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第28話 友人の妹に何故か背中を押される話

「せんぱーい、お風呂上がりましたよー」

「んー……」


 ぼーっと、スマホを弄りながら、朱莉ちゃんの呼びかけに生返事をする。

 久々に走ったからか、何となくかつて世話になった後輩に連絡してみたくなったのだが――なんとも、久しぶり過ぎてなんと切り出していいのか分からなかったのだ。


「せんぱーい?」


 呼んだのに動かない俺を不審に思ったのか、朱莉ちゃんが再度声を掛けてくる。それにもやっぱり生返事をしてしまう俺に――


「だーれだっ!」

「うわっ!?」


 朱莉ちゃんが後ろに回り込んで、手で俺の目を覆い隠してきた。

 お風呂上がりでしっとりとした手が妙に暖かくて気持ちいい。

 女子の拘りなのか、彼女の使っているシャンプーやボディーソープは俺のとは別物で、漂ってくる匂いも尋常じゃなく、良い。


「あ、朱莉ちゃん」

「正解ーっ! 流石先輩! 私だってちゃんと分かってくれるんですねっ!」

「いや、この家に朱莉ちゃん以外いたら変でしょ……」


 やけにテンション高めな朱莉ちゃんに対し、俺は逆に少し気後れしてしまう。

 ランニングから帰って以降、朱莉ちゃんはやけにテンションが高くなっていた。

 ランナーズハイ……とは違うか。彼女が元気になった理由はランニングとは直接関係があるわけではなく、色々と彼女の中で吹っ切れたことによるだろうから。


「先輩? 何見てるんですか……って、これ……!!」


 後ろからスマホの画面を覗き込んでくる朱莉ちゃん。あまりに前傾になったせいで、部屋着越しに……その、女子特有の膨らみが背中に少しだけど触れてきていた。

 けれど、朱莉ちゃんはそんなことは気にしておらず、ただ俺のスマホを見ていて――俺は慌てて画面を消した。


「あっ……」

「い、いや、別に変なことしてたわけじゃないよ?」


 そんなよく分からない言い訳をして、彼女から離れるように立ち上がる。朱莉ちゃんだって男相手に胸を当ててしまっていたと気が付けば傷つくだろうし。


「先輩、今の子……」

「あー……前ちょっと話した、中学時代世話になってた後輩。なんか久々に走ったら、久々に連絡してみようかなーなんて思って」

「それは……いいですねっ!!」

「え?」


 何故か、朱莉ちゃんは嬉しそうに言った。


「先輩、そういう心がけは実に大事ですよ。特にその子だって、先輩から連絡してほしいって毎日思っている筈です!」


 何故そこまで断言できるのか……と思ったが、彼女は朱莉ちゃんと同級生だ。名前でピンときてもおかしな話じゃない。


「朱莉ちゃん、みの――じゃなくて、桜井のこと知ってるの?」

「ええと……まぁ、はい」


 朱莉ちゃんは何故か少し気まずそうに、曖昧な感じで頷く。なんだか少し気まずい、みたいな雰囲気だ。


「もしかして……仲悪いとか?」

「そんなことないです! って、私のことはいいじゃないですか!? 今は先輩がどう彼女に連絡するかという話でですね!?」

「い、いやぁ、でもやっぱり突然連絡するなんて――」

「迷惑じゃないです! 迷惑な訳が無いですって! だって私だったら……」


 勢いよく、俺の言葉を遮ったにも関わらず、朱莉ちゃんは途中で勢いを弱くする。

 そして、ほんのり顔を赤くして、もじもじと恥ずかし気に上目遣いに俺を見て――


「だって、私だったら……嬉しい、ですから。先輩からご連絡をいただけたら、深夜4時でも嬉しいですから……!」

「いや、深夜4時は迷惑でしょ」

「迷惑じゃないです! それくらい嬉しいってことです!」


 正直、俺だったら深夜4時に通知で起こされたらしんどいなぁと思ってしまうけれど、女の子は嬉しいものなのだろうか。

 確かに俺達男子より、女子の方がスマホでのやり取りは達者というか、頻繁にやり取りしてるみたいだし。


「さぁ、先輩。一緒に考えましょう! 最高にイカした文章を!!」


 朱莉ちゃんはそう、興奮したように息巻く。


 対する俺は、彼女程強い意志を持てていないので……ちょっと気後れするというか、戸惑ってしまうのだけれど。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 4時は深夜と言うより早朝な感覚。夏なら少しずつ明るくなってくる頃合いですしねえ。 [一言] 夜型生活だとそのへんの感覚は後ろにずれていきがちですよね。でも朱莉ちゃんがそんなじゃあ美容に…
[一言] 朱莉ちゃんそれはヤバいそれはやめろ超ヤバい。 りっちゃんがまだ求クンに好意を抱いていると仮定すると、「自分が好きor好きだった男が」「自分の友達(女)に言われて」「自分の友達(女)と考えた言…
[一言] いや4時はやめとけよw
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