500文字でなんかそれっぽいクライマックス
目の前には人だったモノが転がっている。既に生の温かみはなく、ただただ虚無感を残すのみである。
俺は自分がどうしてここにいるのか、わからない。こんな世界は望んでいなかった。何で俺を招いたんだんだ……。人と人とが争う世界に勇者など必要なかっただろう。
俺を招いた彼女のことを思い出す。
この世界にいきなり召喚された俺は、彼女を見たとき思わず、『お姫、さま?』と呆けたように呟いた。
それを律儀に、『現状、私の立場は確かに姫に当たるのでしょうが、その実ただの貴族令嬢に過ぎませんわ』などと苦笑を浮かべながら答えてくれた彼女は当の前に、敵の手にかかるくらいなら、と自ら命を絶った。
もう彼女はいない。
神は俺に戦う力を与えたけれど、俺は守る力が欲しかった。そうじゃなくても、力を十全に扱えるだけの心の強さが欲しかった。……そもそも招かれたのが俺でなければっ。
俺の今の精神はまともじゃない。
ここにもう用はない。復讐は果たした。俺は自由だ。残った勢力に漁夫の利を与えよう。
さて、全ての元凶たる王城に行こうか。今は誰も近寄りはしない呪われた建物。国を乱した魔女の悪霊とやらに会いに……