表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
有益戦争と調律者  作者: らくしむす
3/5

カンナの説明

ガチャ…


小気味好く鳴るドアノブ。


そぉ〜っと扉を開けると、そこは乱雑に置かれた本で埋め尽くされた汚い部屋だった。

とりあえず壁一面に本棚は有るものの、完全にキャパシティオーバーであり、床に積まれた本の方がはるかに多い。

左手にはテーブルが置かれているが、そこも本の山。

目当ての「カンナさん」とやらは、扉の対面。

そこだけはよく利用するのか、唯一しっかりと床が見えているベッド周り。

そのベッドの上に足を組んで座っていた。


「貴女がサラウンダーモドキね?」


セミロングの茶髪で、毛先は痛んでボサボサ。髪は染めてから日にちが経っているらしく、根元は黒くなっている。

そして、スズネが着けていたヘッドホンと同じような型のヘッドホンをかけている。

大きめの丸メガネをかけ、白衣を纏った、かなりスタイルの良い女性が、メガネを外して話しかけてきた。


「私がカンナ。カンナ・ミカヅキよ、よろしく。」


「結城 夕凪です」


「それは、和名?貴女、どこかしらのハーフかクォーターでしょ?」


「?!」


一目でバレた。


確かに私はハーフである。

母親がどっか北欧の人で、父が日本人だったと思う。

しかし、日本人の血が濃いようで、見た目は少し目鼻立ちがクッキリしてる程度で、たいして周りの友達と変わらない。

髪も少し明るめではあるけども、言うほど日本人離れしてないし…。


「カラコン」


言われて気が付いた。

カラコンは確かにしている。

瞳が緑なのだ。

小学生の時にコレでからかわれてから、この瞳が嫌になり、中学からはカラコンを付けるようになった。


「カラコンしてるだけで分かるものですか?」


「その茶色カラコンの下の瞳は緑でしょう?

緑色の瞳なんて珍しいし、ヨーロッパの北側で確認される事が多いもの。

中東とかでも見られるようだけど、顔立ちからしてそんな感じじゃ無いし、それに貴女の年齢で中東と日本人のハーフなんて、なかなか居ないでしょう?」


知識、観察眼、分析力。

この人、一瞬で。


え?いや、待って。


「カラコンの下の瞳…見えるんですか?」


いくら観察眼が鋭いって言っても…カラコンの下の色なんて分かるの?


「分かるわよそんなの。

私がこのチームで技術者として働いてるのは、スズネから聞いてるわよね?

私、身体のほとんどが機械なの。

もちろん、眼球も。しかも、「トーン」の特別製。

だから、カラコンなんて無いも同然に見えてるわよ。

なんなら、下着の色も言いましょうかぁ?」


「結構です!!

…って、「トーン」って言いました?」


「えぇそうよ。軍需企業「トーン」。どんな会社かくらい、学生の貴女でも知ってるわよね?」


「知ってるも何も…大ファンです!!!」


「ふぁ……ファン?」


「はい!!

あそこの「特殊兵装」!とっても好きなんですよ!!

特に今だと先月発刊されたカタログに載ってた、自動小銃「スネーク」の改良型でもある「パイソン」!!アレは流石だと思いました!!「スネーク」で指摘されていたリロードのしにくさを改善しつつ、新たに可変式合体機構のついた「キメラシリーズ」の一つとして組み合わせが可能になってて!!しかも今まで3つしか無かった「キメラシリーズ」に新しく「パイソン」も含めて4種類も加わって…………!!!」


「分かったから!!ファンなのは分かったから。

問題はそこじゃ無いでしょう?

最初に言うけど、貴女は私達と同じ…「サラウンダー」じゃないわね?」


あ、そうだった。

その話だ。


「それなんですけど、スズネには最初に言ったんですよ。

それと、その「サラウンダー」ってなんなんですか?

あと、「チューナー」とか「チーム」とか」


「そこからなのね…。

スズネが説明を私に投げるわけだわ…。


いいわ、簡単にだけど説明してあげる。

立ったまんまもアレだから、適当に座っちゃって」


座れと!?この中で!?


