から手帳をとりだした。

「え」とか、「そんな」とか戸惑いの声が上がった。内容が内容だけに、ためらうのは当然だ。

「あ、じゃあ俺1週間に銀貨一枚。」

「え、じゃあ、おれは3日後に銀貨一枚!」

だが、もう一人の侍従ケネスがのっかると、小姓達も参加しはじめた。若奥様付きである侍女達は、かなり戸惑いをみせていたかが、好奇心がまさり、結局参加した。若奥様のご実家からいらしたニナが怒ってしまうのではないかと心配したが、

「イーリスの方は賭けごとが大好き、と聞いてましたけど、本当なんですね。」と、嬉しそうに言って、じゃあ私は二週間で、と参加してきた。

エドワルド様と奥様が住まう、侯爵邸左翼担当家政婦である私、タニアはその場に居合わせた事を後悔したが、やっぱり参加してしまった。


賭けが始まった事で、これまで以上に上級使用人達の中でお二方の行動への関心が高まった。

だか、いきなり子連れ夫婦状態になってしまっため、新婚時期であるはずが、お子様優先になってしまっている。

エミリア様がプロキアにお立ちになられた日の夜はレティ様が大泣きして若奥様をお呼びになったようで、弱り果てたナニーが寝室を訪ねたときいた。このため、若奥様は、極力お子様方とすごそう、と心に決められたようだ。

朝もご飯を一緒に召し上がりになり、午後にはお茶をご一緒になさり、お子様方のお話を聞かれている。

またナニーからもこれまでのことについての話を聞かれているようだ。

最初の一日二日は、本邸のお子様のお部屋を整えられ、その後若旦那様が王都観光にお誘いになったが、お子様も一緒にお誘いになり、公園や、玩具工房をたずねたりされたようだ。


休憩室では、賭けのことが時々話題に登った。

「今どうなっているの?」

「いや、なんか、お二人のことはみんな関心があるみたいで。どんどん参加者増えてます。追加で複数日付にかけてくるやつもいるし。あと、下男下女まで話題なっちゃってるようで、あちらでも、別枠で始まってるみたいなんですよね。」

「あの、これって家令や旦那様にバレたらまずいですよね」

「そうね。だめでしょうねぇ。」

賭けのの規模が使用人全体におよび初めて、賭けの言い出しっぺのポールは少し焦ってきたようだ。そもそも1週間からそこらで終わるはずの予定の賭けが、未だ終わる気配すら見えないとはどういうことか。

明日で結婚式から10日がたってしまう。若旦那様の結婚休暇が終わってしまうというのに、まさかな事態。


若旦那様付きケニスによると、旦那様は、男としてみられてない気がする、とこぼしていたようだ。それを聞いたニナは、うちのお嬢様は、ちょっと恋愛ごとにうといというか臆病なだけだ、と説明していた。


本来、私はこの話を聞いた時点で、止めて、カーク様あたりに相談に行かねばならないのだが、その気にならなかった。みんな、素晴らしい若奥様が来てくださって、ちょっと浮かれているのだ。若旦那様とエミリア様がご結婚されることなく、関係を解消される事になった件では、みなそれぞれ思うところがあり、侯爵家内は少し荒れていた。エミリア様を責めるもの、侯爵家を責めるもの、若旦那様を責めるもの、二人のお子様を不憫だと言うもの。声高にいうものはいなくても、色々な思いが混ざり、雰囲気はあまり良くはなかった。

なのに隣国から急遽いらした若奥様は、お子様と向き合い、旦那様のふさいだ心を晴らし、停滞していた侯爵家に風をふかせた。皆、それを肌で感じて、うかれてしまっているのだ。暖かくお二人を見守りたいという気持ちの発露にも思えて、止めずらかった。決して出歯亀根性によるものではない。


「賭けはまだやってるのかな?」

「やってるよー。いつにす、る、ひっ。」

くつろいだ様子で応えたポールが、相手を見て小さい悲鳴をあげた。

「‼︎」

侯爵様、侯爵夫人、そして若旦那様付き家令見習いのカーク様がいらっしゃった。

その場にいた全員が固まった。

「なかなか楽しい事をしてるそうだね、ポール?」

「え、あ、ひゃいっ。」

「手帳を見せなさい。」

ポールの顔は真っ白で今にも倒れそうだったが、何とか手帳を差し出した。

カーク様は手帳をあらため、侯爵様に伝えた。

「どうも1ヶ月後というのが最後のようですよ。」

「甘いな。最初にやらかしておるからな。半年はかかるのではないか?」

 「おや、そうきますか?では、私は大穴狙いで一年にしましょうか。」

「許しません。」

ピシャリとした声が侯爵様とカーク様のふざけたような会話をぶったぎった。侯爵夫人である。

「嫁いできてくれた嫁を一年も放置するなど、許されません!半年待っても、まだ、なんてことになったら、私から直々にエドワルドを焚きつけます。」と、夫人は宣言された。そしてにっこり笑い、「という事で、私と旦那様、二人で半年後に金貨五枚お願いします。」

おおおおお、とその場がどよめいた。

「本来許されない事ですが、皆の気持ちもわかるので特別です。」

「アデリアーヌは、この面倒な状況の中、よく頑張ってくれている。皆もよろしく頼む。」

そう言って、ご夫妻は部屋を出ていかれた。カーク様が合図されたので私も、続いて部屋の外にでた。

「タニア様、本来わかった時点でご連絡いただきたかったですね」

「大変申し訳ありません。」

深々頭をさげてから、更に続けた。「ちょっとうかれてしまったようです。あまりにも、微笑ましくて。」

カーク様も、それには同意してくださった。

「ただ、この事で、お二人が煩わされる事のないよう、よろしくお願いします。」

「かしこまりました。」


休憩室からは、異様に興奮した気配が伝わってくる。侯爵家の賭け騒動は、まだ当面収まりそうもない。


連載設定にしましたが、次かくときは、いろいろ決着がついてからになります。 

しばらくかかります。

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