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第11話:邂逅編 エピローグ

――ぐすっ


誰かが泣いている。


――獅子次郎. . . なんでいなくなってしもうたのだ。


じいちゃんの名前?


声が遠くなるのと同時に、

刺すような明かりがメグルを起こそうと煌めく

「眩しい. . . 」


開きかけていた目がゆっくりと開かれる


「どこだ、ここ. . . 」


映った景色は真っ白い天井、

窓から入ってくる風がメグルを優しくなで付ける。

首を回すと、ベッドで寝ているのがわかった。


「なんで、僕」


といったところで、星見事務所での蛇、あの謎の空間、倒れる優子と

フラッシュバックのように思い出す。


「そうだ、優子、優子はどうなったんだ」

気だるい体に鞭を打ち、ベッドから降りようとするも、

倒れこみながら床を這いずるように進むことしかできなかった。



ーー体の自由がきかず、ひどく重い。僕の体、どうなっちゃたんだろう


と思いながらも、やっとのことで、ドアの前までたどり着く

どうやって開けようかと思案していると、扉が開かれた。


「あら、おはよう、メグル君」

そこには、食べ物が載せてあるお盆を持った櫻子がいた。

その表情はメグルの意識が回復したことを喜んでいるのか晴れやかだ。


そんな櫻子とは正反対のメグル。

「櫻子さん. . . ゆ、優子は. . . 優子は. . .は無事なんですか?」

と櫻子の足にしがみつき、

無事を願い、懇願するような表情を浮かべるメグルに櫻子は

「落ち着きなさい」と優しくさとす。


メグルに肩を貸し、ベットまで戻す。

近くに椅子を持ってきて、櫻子はそこに腰掛け話始めた。


「まず、優子ちゃんに関しては一応無事よ」

「一応. . ですか」


「ええ、あなたもわかっていると思うけど、

 優子ちゃんが受けたダメージは大きいわ。

 怪我の重症度で言えば一分一秒を争うぐらいにはね」


メグルの脳裏にあの時の光景がよぎる。

唇を噛み締め、己の無力を後悔するメグル。


「. . . 今、優子はどういう状態なんですか」

最悪の事態を想定しながら、メグルは自分の顔色が真っ青になりながら、聞いてみる。

「今は安心して良いわ。暫定な治療は施してあるから、いますぐ、どうこうなるわけではないわ。ただ、それもあくまで一時的なその場しのぎにしかならないわ」


櫻子の話を聞きにながら、

メグルはすでにその先について考え始めていた。


「どうすれば、優子を助けられますか」


「現代における医学で彼女を助け出せる可能性は低い、それでも刻聖の力を借りることができれば、なんとかなるかもしれないわ」


「刻聖. . .ですか?」


「ええ、あなたも見たはずよ、自分の潜在意識の中でその場所にいる存在を」


その言葉に

メグルの頭によぎったのはあの王座と人影。


「その存在が優子を助けてくれるんですか?」


「厳密には助けるように仕向けるね。」


櫻子曰く、近々聖刻府というところより使者が来るらしい。

そして、自分の中に存在している刻聖の話しがしたいとのことだった。


櫻子はその場で、優子の治療をお願いしてみるつもりらしい。

優子のタイムリミットに関しても、まだ猶予があるということで

なんとか話しをそこで出せないかということだった。



「まだ、なんとか道はあるということですね、

 櫻子さん、ありがとうございます。」

 最後の望みをかけて、メグルは優子を助けることを決意する。

 

「いいのよ、元はといえば、

 私があなたたちを巻き込んでしまったようなものだし」


そういう櫻子の表情は少し陰りが見える。

彼女なりにも、メグルと優子をこのようなことに巻き込んでしまった負い目があるのだ。


一般人には絶対に入れないようにした部屋。

そして、偶然にも目覚めていたウロボロスハート。何の因果か、その全てが破綻し合致してしまった。


「メグル君、さっきの話でもでたけど、刻聖と呼ばれる存在について、君はもう無関係ではいられない。君自身がその存在と契約を交わしているから」

真剣な櫻子がメグルを見つめ返す。


仮契約とはいえ、あのウロボロスハートの契約者になってしまったメグルは

今までの日常に戻ることができない、メグル自身、その重大さに気づいてはいないだろうが、そんなことは関係ないとでもいうように、これからたくさんの波がメグルを飲み込もうとするだろうと櫻子は感じている。


