愛犬 柚子
将哉くんの様子が少しおかしかった。
でも気のせいだと思ってそのまま1日を終えた。
次の日私は体調が悪くずっとベッドで寝っ転がっていた。眠ろうと思っても気持ち悪くなってしまい眠れなかったから。
「将哉くんに今日仕事休ませちゃったな……」
今日は本当は仕事だったのに私のせいで休んだ。
《ピーンポーン》
インターフォンが鳴った。きっと良子さんだ。
「はーい。」
将哉くんがすかさず出た。
「……」
無言だ。この時間に来るって言ったら良子さんくらいしかいないはずなのに……。
「じゃあ……また今度ね。将哉さん」
そう言ってドアが閉まった。
「……絵里、工藤さんがお昼おすそ分けしてくれた。食べれるか?」
「少しでも食べないと……栄養が……」
凄くいい匂いがした。
「じゃあ座ってて」
将哉くんがテキパキとお皿や箸を出してくれた。
「そうだ……柚子にもご飯……」
「あ、そうだよ。最近柚子見ないんだけどどうした?」
「え?!」
「え?って最近見ないから…」
「最後に見たのは…この間良子さんが遊びに来た日よ」
「うーん、じゃあこの料理食べて鍋を返す時に聞いてみようか」
「そうだね。そうしましょ」
色とりどりの野菜が入っていた。
「お、骨付き肉か。絵里食べれる?」
「うん、大丈夫」
私たちは食べ始めてから疑問を持った。
「ねぇ将哉くんこのお肉なんだと思う?」
「鳥でも豚でも牛でもなさそうだな……」
「何か食べたことない味ね…… 」
「そうだな……って……これ……!!!」
将哉くんは骨を見てびっくりしていた。
「将哉くん?」
見せられたのは骨に金具が付いていた。
「柚子さ、骨にヒビが入ってこの形の金具付けたよな……?」
「……う、うん……」
「これってもしかして……柚子……?」
私は慌てて隣の部屋に行った。
「良子さん!!良子さん!!いますか!?」
ドアを叩いてもインターフォンを鳴らしても誰も出てこなかった。
「電話……してみれば?」
「将哉くん……うん……」
将哉くんに言われ良子さんに電話をした。
『もしもし?』
「良子さん?あの料理は……!」
『あら、もう食べてくださったの?嬉しいわ』
「あれの肉って……柚子の肉ですか……」
『どう?愛犬のお味は』
「どうって……どうしてこんなこと……!!」
『だって絵里さん言ってたじゃない。
"可愛くて食べちゃいたい"って』
「あ……」
『犬をさばくのは初めてだったから大変だったのよ?』
「……」
『そう落ち込まないで?まだ家に沢山残っているから。あとでまたお届けするわね?』
「い……らないです……」
『愛犬スープいらないの?残念ね』
そう言って良子さんは電話を切った。
「あああああああああああ……………!!!!」
私は声にならない叫びをした。
私は愛犬を食べてしまったのか。
「柚子……………!!!! 」
まだ少し残っていたスープはもう誰も食べなかった。
****
今日もまた絵里が産婦人科に行っていた。
《ピーンポーン》
まただ。どうせお隣の工藤さんだろう。
「……」
柚子を食べてしまったせいで絵里もお隣さんと関わるのを控えていた。
「将哉さんいらっしゃるんでしょう?開けてください」
俺は鳥肌が立った。どうして俺がいると分かったんだろう。
「ねぇ将哉さん?」
俺は怖くなり玄関を開けた。
「こんにちは将哉さん。絵里さんはいつぐらいにお帰りになるの?」
「知りません。終わったら連絡するって言ってましたけど。」
「そう。なら大丈夫ね?」
「何がですか?」
「あの時の続きよ」
「あの時の?」
思い出してさらに鳥肌が立った。
「まだその話するんですか!!もうやめてください!!」
「いいじゃない。わたしと貴方の仲でしょう?」
「ちがっ……! 」
気がついたら工藤さんは俺の下半身に触れていた。
「何してるんですか!」
「旦那を満足させれない妻なんて妻失格よ」
「絵里を悪くいうな!」
「じゃあ……大人しくしててちょうだい……」
工藤さんは俺のズボンをぬがし始めた。