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華の色  作者: 伊藤巴
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猶予期間



今朝、ニュースで梅雨入りが宣言されていた。

外では雨が降っている。

鬱陶しい。何もかもが鬱陶しい。

大人になったらプライベートで何があろうと笑顔で働かなければいけない場面は、ある。

高校生の私にはまだそんなものは求められていない。好き勝手が許される最後の猶予期間。だから存分に好き勝手したい。


「子どもだねえ」


「子どもですけど、何か悪いんですか?」


その言葉にマキノ先輩は楽しそうに笑った。


「高校生でもちゃんと大人やってる人からしたら腹立ってしょうがないだろうね。まあでもお前のいいとこは子どもやってるって自覚があるところかな」


自覚なしで好き勝手してるやつよりはマシってことか。


「それから優しいしね」


ぷはーっと気持ち良さそうに紫煙を吐き出しながらマキノ先輩は続ける。


「優しさっていうのは想像力だから。相手の気持ちを想像できること。もちろん痛みは本人にしか分からないよ。でも想像しようとすること、そして想像したことから相手のために何が出来るかという思考力、そこから繋がる行動力。どれか一つが欠けてもダメだ。でもお前はちゃんと全部持ってるよ」


「そんな素敵な生き物じゃないですよ私」


「そう?でも俺にはそう見える」


何となく、気恥ずかしくて話を逸らす。


「そういやマキノ先輩のカノジョって私の学年にいるらしいですけど、誰なんですか?」


「内緒」


「顔可愛いんですよね」


学年で顔の可愛い有名どころを脳内で探す。


「多分、お前の知ってる人。だからやだ。教えない」


「別にいいじゃないですか。っつーかカノジョさんにこの部屋出入りしてることで誤解されません?」


「問題ないと思うよ-。噂にはめちゃくちゃ疎い子だから」


ニコニコして話すその甘ったるい笑顔に胸の奥が少し痛んだ。気のせいだと思いたい。


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