藤井さん家のお隣さん
「わたしの事も見てよ……………」
そう言ってベランダから身を乗り出した
「加瀬さんやめて!!」
「将ちゃんに好かれないわたし何てもう要らないわ。 」
「待てよ加瀬!」
「……なに?」
「確かに加瀬の事は好きになれない。でもここで死ぬのは!」
「……将ちゃんに抱かれて幸せだった。」
加瀬さんは飛び降りようとした。
「やめろって加瀬っ」
加瀬さんの体はもう既に外に落ちている。
将哉くんが手を握って引き止めている。
「やめてよ将ちゃんこんなこと」
「だって……加瀬……」
「わたしもう幸せよ。満足したわ。」
「加瀬さんやめて」
私も手を伸ばした。
「絵里さん……………」
2人で加瀬さんを引き上げようとした時だった。
「わたしはもう誰の邪魔もしないわ。」
私たちの手を振りほどき、落ちて行った。
7階のベランダから。
「後を追うのは……わたしね柚子ちゃん」
****
加瀬さんが亡くなってからしばらくが経った。
先週から新しい人がその部屋を使っているらしい。会ったことないから分かんないけど。
「絵里俺仕事行ってくる!」
「うん!いってらっしゃい!」
将哉くんはショックを受けていたけど最近吹っ切れたみたい。
正直、柚子の肉だって分からなければ料理は美味しかったし、お茶とかも楽しかった。
「加瀬さん……」
高校の頃の悪い印象はどこにもなかった。
きっとあそこまで変わるのに苦労したんだろうな。
「私もゴミ捨て行かなきゃ!」
部屋を出て、近くのゴミ捨て場に来た。
「おはようございます。」
1人の若い女の人がいた。
「おはようございます。あ、隣に引っ越してきた山田と言います。よろしくお願いします。」
「はじめまして!私藤井といいます。これからよろしくお願いしますね!」
「はい。藤井さん妊娠してるんですね。何ヶ月ですか?」
「もう8ヶ月です。」
「そうなんですか。」
「じゃあ私戻りますね!また!」
「……えぇ。」
「……将哉の、奥さん……」




