プロローグ
見切り発車です!!
「ほらほらほら!早く抜け出さないと死んじゃうぞぉ〜〜??!!?」
「ーーカハッ」
俺は目に見えない力に首を締め付けられ宙ぶらりんにされる。
(ーー誰か、タスケテ)
周りの人間に手を伸ばすも誰も目を合わせようとしないどころか馬鹿笑いしてる奴らがいる始末。
(ーーああ、俺は今日死ぬのかな)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
山の中腹から遥か遠くの戦場を望遠鏡で眺める。
死体があちこちに転がり、武力を持って外敵を排除する。
第三次世界大戦勃発中、……と言っても地球の国がドンパチやっているわけではなく、異世界人vs地球人の戦争だ。
正式な名前は第一次異世界戦争、ほとんどのやつが第三次世界大戦と言っている。
そりゃそうだ、異世界が舞台なだけで結局地球の国同士が資源を取り合ってるのだからな。
こちら地球人の戦力は科学の産物、超能力者。
ある日の夜、世界各地で隕石が飛来し未曾有の大災害を起こした。
飛来した隕石には未知の物質が宿っていた、それだけだったら何の問題もなかった、ただ興味深い研究素材が手に入ってよかった。
それだけの話のはずがその物質と呼応し、勝手に欠片が体内に入り込み異能に目覚め始める少年少女達、俗に言う超能力者が誕生したのだ、後にその隕石の欠片は『覚星剤』と呼ばれる。
この『覚醒剤』は体と同化し新たな筋肉や骨を生み出すらしく、摘出は無理らしい。
隕石の被害は甚大だったがピンチはチャンス、超能力なんてものほかの所にはない財源を有効活用するために異能者を研究する都市を作り、研究費用を募ったら他国からものすごい支援がされた。
どの国も異能は美味しいと感じたらしい。
俺達超能力者が集められたその都市は異能特区と名付けられ、集められた超能力者達は超新星異能種と呼ばれた。
基本的に超新星異能種は超軍(超能力者で構成された軍隊)に配属される。
管理する側からしたら全部まとめておいたほうが楽な上、超能力を軍事力に利用する為には都合がいいわけだ。
対する異世界人の戦力、騎士、戦士、魔術師……細かい戦闘職はわからんがとりあえずはこんなところだろう。
ここ数年で突然不可解な穴が世界各地で開き、その先にはなんと剣と魔法のファンタジー世界が広がっており、最初は和平を持ちかけるも、文化と自分達有利で進めたい両者の気持ちがすれ違う。
地球側は最初は下手に出てたものの、こちらの方が平均的な戦力は上だと判断し、強硬手段に出て現在に至るわけだ。
死と鉄と狂気の匂いが充満する。お互い何人死のうが争うことをやめない地獄絵図、いや、こちらはほとんど損害が出ておらず一方的に蹂躙している。
そりゃそうだ、異世界側の前衛も頑張ってはいるが、こっちの超能力者は身体能力高く、接近戦してたらいきなり風だの火だのをポンポン出すのであっちからしたらたまったものじゃないしあっちの後衛がクッソ長い詠唱を唱えてるのに対してこっちの後衛は攻撃するのに1秒もかからない。
しかも武器の差も歴然、あっちは良くて鋼の鎧、鋼の剣、鋼の盾。
こっちはマシンガン、防弾チョッキ、手榴弾。
これで押される方が頭どうかしてると思う。
今回超軍の二等兵はただの見学なので下手なことしない限りは命の心配はない。
予想通り戦争……ぶっちゃけると虐殺はこの上なく順調に進んだ。
この後俺が異世界に取り残される緊急事態を省けば……の話だが。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「新人ども早く船に乗れ、遅れた場合は置いてくからな〜」
教官の怒鳴り声にいそいそと走る俺、針ヶ谷刻夜、黒髪黒目の中肉中背20歳、よく見かけるオタク風味な日本人思い浮かべてくれればイメージがつきやすいと思う。
そんな俺が走っていたらいきなり片足が空中に固定され突発的な異常現象に驚愕するもなすすべもなく無様に転がった。