何処に!?


キョロキョロしていると、カンナさんは「本の上でも良いわよ」と言った。


本に座るってのはちょっと気がひけるんだけども……。

仕方ないので、いくつか本のタワーをどかし、正座出来る程度のスペースを作って、そこに座った。


「さてと、まずは「サラウンダー」から説明するわね。

「サラウンダー」とは、「セイレーン」とゆう、聴いた者の細胞を破壊・再生・活性化させる音を使って、常人以上にタフで、強くて、頭良くした人の事よ。

主に「有益戦争」に利用されてるわ」


「てことは、人間兵器…なんですか?」


「そうねぇ…まぁそんなもんなんだけど、その中でも私達は結構強い方なのよ。

まぁ私は個人的に身体を機械化してるけど、スズネとか、他の子は機械化なんてしてないわ」


あ、みんなサイボーグかと思ってた。

この人だけなんだ…。


「それで、私達…つまり「チーム」は、正式には「チーム 0(ゼロ)」と言ってね、帝華の西日本侵攻よりも前、日本に「自衛隊」とゆう軍隊モドキが居た頃に組織された対テロ組織鎮圧部隊「ストライク」のゼロ番…まぁいわゆる精鋭チームだったの。

まぁ今では「ストライク」も「自衛隊」も解体されちゃってるから、ただの武装集団みたいなもんなんだけどね」


「自衛隊って…日本に軍隊があったんですか!?」


「いや、軍隊とはちょっと違っててねぇ……なんと言うか、防衛しかしない軍隊、って感じかしら。

何かしらに攻められないと動けない軍隊があったのよ。

ちょうど「有益戦争」がWCGA…世界共同政府議会で容認された後でね。

「小規模な戦争は経済を安定させる1つの要因だ」なんて言ってね、世界各地で戦争が始まった頃で結構物騒な世の中だったのよ。

ま、物騒なのは今も変わらないけど」


自衛隊ねぇ…学校の授業、もっとしっかり聞いとけばよかったかな。


「経済を安定させるとか言ってたけど、利益が安定したのなんて、軍需企業とテロ組織くらいだったわよ。

それで、テロ行為が盛んに行われ始めたから、国内でのテロを鎮圧する為に作られたのが「ストライク」だったの。


まぁ、その頃最大規模を誇っていたテロ組織が「インパクト」ってゆう組織だったんだけどね、どちらかと言えば「インパクト」を潰す為に「ストライク」は作られてたのよね。

結局は全面抗争になった末、「インパクト」は一部幹部を残してほぼ壊滅。

「ストライク」の方も、日本経済を圧迫した要因の1つだったから解体。

しかも自衛隊の4分の3を投入してたから、自衛隊の方も事実上機能しなくなって、

そこで運悪く帝華の侵攻よ」


「帝華に西日本が制圧されたのって、ただ軍を持ってなかったからじゃなかったんですね」


「持ってないと言うか…失くしたって言う方がただしいわね。

防衛専門でも軍は有ると無いとでかなり違うわ。

既存の自衛隊が力を無くして、いざ新しい自衛隊を設立しなくちゃって時に、そこを狙って帝華が来たの。

戦略としては悪くないけど…それはただの侵略だからねぇ。


まぁこんな事があったから「有益戦争」に関して細かいルールが制定されたけどね」


「軍事力が同等程度の他国でなければ有益戦争の交渉が出来ないとかですか?」


「そうよ。

でも、アメリカとかEUの軍事力を前に、アフリカ諸国とかはそう簡単に太刀打ち出来ないでしょう?

