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かわいい妹と神殿騎士の魔法

 白狼に送ってもらって、たそがれの魔女の館からマゴット家のお屋敷に戻った。

 魔力を操作することで身体能力を高めていたから、走ればそれほど時間はかからず、日が落ちる前には到着することが出来た。


「カナエお姉様! おかえりなさい!」


 扉を開けて屋敷に入ったところで、妹のリンドウが出迎えてくれた。

 ぱたぱたと小走りで寄ってきたリンドウの肩にイナリが飛び移る。 


「わっと。イナリちゃんもおかえりなさい」

「クルッ」

「ただいま。リンドウ」


 あいかわらずわたしの妹はかわいい。

 目を合わせてにっこり微笑んでから、一緒に階段を上る。

 イナリはリンドウの首元に鼻先を擦りつけてクンクンと匂いを嗅いでいる。


「リンドウは今日は何をしていたの?」

「そうですね。午後は庭園をお散歩しました。日向ぼっこをしていたら、ヨイヤミちゃんが遊びに来てくれたんですよ」

「あいつ勝手に犬舎から居なくなったくせに、屋敷に出入りしてるの?」


 ヨイヤミというのはリンドウが旅から連れ帰った黒犬で、その正体はバウルという魔物だ。

 害意はないみたいだけど、神様のメダルのことを知られるのも困るし、あまり接触したくはなかった。


「うちの犬にならなかったんだから、あんまり構わない方がいいよ」

「でも、ヨイヤミちゃんは良い子ですよ。今日も一緒に遊んでくれました」


 わたしはバウルがリンドウと仲良く遊ぶ図を思い浮かべてみた。

 無愛想な黒犬の魔物が子供と一緒にはしゃぐ姿。

 ちょっとありそうにないイメージだ。


「あいつが遊んでくれたの? 投げた棒を拾ってきたりとか?」

「えっと、一緒にかけっこしました」


 まあ、それくらいだったらありそうだ。

 リンドウは運動が苦手で足も遅いから、バウルは早歩きくらいで充分だったろう。


「そういえば、リンドウは神殿騎士から魔法を教わってたんだっけ。あの勉強って今もやってるの?」


 前の旅の途中、リンドウは才能を見いだされたとかで、強引に神殿騎士から魔法を習わされていたのだ。


「魔法の練習はあんまりやってないです」

「そうなの?」

「このまま魔法が上手くなっちゃうと、むりやり神殿に入らされちゃいそうで……」


 たしかにその可能性はあるか。


「そういえばさ」


 リンドウの部屋の前までたどり着いて、別れ際にちょっと思いついたので訊いてみた。


「神殿騎士の魔法ってどんな練習するの?」


 わたしの質問にリンドウはちょっと首を捻る


「何度も練習させられたのはお祈りの言葉ですね。それを繰り返しながら頭の中でもイメージします」

「お祈りの言葉を?」

「そうです。それと絵ですね」

「絵?」


 なんとなくただお祈りするだけなのかと思ってたけど、違うみたいだ。


「絵って神殿の壁に描かれてるようなやつ?」

「うーん、そうじゃなくて、神殿騎士に伝わる絵っていうのがあるらしいんです。羊皮紙に描かれていて、神話を元にした図らしいんですけど、線が入り乱れてごちゃごちゃしてて、きれいっていうよりちょっと不気味というか」

「なるほど。そんなのがあるのか」


 わたしはリンドウの部屋の扉を開けてあげる。


「クルッ」


 リンドウの肩を蹴って、イナリがこちらに飛びついてきた。

 わたしは軽くイナリの頭を撫でる。

 それから、別れ際にリンドウの頭も軽く撫でてあげた。



 自分の部屋に戻ってベッドに倒れ込み、わたしは考える。

 祈りの言葉と神話の図像か。

 同じような組み合わせは、たそがれの魔女に教わっている魔法にもあった。

 呪文と魔方陣だ。

 もしかしたらこれは、同じものの違う表現なのかもしれない。

 魔法使いも神殿騎士も、使っている魔法の根っこが繋がっている可能性はある。

 どっちも人間が使う魔法として、一括りにまとめられそうだ。

 そう考えると、精霊の魔法は異質に思える。

 個人的には精霊の魔法の方が自然で、人間の魔法の方が不自然って感じがするんだけどね。

 どうしてこんなことになっているのか、もっと勉強したらそれがわかるんだろうか。

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