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愛する君へ  作者: みゆぅ
3/3

記憶〜終わりと始まり〜

――コンコン

【ガラッ】


「恵子…

気分は、どう?」


その言葉に恵子は

つい笑ってしまった。

病室を出てから1時間くらいしかたっていないのに…。

「何?」

笑っている恵子を見て、少し複雑な顔でたずねる。

私は、微笑んだ。

「そ…いえ…ば、あ…なた…、わた…し…の

こ…と…し…ってるん…で…しょ?」

彼が表情を曇らせたように感じたのは

どうして?

「ん…知ってる…」


どうして…

彼は、寂しそうなんだろう…

「ゆ…めを…み…たの」

別に…

彼に、話す必要なんて

ないのだけれど…

寂しそうにしている彼を見た瞬間、

話してみようと思ったから。

「いま?」

さっきまでの表情は、もう無くなっていた。


(良かった…)


私は、安心する。

理由なんてわからないけど、

笑っていてほしいから。

私は話を続ける。

「ううん。

ねむっ…て…た…あいだ」

彼は、イスに座り

続きを促す。

私は、頷き話し始めた。


「闇…の中…に居た…の。

何故だ…か…

すごく、落…ち着い…た。

変…だけ…ど」

私は、コップに水を注ぎ

一口飲んだ。

喉が、すーっと潤う。

そして。

また話し始めた。

「誰かが…泣い…てたの。

だから…言ったの…。

"泣か…ない…で

ずっ…と、そばに…いる…から"って…。

けど…

起きた…ら…

泣いて…いたの…は、私…で。あれは、誰の

…言…葉だった…のか…な?」


──"泣かないで。

ずっと、そばに居るから"

この言葉で、長い眠りから覚めた恵子。

こいつは、ずっと泣いていたんだ。

"闇"が落ち着くと言っていた。

そのくらい、苦しかったんだ。

自分が泣いていることも

わからないくらい…


奈緒、お前なんだろ?

お前が…


お前が、

そう望むのなら──



「気にすることはない。

ただの夢だよ」

彼は、優しく笑う。

何故?

彼の笑顔に心が温かくなる気がした。

そっか…。

夢…なんだ。

当たり前じゃない。

わかってたこと。

クスクス笑う私を

彼が見つめて微笑む。

「恵子」

突然、名前を呼ばれて胸が高鳴る。

「な…に…?」

「今、幸せ?」

真面目に話す彼が

おかしくて、顔が綻ぶ。

「う…ん!

しあ…わ…せ…!」


それを聞いた彼が大笑いした。

目に涙をためて…。

なによ…

涙が出るほど笑わなくても良いじゃない。

ちょっといじけてみせる。

それを見た彼は、涙を拭きながら謝ってきた。

仕方ないので機嫌を直すことにした。


「それよ…り、あな…たの名…前、教えて?」

「オレ?賢司!」

彼はニッコリ笑う。

「賢司…君…ね」


──名前を呼ばれて…

一瞬ズキンとした。

だけど、彼女は

もぅいない。

きっと、この先

彼女が

"賢司"

を思い出すことはないだろう…

これで良かったんだろ?

奈緒…──


オレと恵子は

また ここから始めよう。

振出に戻ってしまったけれど、

オレたちなら大丈夫だから。

もう…

一人で泣かせたりしないから。



『ママ、泣かないで。

ずっと

そばにいるから。

私のこと忘れていいよ?

ママには、いつも笑っていてほしいから…』



数年後━━


「賢司君、…気になっていたんだけど…私と初めて会った日って…いつ?」


彼女の質問にオレは笑って答えた。


「何、ボケてるんだよ。

病院だよ。

恵子が目を覚ました

あの日が初対面♪」


「ウソ。

もう!賢司君のイジワル」


彼女は、いじけて足早に歩き出す。

その背中を追いかけながら、オレは思う。


ウソじゃない。

君と彼女は別人。

君は、よく泣く。

君は、よくいじける。

君は、そっと笑う。

彼女は、ずっと笑っていた。

彼女は、いつも凛としていて泣かなかった。

彼女は、いつも前だけを見ていた。

彼女は、…強かった。


彼女は、…オレを…

"賢司"と

呼んでいた。


――今、君は

奈緒と天国で

遊んでいるんだろ?


そう思うことにする。


だから…

絶対に忘れないよ。


君と過ごした

大切な日々を━━

最期まで、お付き合い頂き有難う御座いました(o^∀^o)

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