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華の色  作者: 伊藤巴
8/8

犬とか猫とか



たまにふらっと現れるマキノ先輩は野良猫のような存在だと思うことにした。仕事中は現れないので空気の読める野良猫である。

大体1限目の終わりの休憩時間にふらっとやってきてタバコを吸って去っていく。

そのタイミングでなぜか私も最近教室に向かってしまう。

連れションと同じ心理が働いているのかもしれない。連れションとか大嫌いだし、トイレくらい1人で行って1人で帰ってこいと思うが。

そんなようなことを話したら「女の子が連れションとか言うのやめて」とげんなりした顔で言われた。

げんなりしてても甘ったるいホスト顔だったが。


「村上さん、これでいい?」


1限目のHRが終わったあとに重役出勤で教室に入ったら学級委員の女の子に話しかけられた。夏休み明けの体育祭の種目を決めていたらしい。

大縄跳びといういたって無難な種目に割り振られていた。


「あ、うん。ありがとー」


「はいはーい」


学級委員の松宮さんはできた人である。笑顔で返事をして教壇に立つ。


「体育祭の種目、もう提出行くから変更効かないからねー」


誰も返事をしないがそれを返事と捉えて教室を出て行った。


「あ、マキノ先輩だー」


教室の後方窓際でギャルが騒いでいる。


「あ、ほんとだー。カッコいいよねー」


「カッコいいー」


「あれでしょ、松宮と付き合ってんでしょ」


「ほんと何で松宮なんだか」


「地味だよねー」


非常に耳障りである。松宮さんは確かに地味だがお前らよりは断然可愛い顔をしている。そしてできた人なんだ。なるほど、マキノ先輩のカノジョさんとは松宮さんだったのかという納得と同時に苛立ちが募る。


「あんなぶりっ子なだけの女の何がいいんだろうね」


「ほら、男ってぶりっ子好きだししゃあないじゃん」




「少なくともお前らみたいな性格ブスよりずっといいわ!!!」



教室が静まり返った。


「あ、やっちゃったなあ。ついついやっちゃった。

声に出すつもりはなかったんだけどなあ。

続き、どうぞ?」


ギャルとはいえ、進学校なのでたいした根性はない。高校デビューもいいところなので私をにらみつけて教室から出て行く。反撃しないお育ちの良さである。

静まり返った教室で注目を浴び続けるのも居心地が悪いので私も教室から出て行く。2限目の現代国語は受けたかったので残念である。

できれば3限目の体育もサボりたいがそろそろ担当教諭がうるさい。さすが体育の先生になろうとか思っちゃうタイプで熱血である。

はー、めんどくさいなあと廊下に出たらそこには松宮さんがいた。


「ありがとう!!村上さんってやっぱりかっこよくていい人」


お目々をキラキラさせて尻尾を振っているのが見える。

さっきの応酬が聞こえていたのは分かるが、余りにも素直な子である。そんな松宮さんに毒気を抜かれてついでに手を引かれて私は教室にUターンした。

現代国語、受けたかったからよかったのだけれども。

こうして、私には新たに犬属性の友達ができることとなった。


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