瞠目する刻夜、そんな彼を見下ろす複数の男子の一人が喚いた。
「ぷはは!!どうしたの刻夜く〜んそんな何もないところで転んで〜歩くことすら満足にできないのかな?」
まるっきり馬鹿にした口調で挑発してくるのは俺達と同期で一番の出世頭、空海 握イケメンで今は我が軍の軍服に身を包んでいるがファションセンスも上々らしい、そして能力も異常能力者と高く周りからも一目置かれている。
一応俺達、超新星異能種にも能力階級があり上から
空論体現者
進化可能性者
臨界到達者
異常能力者
超能力者
星屑無能者
この階級は基本的には能力の出力で決定する。例えば念動力なら箒を浮かす程度なら超常能力者で高層ビル群を浮かせれば進化可能性者。
能力は鍛えることも可能らしい、事実もともと超能力者が進化可能性者になったこともあるらしい。
一番上の空論体現者はまだ一人も至った事がないまさしく机上の空論らしいので実質、進化可能性者が最高位の能力者だ。
ちなみに俺は一番下の星屑無能者だ……もちろん人間という奴は唯一同族を貶す事に快楽を感じる生物、日々様々な嫌がらせをされている。
(厄介のに絡まれたな)
内心苦笑しつつもそれを表面に出さないよう努める刻夜、少しでも絡まれる要因を失くしたいのだ。
しかしそんな刻夜の処世術は意味をなさない、空海は俺の事情などお構い無しに絡んでくる。
「星屑無能者のお前があまりにかわいそうだから俺たちが課外訓練に付き合おうか?、大丈夫優しく教えてやるからさ」
口は笑ってるが目は笑っていない空海。
「ちょっ、優しすぎるっしょ握〜」
「お前がそういうなら手伝うけどさ〜」
「オラ、握の慈愛に感謝しろよ刻夜くん〜?」
煽ってくる空海の取り巻き達。
もし本当に優しく教えてくれるならこんなに良いことはないだろう、俺だっていつまでも星屑無能者は嫌だし即刻抜け出したい、彼は実力は確かだし何かつかめるかもしれない。
しかし残念な事に彼らが行う事は課外訓練というよりは加害訓練だろう、それも相手が抵抗できないことをわかっている加害訓練だ
それとも強者は弱者に喰われるという食物連鎖を教えるということだろうか?どっちにして御免被る、黙って彼らのおもちゃになるほど俺は暇ではない。
「いや、俺なんかに空海の時間を無駄にしてほしくないし…遠慮しとくよ」
やんわり断ろうとする、獲物の必死の抵抗、それを許す狩人は相当間抜けだろう
「ハァッ?!俺が教えてやるって言ってんのに断るとかできると思ってんの!?」
激昂した彼は自身の異能、念動力で俺の首元を締め上げる。
「わっ?!」
「ほら、レッスンワン、頑張って抜け出してみろ!」
ゲラゲラ面白そうに笑いながら言ってくる空海、さっき刻夜の足を固定したように、不可視の手で首を締め上げつつ彼の足が届かない高さに宙ぶらりんにされる。
空中に浮かされた無能力者になす術があるはずもなく、手足をジタバタ動かすだけの人形に成り下がる刻夜。
「た、たす、タ…す…ケ……テ」
刻夜は微かなだが確実に助けを求める声を出したが、周囲の人間は沈黙しており、刻夜と違い宙吊りにされているわけでもないので声を発することもできるはずだ。
だが周囲の人間は黙ったまま呼吸音が漏らすのが精一杯の刻夜の方が五月蠅いくらいだ、教官ですら止めようとせずむしろ道化師を笑う観客のような笑みを浮かべている。
………まぁこんなことは日常茶飯事なのだ、何せここは地球じゃないのでどんな事をしても罪に問われない。
異能特区だったら衛星が四六時中監視してるが、当然そんなものこちらには無い
「ほらほら、早くなんとかしないと息吸えないぞ〜?」
ネズミをいたぶる猫のように刻夜を弄ぶ空海
「クッ…カハッ…」
(も、もうやばい)
脳に酸素が足りなくなり、意識を闇に落としかける。
「ねぇ教官、別にこいつ殺してもいいでしょ?」
「いいわけあるか、まぁ……不慮の事故なら仕方ないがな
「アハハハ!!そうこなくちゃ、じゃあなカス」
「えっーーー?」
俺は崖から突き落とされる。
よかったら感想よろしくです!!