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なりきり名探偵の推理ゲーム

 バウルを一階の応接室に残して、わたしたちはコナユキの部屋に戻ってきた。

 椅子を二つ並べてコナユキと二人で座る。

 子狐たちの相手をしたせいか、コナユキもちょっとは落ち着いたみたいだった。


「それで話って何?」

「オーブがなくなってからことをちょっと確認したいんだけど、カザリさんがここにやってきたのっていつ頃かな」


 わたしの言葉にコナユキがちょっと考えるように天井の方を向いた。


「たしか、オーブが無くなってから二週間くらいあとかな。噂を聞き付けて確認しに来たって言ってたよ」

「なるほど。じゃあね、オーブがなくなったって気づいた時には誰がいたの?」

「儀式の準備をしてた時だから、わたしとフブキ叔父さんの二人だね」

「その前までに出入りしてた人は?」

「母様の葬儀の時には沢山人が来たけど。でもそうだね、二階には誰も上がってないと思うよ」

「なるほど……」


 コナユキの話を聞いてわたしは考える。

 いままで神様のメダルの力についてばかり気にしていたけど、考えてみればこれは前の世界でいうところのミステリの消失トリックだ。

 この世界の住人には馴染みがないかもしれないけど、ミステリについては、わたしにも多少の知識はある。

 別にマニアとかじゃないけど、まったく馴染みがないって程でもない。

 それを元にして考えれば、この謎にも光明が差してくるかもしれない。


「カナエちゃんには、何か考えてる事とかあるの?」

「色々考えたけど、もう曖昧な部分は切り捨てて、考える要素を動かせない条件に絞ろうと思うんだ」

「動かせない条件?」

「たとえば、あの厨子からオーブを取り出すと、それが里長に伝わるんだよね?」

「そうだね」

「あと、この屋敷の結界の外にオーブを持ち出せるのは、コナユキとフブキさんだけだって聞いた」

「うん」


 わたしの話にコナユキがいちいちこっくりと頷く。


「この条件はどんなことがあっても動かせないから、この確かな条件から始めようかなって」

「ふわぁ、そんな風に考えたことってなかったかも」


 コナユキは驚いたように目を見開く。


「まず、厨子から出したら里長に伝わるってことは、オーブが盗まれたのは里長がお亡くなりになってからって事になるね」

「その前だったら気づかれたもんね。だから盗まれたのは、そこから継承の儀式までの間だよね」


「そして、オーブを屋敷の外に持ち出せるのはコナユキとフブキさんだけ」

「もしかしてフブキ叔父さんを疑ってるの?」


 コナユキがこちらにぐっと顔を寄せた。


「疑ってないよ。色々話を聞いて、フブキさんは本当にコナユキのことを親身に考えてるってわかったし」


 こう言ってはみたけど、実はフブキさんが犯人って可能性も考えてはいた。

 可能か不可能かでいえば、一番可能なのはフブキさんだったからだ。

 でも、それが正解ってことになると、フブキさんがオーブを盗み出して、再び一度厨子に戻し、またどこかに持ち去ったってことになる。

 普通に考えて、わざわざそんなことする必要はないよね。

 やろうと思えば屋敷の他の場所にも隠せるだろうし、そっちの方が自然だ。

 だから、神様のメダルにわたしがお願いした内容と照らし合わせると、フブキさんが犯人って事はなさそうに思える。


「でも、ここからオーブを持ち出すにはコナユキかフブキさんが持って出ないといけない。例えば、コナユキの服のポケットの中にオーブを隠しておいて、外に出てからオーブをポケットからすり取っていくとか」

「ああ、なるほど。それだったら外に出せるね」


 納得の表情でコナユキが両手をぺちんと合わせる。


「このパターンで、最初に犯人かもって考えたのはカザリさんなんだ」

「えっと、だからさっきカザリさんのことを訊いたの?」

「そうだよ。もしオーブがなくなる前にカザリさんがこの屋敷に来てたんだったら、コナユキが屋敷を抜け出したときに一緒にオーブを持ち出せたかもって。でも、カザリさんが来たのはオーブが消えてから二週間くらい後なんだね」


 それに神様のメダルの願いが叶ったとするなら、マゴット領の森にいるカザリさんが、この里の屋敷に置かれている厨子の中へオーブを戻さないといけない。

 さすがにこれは無理だろう。


「それじゃあ、誰にも出来ないってことじゃない?」

「まったくもってその通り。これは誰にもできない」


 わたしの敗北宣言みたいな言葉に、コナユキはがっかりした顔をする。


「だったら、最初から考え直さないと」

「そうでもないよ」


 わたしはコナユキの頭を軽く撫でる。


「もしかしたらオーブはこの屋敷から持ち出されていないのかもしれない」

「オーブはまだここにあるってこと?」


 頭を手で押さえられて、コナユキがちょっと上目遣いになる。


「そう考えると、めんどくさい条件がなくなるんだよね」

「だとすると、どういうことになるんだろ」

「たとえば葬儀の時に、誰かが二階に上がってオーブを厨子から盗み出して、屋敷のどこかに隠しておいたのかもしれない」

「でも、なんのためにそんなことするんだろう」

「そうだね。普通に考えれば盗むためだから、これから何らかの方法で運びだすつもりなのかも」

「随分と気が長い話だね」

「そうだね。オーブが消えてからもう随分立ってるし。でも、もしかしたら、コナユキがこの屋敷を飛び出したから犯人の計画が狂ったりしたのかもしれない」

「そっか。わたしみんなに言わずに出てきちゃったから……」


 とはいえ、この仮説には問題があるんだよね。

 神様のメダルの願いによって、一時的に厨子の中にオーブは戻ったはずなんだから。

 その為には、後から再び屋敷に入らないと行けない。

 わざわざ屋敷に入って、オーブを厨子に入れて、それからわたしたちが来る前に厨子から持ち去る。

 そういう出来事が起こらなくちゃいけない。

 これは実行がかなり難しいし、そもそもこんな面倒なことをする理由はないだろう。


 だから、この線はなしだ。

 そうなると、行き詰まったように思える。

 でも、わたしはこれもまた重要なヒントなんだって思う。

 そして、モヤモヤしていた霧がすっきりと晴れるように、わたしは答えにたどり着いた。


「コナユキ、これから里長の部屋にこの屋敷にいる人みんなを集めてもらえるかな」

これがいにしえの本格ミステリだったら、ここで読者への挑戦が入るところですね。

本格ミステリじゃないのでもちろんそんなことはしないのです。

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