そんな中で私達「サラウンダー」は作られたの。

ぶっちゃけ、「サラウンダー」を作るための「セイレーン」を開発したのも「トーン」よ。

それにこのビルのセキュリティーシステムも「トーン」の物を使ってるし」


え、トーン……凄い。

ますます惚れたわ。


「でも「サラウンダー」も完璧な物じゃないの。

「サラウンダー」にも適性があってね、それが血液の流れ方なの。

血流を波形にして可視化した時、ある一定の特殊な波を描く人が居てね、その人達が「サラウンダー」になれる適性があるの。

しかもその血流の波も「サラウンダー」毎に若干違うのよ。

それで、その血流を利用した特別な予備発電装置が「サラウンダー」の肋骨と肺、心臓の間に有るの。

この発電装置なんだけど、使えば使うほど血流の波を凄く微細になんだけど、乱れさせるのよ。

例えるなら、音楽を聴いてる時に一瞬だけどノイズが混じる感じよ。

このノイズだけど、1〜2回あったくらいじゃ別に何とも無いんだけど、聴いてる内に何度も聞こえて来るとうざったいでしょう?


「サラウンダー」の発電装置も同じようなものよ。

でも「うざったい」では片付けられないの。

発電装置の場合、血流を少しずつ乱してる事になるから不整脈とか変な動悸みたいな症状が出てくるのよ。

だから定期的に、発電装置の血流読み込みをもう一度「調整」しないといけないのよ」


「あ、それが「調整」なんですか!」


「そう。コレ結構大変でね?「調整」しないでほっといたら、早くて1年くらいで死んじゃうのよ」


「え!?」


あっぶな!!

あ、だからスズネはあんなに心配してたんだ。


「まぁそれ以外にも何個か弊害があるんだけどね、

結構「サラウンダー」って大変なのよ。

だからそれらの弊害を補助したりするのがこのヘッドホン…「チューナー」なの」


そう言ってカンナさんは、自分が着けてるヘッドホンをトントンと指でつついた。


「これは正式名「サラウンダー制御補助型第二ブレーン チューナー」と言うの。

名称の通り、私達サラウンダーを補助してくれる第二の脳みたいに機能してて、サラウンダーはみんなコレを着けてるわけ。

しかも一度装着したら外すのはちょっと面倒だから寝る時も着けっぱなしなの。

寝返り大変よ?」


何の話よ……。


「とりあえず……モヤモヤしてたことは大体分かりました。

それで、結局……この「チーム」って何なんですか?」


「そうねぇ…ま、言っちゃっても問題無いかな。

この「チーム」は、元はテロ鎮圧が目的の組織だって言ったわよね。

今もそれは変わって無いわ。

日本は中立を宣言した国だけども、同時に全世界の有益戦争をする国に手を貸している軍需産業国家でもある。

そんな国をどこも放っておくわけ無いでしょう?

日本の完全な壊滅を目論んでる国はいくつかあるのよ。

分かりやすいのは帝華でしょ?

だって西日本の侵攻の時にあんな大量に核を撃って来たし」


そうだ。

私もそれは少し覚えている。

あの光。

そしてキノコ雲。


東日本に避難するための船の中から見えたあの光景は、当時幼稚園生だった自分もしっかりと脳裏に焼き付いている。

本能で理解したのを覚えている。


アレは「終わり」だ。


「アレだけ多くの核を撃って来たから、西日本は未だに人が住めないくらいの放射線量を誇ってるワケだし。


でもね、あそこ。人居るのよ」


「え?西日本に!?」


「国内の人間はあそこが人が住めない場所なのは知ってるし、政府でさえ完全に放棄してる。

放射線の除去があと何十年、下手すりゃ何百年かかるって噂があるくらいよ?