「君にはまず、絶対的な知識量が足りないわ。刻聖のこと、聖刻府のこと、今じゃなくていいけど君には自分の状況を知ってもらう必要があります。」


「はい. . . 」


 「まあその前に、あなたにとってはなんで私がそういう情報だったり特異な力を持っているかの方が気になるかもね」


「あの櫻子さんも、その得意な存在と繋がりがある方なんですか?」


「そうね、厳密に言えば【あった】といった方がいいかもね。私自身は君がこれから会うことになる聖刻府の元一員なの。聖刻府というのはね、私たちが住んでいる世界ともう一つの世界の原理原則を管理している組織ことよ」


「もう一つの世界ですか. . . 」


「そうよ、あなたが今知覚し住んでいる世界とは別の世界がこの世に存在しているの そこはある種、この世界と表裏一体の世界。私たちは刻理界と呼んでいるわね

 そしてあなたが遭遇したのはその刻理界の住人よ。」


ようは刻聖という存在ねと櫻子が付け加える。


「そんな世界が. . .まるでおとぎ話のような感じですね. . . 」

「でも、まぎれもない現実よ、あなたもその片鱗を体験したでしょ」


「それに、必ずしも私たちの世界と関係ないということでもないの」

と、櫻子は立ち上がるとその部屋になぜかおいてあった黒板に二つの円を描き始めた。


「表裏一体と言った通り、片方で起こった現象はもう片方の世界にも反映されるの」

「例えば、彼らの世界が崩壊の道を辿ったとき、私たちの世界はどうなると思う?」


「今までの、流れからいくと、崩壊. . .ですか」

二つの円が櫻子によって消される。

「その通りよ」

「それを引き起こそうとする存在がいるということですか?」

メグルの質問に、櫻子は言葉を濁しながら言う。


「そうね. . .そういう存在はいるわ。

 敵に対抗するためには力が必要よ、それはもちろん聖刻府も同様ね、

 ウロボロスハートもあなたを依り代として力を求めたんだと思うわ」


「. . .ウロボロスハート、それが僕に取り憑いてる刻聖ということですか」


「そうよ、ウロボロスハートは、刻聖界の中でも力の序列は最上位に位置する存在。

 聖刻府の人間の中には神格視している奴もいるわ。」

  

最後は顔をしかめながら、

にがにがしい表情で答えた。

このままいけば、間違いなく旗頭にされるわねと櫻子が言う


「ということは僕は、戦うこと戦いに駆り出されるということでしょうか」

どうせだったら、戦わずに過ごせるならそうしたい。メグルにとって自分以外の命を背負うこと、ましてや行き死にの話など、現実味が湧いてこなかった。


ウロボロスハートは、 聖刻府にしてみれば強さの象徴だ。

敵との戦いに際して、使わない手はない。

今のままだと、メグルの意思関係なく、巻き込まれることは必然。

仮に契約を解除ということになったとしても、ウロボロスハートが素直に従うかも分からない。

櫻子の沈黙はある程度の予想をメグルにさせるのであった。


「それに関しては私も善処してみる。

 最悪、あなたからウロボロスハートを引っこ抜いてやるわよ」


と少し物騒なことを言い出した櫻子に、メグルは頼もしさを感じつつも

まだ自分が置かれた状況を受け入れられない気持ちでいた。


「なんだか、櫻子さんならなんでもやってのけそうですね」


彼女の言葉に示し合わすように、ははと笑って見せた表情には

無理くり作ったと丸分かりの笑顔がはりついていた。

櫻子はあえて、それに足して何も言わなかった。


メグルが櫻子に軽口を叩いた直後、


−−あれ 


とメグルの視界がぼやける、と同時にどうしようもないほどの眠気が体を包み込む。

上半身だけ起こしていた体制が維持できず、後ろに倒れてしまう。


ボフッとベットがメグルの体を受け止める。

まぶたが鉛のように重い、閉じようとするまぶたに抗えない。


――少し話すぎちゃったかしらね

そう言って、櫻子が近づいてきて、メグルの頭を撫でてくる。


「今、眠りなさい、あなたの体もまだ本調子ではないのだから」


薄れゆく意識の中で、またメグルは


――ぃ


――ぁ


かすかに声が聞こえた気がした。

誰かを呼んでいるような、叫んでいるような。


でもそれは、ふっと静まって

彼に一時の平穏を訪れさせた。

誰かに頭を撫でられ安心感とともに、メグルは意識を失った。


最後までお読みいただきありがとうございます。

次回から第2章に入っていければと思います。

またストック分がなくなってきましたので、また書き溜めを開始しております。


それに伴い更新頻度が下がるかと思いますが、何卒よろしくお願いいたします。


昼猫より


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