だから日本国民は誰も西日本に行かない」


「日本国民は…って事は」


「そう。他国の人達が結構居るのよ。

それにどこも日本壊滅を望んでる国の人達が。


つまり、西日本は今、日本崩壊を目論む敵国の前線基地となってるのよ。

ただ、思ってるより色んな国が集まり過ぎて、お互いにお互いを監視してるような膠着(こうちゃく)状態になってるけど」


「じゃぁ「チーム」の目的って……もしかして」


「そう………その敵国の前線基地を叩くこと。

まぁ今は準備段階だから直接的な激突はまだ無いわ。

けど今後…そんなに遠くない未来、私達は西日本に行って、戦う事になるの。


それにこれは政府でも一部しか知らない超極秘情報なの。

だから貴女は私達にとってイレギュラー因子となっているの」


なるほど……そんな理由があるから、入り口で機関銃向けられてたわけね……。


「ん?それじゃぁなんでカンナさんは私にそんな事ベラベラ喋っちゃってるんですか?!」


「ま、なんとなくね。

だって、貴女面白そうだしちょっと興味持っちゃったわ。

その年齢で「トーン」の大ファンって言うし、

そのカバンの中。

なんでそんなに面白そうなスクラップ詰め込んでるのか気になるし。

普通学生が手に入れられるものじゃ無いでしょう?

スズネと出会ったのも、空葉原の裏通り近くらしいし。

カバンにスクラップ以外にも幾つか工具が入ってるのを見る限り、物作りとか趣味なのかしら?

だとしたら、そのチューナーに凄く似てるヘッドホンとかも自分で作ったの?」


ゲッ!

この人いろいろ見透かせるんだった!


「は、はい…自分で作りました」


「ふぅ〜ん………」


カンナさんは、メガネをかけ直し、少しニヤつきながらまじまじと見てきた。

なんだろ…全裸見られるより嫌な感じがするんですけど………いや、誰かに全裸見られた事も無いけどさ。


「凄いね!それ独学?」


「あ、はい。幾つか資料は参考にしましたけど、ほぼ独学です」


「なるほどねぇ………ねぇ。

私の助手って事で「チーム」に入らない?」


「……………え?」


「貴女、独学でそこまで出来るなら問題無いわよ。

それにここには「トーン」関連の製品は結構有るし、2〜3階の資料とかほとんど私の物で読み放題だし、結構面白いのも置いてるわよ?」


ヤバい!かなり興味ある!!


「制服を見るに、都立帝都第三工業高校かしら?」


「はい」


「私から知らせておくわ」


「え、あ?はい!?」


「言っとくけど、国が組織してるチームなんだから安心しなさい。

悪い事は無いわよ」


「あの、話が勝手に進んでますよね?」


「イヤなの?」


「魅力的です。特にトーン製品と資料読み放題なとこが」


「決まりね」


あぁ、すっごい眩しい笑顔……。


「ヤオト!」


カンナさんが不意にヤオトを呼ぶと、本棚あたりから声がした。


『はいはぁい!カンナ様!

お呼びですか?』


「この子、私の助手って事でマキナに伝えといて。

あと適当に部屋を用意して、インターフェースもひとつ発注お願い。

インターフェース届くまではヤオトがこの子のインターフェースも掛け持ちして」


「部屋って、ここに住むんですか!?」


「そうよ?正直言って貴女は私が気に入ったからそばに置きたいだけで、まだ素性はハッキリして無いじゃない?

まぁ明日までにいろいろ調べてそれで正式には決定だけど。

あぁ荷物とかは心配しないで。

チームの加入が決まったら取りに行かせるから」


あ、怪しまれてるのは変わってないんだ……。


『よかったですね、ユウナギ様』


「よかったのかな……?」


『よかったもよかった!とてもよかったですよ!

トオンなんか最初直ぐに排除を考えてたんですから』


「排除って………あの機関銃ね」


『あ、バレてました?』


はぁ……とりあえず、命は取り留めたってレベルかな。


お読みいただきありがとうございます。


えっとですね、予告通り説明多めです、はい。

どうなんだろう…長ったらしいのは否めないんですが…。

カンナの説明口調でいろいろな情報を公開したのですが、

私の作品での登場人物って、勝手に喋ってくれるので、セリフを考えるのはあまり苦労してないんですが、カンナの性格で喋らせると適当な感じになってしまいました……

(~_~;)


まぁ敢えて不鮮明にした部分もあるんですが……。


幾つかの情報は回を追うごとに詳細化して行くと思うので、まぁなんとかなるでしょうwwwwwww


では引き続き、お読みくださる皆様、応援よろしくお願いいたします。

感想とかくれると泣いて喜びますw


では、次回お会いできることを願っております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